昭和の風林史 (昭和四六年八月二十五日掲載分) (2013.09.10)
見えています 八千円肉薄場面
難かしく考えることはなに一ツない。
無心に買えばよいだけだ。見えている沸騰高だ。
「ちゝろ鳴く石狩川の行方知らずも 博雄」
三百円ないし五百円ほどの押し目があると見ているようだが、
おそらく押さないだろうし、もし押したとしても
虎視耽々と買い場を狙っている人が多い今の市場では、
すかさず反騰に転じようから、
押すことにより相場は弾みがつくし、
押さなければ押さないで
高値更新の動きにそのままつながってしまうだろう。
中共小豆の成約、
また、ある取引員の経営行き詰まりによる自廃、
株式暴落による担保力の縮小
などの冴えない現象はあるけれど
〝作柄悪〟の前には、それほど相場に影響をもたらさない。
巧者筋は、次の暴騰に備えて、少しでも押したところは、
仕込みにかかっている。
すでに誰しも気のついていることは、
これまでの小豆相場のどの場面を見ても、
一ツの決まったパターンによるサイクルが確立されていて、
静かになる(閑散)→材料出現→売り方の踏み
→相場上伸→買い方利食い(値を押さえる)→押し目(弱気が売る)
→買い方が玉を仕込む―の繰り返しであった。
従って、閑な時に(押したところで)利食いして
空になった弾丸を装填し、時期を待てば、
必ず次にぶっぱなしの利食いが出来た。
八月下旬から九月上旬にかけて、
極端な低温現象があらわれるであろうから、
その時は、すでに作柄の回復など、
もう望むべくもないだけに、
一万七千円抜けに暴走してしまうわけだ。
売っている人は一万四千二百円どころの玉を持っている。
その玉に追い証を入れて頑張っているが、
近い将来予想されるストップ高で、
必然的に踏まざるを得ないだろう。
現在、この相場が値崩れする要因は、
まったく見出せないのである。
売り玉はこの際できるだけ早い目に手仕舞うべきであるが
言うはやすく、損切りは嫌なものである。
またどの取引員も、お客は値ごろ観で売ってくると言う。
なぜ売るのであろうか、
ここにきてまで売る人の気が知れないが、
やはりそれが相場というものであろう。
まあ難かしく考えないで買い玉を建てることだ。
●編集部注
大自在天という仏教の神様の額には、
「頂門眼」という三つ目の眼があって、
知恵を持って、一切の事物を見る事が出来るのだという。
ニクソンショックの激震未だ生々しき状態の中で、
風林火山の額には、どうやら頂門眼を有していたようで、
理路整然と未来を語っている。
【昭和四六年八月二四日小豆一月限大阪変わらず/東京四〇円安】