昭和の風林史 (昭和四六年十一月十日掲載分) (2013.11.28)
戻り足急なり 暮高の幕あがる
規制緩和の効果がこれから現われる。
買い方がまた馬力を取り戻してきた。
「煮大根を煮かえす孤独地獄かな 万太郎」
全商連西部地区のセミナーが開催されて
名古屋以西九州地方までの業界のトップクラスが
会社を離れて入るので、
その間はたいした動きもなかろうと見ていたところ、
なんのなんの初日の八日からS高の大反騰、
続く九日もS高となった。
セミナー受講中の売り方買い方とも
気もそぞろということかもしれない。
材料はあとから出るというが、
今週になって中共から
年内の積み出しを延期してほしいといってきたとか、
第三回商談が流れる公算が強くなったとか、
それに商社の買い付け外貨ワクがなくなった
とかいう強材料が次々と飛び出して、
あっという間に四日の安値から千五百円高である。
相場はたいてい複雑であるが、
時によると他愛のない単純な動きもする。
第二回商談が予想より四五日早く始まって、
第一回と第二回で約二万㌧近くも契約できた時、
最低年間五万㌧の中共、韓国、台湾産など
輸入物が殺到するということが
決まったかのような雰囲気が流れていたが、
それはやはり相場が言わしたものにすぎなかったといえよう。
現在、為替相場は一㌦実勢で三三〇円、
一ポンドがが八二五円である。
すると契約単価一㌧当たり一八〇ポンドは約四五〇㌦。
五万㌧とすれば二、二五〇万㌦という数字になる。
これぐらいの計算なら小学校三、四年程度の算数で充分間にあう。
ところで、この十五日に繰り上げ発見予定の
四十六年下期の小豆輸入外貨ワクは四〇〇万㌦、
これを量に換算すると九千㌧分しかない。
四十七年度上期も、どうせ繰り上げられるし、
ワクの転用もできるだろうが自由化されていない以上、
そうそう簡単に輸入されるものでもなかろう。
こんな簡単なことが見落とされていたのも相場がさせたものである。
それに冷害で大きな打撃をうけた北海道の納会では、
いまや高値の小豆は唯一の値うちのある商品。
本当の〝赤いダイヤ〟となっている。
まして二万円以上の高値を覚えているだけに、
安値で大量に売ってくるはずもない。
さあ、こうなると売りこみがきつかっただけに、
戻るのは当然。まして規制も緩和されたことである。
行き過ぎ訂正、出直り、
売り方の踏みへと年末までつながるだろう。
●編集部注
自分が食いしん坊だからか、
久保田万太郎の句に目がいってしまう。
私が好きなこの人の句は
「湯豆腐やいのちのはてのうすあかり」である。
【昭和四六年十一月九日小豆四月限大阪二一〇円高/東京二六〇円高】