昭和の風林史 (昭和四七年四月十日掲載分) (2014.04.30)
陰流落し斬り 閃光一瞬S安か
桜も終わろうとしている。
万朶(だ)の桜か襟の色―という場面は遂になかった。
今週は暴落だ。
「湯をさせばあけぼの色や桜漬 つい女」
九月限の(大阪)引けがやっと三百十円を割った。
四百四十円のところに抵抗があって
(八月減は四百円にフシがある)、
これが頑強に抵抗していたが、
週末の引けは、あっけなかった。
戻り場面を見ていると、いかにも強そうに思える。
七日金曜日あたり、
阿波座筋は一万三千五百円目標/
交易会までの短期決戦/
産地相場を陽動/大阪に仕手介入/などと
久しぶりで、口中熱っぽい情報が飛んだけれど、
高値掴みの買い屋の希望的意見に終わりそうだ。
筆者は思う。先三本、千円大台を
引けで割り込んでしまえば、
アッケラカンのストレート安KOダウンだ。
ストップ安だってあり得ると見る。
中国が売り値を下げてくれば相場に支えがない。
本来ならば売り大手の三晶山梨が
崩れ場面で利食いに向かって、
一段落の落ち着きを取り戻すのであるが、
この両社、現物抱いての売りヘッジだけに、
暴落場面で手仕舞ってくるかどうか判らない。
千円割れには〝逆注〟がかなり入っている。
割れから売り―という注文だ。
〝逆注〟はクロウトが相場の勢いに身をまかす戦法。
激水の疾き石を漂わすに至るものは勢なり という。
乱は治に生じ、怯は勇に生じ、
弱は強に生ず。治乱は数なり、
勇怯は勢なり、強弱は形なり。
孫子をして〝強弱は形なり〟と言わしめた。
弱は強に生ず―とも。
金曜日の戻り(強い姿)があったればこそ。
土曜は反落を見た。
そして週明けから
本格的に崩れるだろうと思わせるのである。
あるいは、もう一度、逆襲してくるかもしれない。
それは、またとない狙撃の対象となるであろうか。
筆者は材料を書いているのではない。
地合いを縷々(るる)説いている。
この相場は、強気しても
なんら見込みはない―ということを。
左様、崩れてのち、そのことを知る。
国破れて山河あり 城春にして草木深し
時に感じて花に涙そそぎ
別れ恨みて鳥に心を驚かす。
多くを語ることもない。
雨はふるふる 城ケ島の磯に
利休鼡の雨が降る
雨は真珠か 夜明けの霧か
それとも私の忍び泣き
雨はふるふる 日はうす曇る
舟はゆくゆく帆がかすむ―。
●編集部注
今の国内商品取引は注文が面倒だ。
これは声を大にして言いたい。
〝逆注〟も出来る事は出来るが
頗る面倒である。
【昭和四七年四月八日小豆九月限大阪一万一二七〇円・三六〇円安/東京一万一二五〇円・三六〇円安】