昭和の風林史 (昭和四六年七月一七日掲載分) (2013.07.23)
押し目は買い 先行き波乱万丈
急ピッチな反騰だけに
ひと息入れる押し目もはいろうが、
安いところは積極買いでよい。
「すはすはと夜は明易し麻畠 暁台」
近藤紡の売った水準まで小豆十月限は反騰してしまった。
近藤紡は(十月限を)六千六百円で
もうあと千枚売るつもりらしい。
買いのほうは建て玉制限にからんで、
山梨と丸五商事との間に感情のもつれが表面化し、
山梨―丸五の過去五年間の取り引きも
最終局面に達した模様である。
一方、山大商事の杉山社長は帰国後
再び強力な強気方針を打ち出し、
山梨を全面的に援護する布陣。
ここに相場市場は盛夏を迎え、いよいよ熱気充満である。
産地からの情報は平年作を伝え、週明け20日は土用太郎。
売り方は土用の好天を背景にして
一気に売り崩さんとするも
買い方腰を落としてガップリ立ち向かう態勢。
さて、東京市場をまわって感じたことは、
①安値を売りこんだ②高値に買い玉あり
③一般人気は戻り売り傾向
④売り方、買い方両仕手筋は一歩も引かない構え。
この相場どうなるか現在予測できることは
高値更新すれば一気に噴き上げて
大天井値をつけてしまうであろうし、
ここで再び崩れるようなことになれば、
買い方猛然と立ち向かうであろう。
山大の杉山元帥は
『旧穀は一万五千五百円の一万六千五百円。
この圏内の動きであろう。
新穀は一万三千五百円の一万五千円圏内の相場と見ている。
仮りに天候がよくて作況をほめて売っても
新穀の一万三千五百円は大底である。
安ければ買い一貫で対処する』―と。
天候相場プラス仕手相場=大波乱。
高いところは買い方もやれやれで
手仕舞いしてこようし、近藤紡も新規に売ってくるだろう。
しかし押し目は陣型を立て直した買い方の
積極買いがはいるはずだ。
要は土用の天候である。
それと伏兵的存在の病虫害の発生であろう。
これだけ大きく取り組んだ相場だ、ただごとでは終わるまい。
目先、押し目構成と見るが、急落したところは買いでよい。
きょう京都は祇園祭“ゆくもまたかへるも祇園囃子の中”
●編集部注
祇園祭である。
まるまる一カ月かけて行われるこのお祭りは、
屏風祭りとも、ハモ祭りとも呼ばれている。
文末に幾許の雅さでも足してはみたものの、
恐らく当時の風林翁、
雅も美食もへったくれもなかったのではないか。
信念を持って、甲斐の軍旗を掲げ、
思惑通りに値が動いた今こそが、
相場で一番モゾモゾする時間帯といってよい。
この時の小豆相場は、悲観の中で生まれ、
懐疑の中で育つその中間、やや懐疑寄りのところ。
信念なき小人物は、こういうところでビビる。
すぐ買いを利食いして、あろう事かドテン売りに手を出す。
私自身、何度そんな経験をしたか。
風林翁、自身を鼓舞するが如く、
これを書いているように見えた。
【昭和四六年七月十六日小豆十二月限大阪一一〇円安/東京八〇円安】