昭和の風林史 (昭和四六年八月六日掲載分) (2013.08.21)
売り姿勢不変 不作百も承知だ
先三本の六千円台は売り方針の姿勢を、
買い方も信念。売り方も信念。
「ひた寄せて遠引く潮も晩夏なる 登四郎」
不作は決定的である―という見通しと、
在庫薄を、あらためて認識し、
台風19号の進路も懸念されて
新穀相場の買い人気場面となった。
もちろん売り方の踏みが目立つし、
主力買い方の陽動作戦も効果を挙げたが、
買い主力は高値に対しては玉をすかし、
また三晶などの覆面筋も集中的に売り応じて
先三本の六千円大台乗せは久しぶりで
市場に熱気を感じさせた。
ところで買い主力の基本的小豆市場における戦略は、
およそ次のようである。
①八月限も納会は受けるし、
続いて九月、十月も現受けの姿勢を続ける。
②市中現物のほとんどをその掌中におさめる。
九月は需要期であるから現物でさばける。
③現時点における新穀は七分作である。
先行き病虫害や低温、台風、秋冷などで
半作になる可能性もある。
④新穀の一万五千円は八分作でも大底である。
また新穀限月が割りを出せば
旧穀前三本も当然値上がりするわけで
手持ち現物に値下がりの危険はあり得ない。
⑤最終的には新穀の一万八千円相場である。
買い方は信念を持って強気している。
そして湧いたところはほどほどに利食いして、
押したところを仕込む。
まさに鳥なき里の蝙蝠という感じがしないでもないが、
儲けることはよいことで、
損するのが嫌なら強気すべえ―というところ。
売り方にすれば、
六千円が七千円でも売り上がれば、
凶作に買いなし、必ず崩れる。
たとえ新高値に買われようと
腕力相場がいつまでも続くはずがない。
筆者は次のように見る。
①強気が急速に増大している。
そして下値を一万五千円底という考え方が支配している。
だから一万六千円台は逆向かいで売り場になろう。
下値も一万四千円割れがある。
②作柄悪は織り込んでいる。
買い方の陽動は、シコリをつくる。
③悪材料は、ある日突然出現するものだ。
また一俵の現物が無くても
崩れる時期がくれば値下がりする。
④相場は信念である。
一万六千円台は売り一貫でよい。
二千円崩しがある。
作柄の回復する余地は残されている。
●編集部注
相場も後から見れば何とでも言える。
しかし、現実から未来の予想となると、
ここまで断定的に書けるものではない。
ましてや不作は決定的と言われる状況下、
ここで弱気を貫く信念には感服させられる。
前日の「急所の売り場」はズバリ。
そして信念の売り。
ここ数日の風林の相場観は神憑りとしか言いようがない。
まるで未来を見てきたかのような書き方。
実際、この時の小豆は
前日高値からお盆にかけて続落していくのだ。
【昭和四六年八月五日小豆一月限大阪四〇円安/東京六〇円安】