昭和の風林史 (昭和四七年十月十三日掲載分) (2014.10.15)
微温湯の相場 まだ底練り段階
このあたりの値段は強弱いずれにも分がある。
しかし交易会を控えて強気になるのは少し早い。
十一日は東京穀取の開所二十周年で、
東京の立ち会いは前場一、二節だけであった。
六日、大阪穀取の二十周年記念の後場は
大穀取の休会中に
アレヨアレヨと東京から気配を上げてS高となった。
だから今度はあるいはその逆になるのではないかと
手ぐすね引いて待ち受けていた目先筋もあったようだ。
が、案に相違した平凡場面に終始した。
やはり東京の方が役者が一枚上なのか。
売り方主力の阿波座筋が安値を売り込みすぎて
元気がでなかったためだろうか。
ここへきて多少は強気のほうがふえているようでもある。
その理由は、
①先日の先限安値七千五十円を大底と判断すれば、
ここで少なくとも二千円ぐらいの反発があって当然。
まして八千円前後を叩きすぎたキライがあるから
一万円近くまでは充分だ。
②輸入外貨ワクの停止に見られるように
政治的な配慮が今後も打ち出される可能性があるし、
北海道農民の安値に対する抵抗も強いので、
当面は投げ売り的な売り物は出っこないだろう。
③今年は増反、好天で大豊作だったが、
来年は大幅減反が必至であるし、
二年続きの順調な天候はありえない。
④したがって大豊作時の良質の小豆の現物を
半年も抱えておれば、
めったに損はしない―等々である。
これに対して、
とにかく百七十万俵ほどのものが穫れたことは事実。
来年が不作かどうかは判らないが、
これだけで一年間は余りすぎるほどだ。
年内三割の出回りと見れば五十万俵。
小豆の俵に押しつぶされる。
そのうえ、下期ワクの発券はとりやめられたとしても
残りのワクだけで二万㌧の輸入小豆は入ってくる。
まして来週には広州交易会が開催されるとあっては、
とても買えないというのが売り方の考え方である。
まあ、八千円から九千円に賭けての値段は強弱の均衡点である。
だから九千円以上は細く長く売ってゆけばよいし、
八千五百円以下は買って塩漬けにしてもよい。
今のところ、
そう力をいれて一発相場を狙う場面でない。
タイミングを誤ると
ぬるま湯につかったようにでるにでられなくなる。
●編集部注
“S”は突然やってくる。
サーキットブレーカーとは少々趣が違う、
というのが個人的な印象だ。
“S”は高安関係なく、
CBよりも取引参加者の頭を冷やす効力が
高かったように思う。
実際この時、相場は少し冷えた。
【昭和四七年十月十二日小豆三月限大阪八九五〇円・一一〇円安/東京八九五〇円・一〇円安】