昭和の風林史 (昭和四七年六月十日掲載分) (2014.06.17)
抜けた底売れ 茫茫漠漠の下げ
来週は壮絶な崩しがはいりそうだ。
ここから崩れるのである。
それが相場である。底抜けを売れ。
「なんばんに白雲乗りいて暑し 阿火」
新穀だからと六月新ポの生まれを
買った十一月限は、いいところなしで
千円棒がはいってしまった。
いかなる買い方も〝天〟には勝てない。
産地は雨が欲しい時に雨が降り、
今年は久しぶりで
作柄にツキがまわってきたようだ。
こうなってくると市場の人気も、
早や豊作気分で、
阿波座の巧者筋は「先限の一万円割れ、
八、九、十月限の九千円そこそこ」
を言うようになった。
とにかく、ぎっしりと高値を買われた取り組みである。
取り組みのみを重視するのであれば、
もちろん成り行き売りである。
だが、この値段は、とても売りにくいようだ。
売りにくいから売らないでいると
値段はずんずん下がっていく。
買い方は、たまったものではない。
筆者は、ズドーンと〝長陰線〟で、
ぶち込んでくる安値にきての
崩れがあるまでは、
売りにくいけれど売っていくのが、
最も安全な方法だと思う。
売り方は、勝負なら
ここのところを叩き割って一気に崩す。
それが戦術であり、テクニックで、
崩せば投げが必ず殺到する。
値ごろ観の買いものや、
長期思惑の買いなどは
チーンと黙ってしまって、
手が出なくなるのだ。
現品は売れないわ、
輸入在庫は増大するわ、
天候よろしい。作柄上々。
そして取り組みはどうにもならぬ悪さ。
相場がそれらの現象に、
いちいち反応を示し、
従順なほど、いうことを聞いている。
ともすれば買い方は、
悪材織り込みなどと気休めを申されるが、
御冗談を、弱り目にたたり目、
泣きっ面(つら)に蜂。
織り込めど、織り込めど軟材続出せんでは、
続落していくしかないのである。
とりあえず七月限の八千八百円。
八月限も、そのあたり。
九限、十限で九千二、三百円。
十一月限の一万二百円あたり。
あると見ざるを得ない状況で、
早ければ来週月曜あたりから、
丼鉢浮いた浮いた、すててこしゃんしゃんである。
威儀を正して書けば―。
その下げまさに八カ月におよぶも天は味方せず、
入船陸続とあいつぎ、
この期におよんで、なおも下げんとす。
ああ買い方いかなる因果か、
壮絶なる崩し、
いま目前に迫らんとす。
われすでに値ごろ観なく、
ただ地獄の底まで売るのみ。
●編集部注
この記事の掲載日の翌日、
田中角栄が『日本列島改造論』を発表。
後にこの政策綱領は出版化、
大ベストセラーとなる。
【昭和四七年六月九日小豆十一月限大阪一万〇七七〇円・五七〇円安/東京一万〇六九〇円・五七〇円安】