昭和の風林史 (昭和四七年四月十五日掲載分) (2014.05.08)
いずれ七千円 十年前の相場へ
これからの下げ相場で損をしたら、
もう小豆相場では取り返しは出来なくなるだろう。
売り一貫。
「葉ばかりの椿一樹や風光る 士栖」
買い目はまったくない小豆相場だと思う。
仮に交易会で成約の数量が少なく、
そのことに刺激されて反発する場面があるとする。
そういう場面は、
市場人気に迷わされず、冷静に売る。
交易会での成約量は、どうも多いように思う。
中国は売りたい意向を判然と示しているそうだ。
問題は価格であろう。
値段を下げてくれば、もとより相場は急落しよう。
それがきっかけとなって、投げ場面が展開されるだろう。
ここのところは、戻すほど後が悪くなる相場である。
一般大衆筋は、台割れ買うべしで
値ごろ観が支配している。
ここから買い下がれば、天候相場に入るのだから―
と安易な考えがある。それが結局あだになろう。
筆者は、先行き先限の一万円割れ時代があると思う。
需要不振。高値取り組み。
輸入品の圧迫。輸入品の品質悪。
大衆の値ごろ買いによる取り組み悪などを考えれば、
天候相場に突入する前に全限万円割れ相場が展開しよう。
今月と来月の納会で
大量手持ち筋は全量渡しきりにするという。
しかも台湾小豆は大増反だそうで、
幾らでも値段を下げて売ってくることになろう。
三井物産のコロンビア小豆も市場を圧迫する。
日本の穀物市場は輸入小豆でダブつく時代も遠くない。
そして北海道の天候は、
専門家筋では42年型と予想されている。
仮りにも平年作型なら、
東北六県に肥後小豆などの内地産も
増産されていることであろうから
これはもう七千円台の相場になってもおかしくない。
それは、十年前の小豆の値段である。
雑豆自由化を控え、赤いダイヤは輝きを失い、
投機思惑は離散し、全国六ツの穀取は
市場振興策や売買単位の引き上げに頭をいためる時期がこよう。
輸入商・三晶実業では、
いずれ小豆の値段は大豆なみになるだろうと見ている。
消費を大幅に上回って
世界各国で投機生産した豆が値段を下げて流入してくる。
そういう時代にこれからはいるのである。
小豆は売りっぱなしでよい。
強弱をつける必要はない。売り玉を放すな。
●編集部注
大相場を語るという事は、
オオカミ少年になるという事と同じである。
大衆は目先しか見ない。
小利口は中勢を語る。
七千円相場をこの時期する人は破天荒大尽だ。
皮肉なのもので、
ここから相場はこの見方をあざ笑うような相場になる。
【昭和四七年四月十四日小豆九月限大阪一六〇円安/東京一八〇円安】