2度目の事業確立期
ドイツのハイHD買収が決め手
武蔵精密工業(7220)は踊り場。2度目の事業確立期。今期、連結減収減益の見通し。為替、顧客主要モデルの端境期、震災等の影響を考慮。主取引先のホンダ(7267)の需要が回復するとともに、外部取引拡大によるためで、5月9日発表したドイツのハイHD(1925年創業=鍛造・機械メーカー欧州最大手)買収約440億円が決め手。VWやダイムラーなど主要取引先にドイツ、スペイン、ハンガリー、中国計9工場。従業員約2600人、2015年の連結売上高640億円(営業利益39億円)といった概容。試算によると欧州の売上高構成が3%から30%強に高まり、ホンダ(前期70.4%)向け50%を視野。欧州顧客層深耕、製品補完、競争力強化につながる。7月以降軌道に乗る見込みだ。2000年6月ホンダから送り込まれた小林元社長が在任6年で連結売上高ほぼ倍増、海外売上高60%(就任時40%)に引き上げたと述べたばかり。退任10年で2度目の大きなビジネスチャンスを迎えた。このほか、14年1月立ち上げたメキシコ工場を巡航速度、ブラジル工場黒字転換(前期営業損失11億3200万円)が喫緊の課題。次世代ブランドをはじめ二輪車再構築、四輪車再構築にも目星をつけた。減速機や電動化、ハイブリッド化など二輪、四輪を通じて同社の改善提案が国内外の大手完成車メーカーに受けているため。依然、ホンダが主取引先に変わりない。そのホンダ。「フィット」のリコールとタカタのエアバックで世界販売600万台が後退。前期474万台を底に今期491万台まで回復。1ドル105円を基準レートに連結営業利益6000億円(19%増)の見通し。同社は国内と二輪車(構成比4割)がホンダの影響を強く受けるだけに巻き返す構えだ。タカタの反動が若干ある程度でVW関連もアウディ推定30億円レベル。問題ないという。前期の設備投資が連結93億円(計画145億円)にとどまり今期150億円。来期更新中心に100~120億円の模様。ハイHDを除き大口の資金需要が一巡し、めいめい適地適産・現地通貨でグローバルな対応を問われる時がきた。今年2月から上昇運。大塚社長(50)も運気好調でハイHDグループ入り追い風。予想以上に好調な北米や中国に対し、苦戦が伝えられる国内、タイ、インドでも巻き返す見込み。今期、ムサシ・グローバル・ビジョン2020(連結売上高2000億円、営業利益10%) の足場が固まりそうだ。ものにすると、2018年(創業80周年)から10年相当なリターンが見込まれる。
2017年3月期(連結)は、売上高1460億円(11.2%減)、営業利益105億円(21.6%減)、経常利益100億円(12.7%減)、純利益70億円(2.8%増)の見通し。さらに2円増配し52円配当(中間26円)の予定。5月29日、ホンダがF1(モナコGP)で2台そろって入賞。パワーユニットの信頼性が大幅に向上したという。メルセデスに追いつき追い越せ。逆襲が始まった。第22回国際交流会議「アジアの未来」(東京=5月31日)によると、アセアン経済共同体を活用し今後5年で鉄道や空港など4兆7000億円のインフラ整備、域内の経済統合を促進する考えだ。同社はアジア(前期連結44.9%)中心に伸びしろが大きい。