昭和の風林史 (昭和四七年三月二二日掲載分) (2014.04.10)
買いの相場だ 目先急反騰あり
投げ終われば、見直し買いがはいる。
相場は下げすぎた。
一万二千五百円までの反騰は急であろう。
「雲静かに影落し過ぎ接木かな 虚子」
山大商事の杉山重光社長
『とにかく、ちょうちんが三倍くらいついていた。
三人で二千五百枚にもなっていた。
いうなら、ちょうちん倒れだ』。
山梨商事の霜村昭平社長
『一万二千七百円以下は買いの相場と見ていたが
14・15・16日の相場を見て、駄目だと思った。
それに、びっくりするほど、ちょうちんがついていた。
本隊を救出するためにも、
場勘定の関係からも、
買い玉を減らしたわけで、
M氏も三月第三週にはいって、相当買い玉を減らしていた』。
連休明けは太平洋の買いが投げに出ていた。
K氏も場勘定関係で、切るだけ切ったが、
ちょうちんが数倍もついていただけに、
おくればせのこの投げで、さらに崩した。
山梨は場づらでは、
丸五系の売りが出ていたが
霜村氏自身としては現物を八百㌧手持ちし、
三月納会もM氏に協力して受ける予定だった。
そこへこの崩れである。
山大の本隊を救援すべく、
つけかえで六、七百枚をあらたに買った勘定。
霜村氏「豊などで前々から
手持ち現物のヘッジはしていたが、
結局は持ちの持ちになった。
今、私に相場の見通しを聞くのは酷である」。
相場は、ただいま下剤をかけているところである。
猛烈な下痢症状の初期は音をたてて飛び散る。
それからのちは、糸のようだ。
紙を持って何回も何回も。
少し落ち着くと、時々シクシクする。
その間、体力は目に見えて衰弱する。
投げるだけ投げてしまえば下痢は止まる。
元帥は、さすが悄然とした声であった。
多くの読者から
『元帥に元気を出してくれるよう』
伝えて欲しいということづけを
筆者はたのまれた。地方には元帥ファンが多いのだ。
ここで三晶の売りが
利食いにはいらなければならないところだ。
買い方は白旗をかかげている。
現物のヘッジかもしれないが、
大量売り建ての筋はこの崩れで玉を合わせておかないと、
今度、売り玉を仕舞う時は、
自分の売り玉で自分の首を締めることになるはずだ。
相場の値段としては、下げ過ぎている。
市場が冷静になった時は
今のような安値はもういないだろう。
大きなシコリもほぐれた。
久しぶりで市場は風通しがよくなりそうだ。
勝負なら買い場である。
●編集部注
今回の記述は、将棋で言う所の感想戦である。
山際淳司に「江夏の21球」という一文があったが、
これに近い。差し詰め「敗軍のかく語りき」。
相場の目算とは不思議なもので、
逆張りの場合、目算の少し手前で流れが変わる。
到達すると、逆に行き過ぎてしまう。
【昭和四七年三月二一日小豆八月限大阪七〇〇円安/東京七〇〇円安】