昭和の風林史(昭和五十年四月十六日掲載分)
再び大崩れへ グレシャムの法則
悪貨は良貨をくじくグレシャムの法則が
今の手亡相場に当てはまる。
小豆も安くなりそう。
「陽炎や眼にゆれる鉄の橋 明庵」
手亡相場は下げ幅の三分の一戻しが、
やっと―という力のなさを見せて戻した分だけ悪くなった。
大阪九月限の発会寄り付き
値段一万一千九百五十円を割ってしまうと、
ガラがくるだろう。
その時の下の値段、即ち売り目標値であるが、
上げた分が折れて、一万八百八十円地点。
これに、プラスアルファとして高値買い玉の投げ嵩みで、
瞬間的には千七十円下げ(上げた分)でよいものが、
落下の加速度がつくため三百円ぐらいの行き過ぎがあって、
一万五百円台を考えなければなるまい。
今度の下げで怖いのは、
顔ぶれのよい売り方が利食いした後だけに、
下げ相場に抵抗が無いということである。
九月限の一代棒で、千円ラインを割ると、
三千円割れ→二千円割れだから〝大台三ツ替わり〟。
一万一千円を割ってからの新規の売りは、
機敏を要するかもしれない。
ピービーンズが十万俵。
こうなると、
悪貨が良貨をくじく―グレシャムの法則を
考えなければならない。
経済原則は冷厳である。
六本ある限月の相場のサヤが
ほとんどダンゴになってしまった。
これが崩れてくると、
かたまって落ち込むから、凄惨であろう。
暴落したあとは、お義理のような自律戻しがあって、
そのあとは鳥もカラスも飛び去って荒涼たるもので、
無相場時代の〝白けムード〟。
さしもの大取り組みもほどけていこう。
それには時間がかかる。
今から売れないという人は
『相場に値ごろ感無用』
という言葉を思い出して欲しい。
千九百五十円割れから千円幅が取れる相場
=だから買い玉投げて、
倍ないし三倍の量を売る方法がある。
手亡が崩れると、小豆も心理的な影響は、まぬかれない。
筆者は嫌な予感がする。
小豆九月限で七千円割れから五百円下げ。
八月限で六千六百円の地点。そういう値段がありそうだ。
春陽とはいえ、穀物相場の市場は、
まだまだ時間がかかりそうだ。
あくが抜けきれない。
●編集部注
機を見るに敏―。
優れた相場師は、隆慶一郎的な表現に変換すると
ひとかどの「いくさ人」である。
何事にも固執しない。
相場もいくさも、時として
己の頑迷で死地に追い込まれる事があるからだ。
【昭和五十年四月十五日小豆九月限
大阪一万七三二〇円・六〇円安/
東京一万七二一〇円・一一〇円安】
「のぼり鮎すぎてまた来る蕗の雨」 楸邨 (2017.04.20)
昭和の風林史(昭和五十年四月十五日掲載分)
戻り足が鈍い 安値割れば崩壊
手亡相場は戻りを売られる宿命下にあるようだ。
先日の安値を割ってくるとナダレ現象かもしれぬ。
「のぼり鮎すぎてまた来る蕗の雨 楸邨」
山梨商事の店頭の壁に張ってある手亡の週間棒の
一万円のところと一万一千円のところに
丸く鉛筆で印がつけられている。
同社の霜村社長は、一万円と一万一千円の、
この中間あたりの安値を考えていると思う。
『三月27日の安値から四月四日の戻り高値。
この値幅仙山百円。その分を、三月27日安値地点から
下に計ったあたり(一万六百円どころ)。あると思う』―と。
『ピービーンズは予想する以上に相場を圧迫するだろう。
手亡先限の一万二千三百円以上の戻りは
再び売っておいて判りやすい。
自分は長い目で見て五月、六月ごろに
最悪の相場が展開されると予測しているが、
先日の下げでは大阪、名古屋で
大量の売り建てを利食いした。
今は手あきだから戻り場面で、
もう一度売り直そうと思っている』。
霜村社長には今回いろいろな事でお世話になった。
その間『相場を見ている暇が無かったので
七千万円ほど違った』と笑いながら言われた時には、
本当に恐縮し申し訳ないと思った。
手亡相場は止まったような格好である。
しかしこれからの戻りは
もうあと千円余の下値が考えられる相場環境だとすれば、
六月限が四月10日の安値(大阪一万一千八百六十円)を
割ってきたところから、
なだれ現象につながるかもしれぬとふと思った。
小豆はどうだろうか。
手亡が安くて、小豆だけ騰げていくという、
そういうことはあり得ないという前提のもとに考えれば、
小豆は、すぐに大きく上昇していけないかもしれない。
だからと言って、
手亡の下げに同調することもないだろう。
少し軟化するという程度だろう。
北海道小豆の先限引き継ぎ線を見ると、
一万七千円のところ売り。
一万六千円のところ買い。
相場はこの千円の横にした帯のなかでジグザグしている。
この千円幅の中での動きを、もちあいと見るなら、
もちあいが長ければ長いほど、
放れた時の相場は大きいという経験から、
それを楽しみに将来を考えるところであろう。
14日の月曜は選挙の開票速報に人々は気をとられて、
もうひとつ相場に関心が寄らなかった。
●編集部注
実際この保合い上放れ場面は強烈な動きになる。
【昭和五十年四月十四日小豆九月限
大阪一万七三八〇円・変わらず/
東京一万七三二〇円・六〇円安】
「桃咲いて三年味噌の匂いかな」 五洲 (2017.04.19)
昭和の風林史(昭和五十年四月十四日掲載分)
買い場を露呈 悪夢は去った!
手亡が下げ止まり小豆が浮揚する。
気分で嫌嫌押した小豆のこの辺の値段は
絶好の買い場を露呈。
「桃咲いて三年味噌の匂いかな 五洲」
小豆相場を考えてみよう。
常識的判断はおよそ次のように言われている。
大勢的には強気しなければならない。
新旧格差を思うと、十一月限は当然二万円台だ。
しかし現在のところ、
まだ当分は七千円中心の動きだろう。
取り組みが太りだしてからでも遅くない。
どなたに聞いても、小豆の答えは以上のようだ。
まったく、その通りだと思う。
山梨商事の霜村氏は『いま小豆が高くなるよりは、
このあたりの水準で播種期を待つほうが、
先に行って相場が楽しみになる。
いま高いと小豆の作付け面積に変化が起こるだろうが、
今のままと減反こそあれふえる事はない』―と。
誰もがいまは鼻もひっかけない。
その小豆相場の何と底堅いことか。
手亡の先限が悪夢(買い方には)の棒下げを演じ
〝いって来い〟となったというのに、
小豆は新ポの穴埋め、
二分の一押しが精一パイであった。
値幅にして約六百円。
それも商いが伴わない、
気分で嫌々ながら手亡に追随した形だ。
大正金時でさえ二万七千円(大阪)し、
うずらが高騰し続けているとき、
小豆の商品価値からいって、大きく下げる道理がない。
そう判っていても、現実に手亡の十分の一の出来高、
二市場のみの生糸、乾繭並みの相取り組みでは、
大半の投機家は仕掛ける気持になれまい。
それが人情である。
だが、相場に必勝法があるものなら、
恐らく人情に溺れることを戒めよう。
古来〝人気の裏〟を教えるコトワザのいかに多いことか。
本格上昇波動を確認してから飛び乗っても遅くはない。
そういう意見もある。確かにその通りである。
が、崩れては積み上げる〝賽の河原〟の相場も久しい。
口で言うほどに実行は容易であるまい。
考えてもみたい。
弱気が念仏のように唱えるのが供給過剰だ。
調整保管の五十万俵が
そのまま翌年度へ持ち越されたともいう。
これは未知の要素(天候作付けなど)を
まるで無視したものだ。
最も危険なもの、それはもっともらしい理屈である。
理屈ではまだまだ大下げのあるはずの手亡が止まり、
反発の構えなのも面白い。
小豆、手亡とも大丈夫、心配はない。
●編集部註
昭和五十年の小豆相場の総取り組みは、
一月の三万三千枚水準から、
四月下旬に二万一千枚水準までジリジリ減っていた。
【昭和五十年四月十二日小豆九月限
大阪一万七三八〇円・一五〇円高/
東京一万七三八〇円・二〇〇円高】
窓を相場は埋める 売るだけ売らせればよい (2017.04.18)
昭和の風林史(昭和五十年四月十二日掲載分)
強烈逆襲可能 産地は端境現象
無いとは言えない値先限の一万七百円。
あれば嬶質だが、これだけ弱い市場、必ず反騰する。
「花の山雨に終日静かなり 静堂」
見方にもよるが、大手亡は、すでに端境期現象と思う。
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昭和の風林史(昭和五十年四月十一日掲載分)
手亡は買いだ 目に見える反騰
利かすだけ利かしたという手亡であるが、
三空叩き込みの反動はきついだろう。
小豆もち強気論。
「山吹のなを一枝の暮春かな 虚子」
手亡は大出来高で取り組みの掃除をした。
そして材料的にも出るものは出た。
値段で産地の品物を呼び前二本(四、五月限)は
行ってこいの下げだが、
相場としてはこれで灰汁(あく)抜けである。
先月27日から今月7日までの急騰で空けた窓を埋め、
さらに下げに加速度がついて
夜放れ安の〝三空叩き込み〟だが、
この下げ過程で空けた窓は必ず埋めよう。
手亡先限は半値から三分の二押し
と見ていたがほぼ全値を消した。
千円棒を立ててすぐに、
千円棒が折れるという激しいこの動きは、
先行きの大展開を暗示するものである。
取り組み面で注意しておかなければならないのは、
現在の顔ぶれのよい売り方が買い方に転向し、
現在の買い方が売り方に転ずるという
面前での大舞台変わりである。
天候相場入りというタイムリミットがあるため売り方も、
一万二千円割れは総利食いの場所になるだろう。
来月は産地で早々と新穀限月が登場。
従って、水準を下げるだけ下げた今の限月は、
新穀限月の動向に影響されることであろう。
ピービーンズの格差四千円という事も
悲観的な面ばかり強調されていて、
虐待格差がもたらす十一月限からの
純粋手亡相場をあまり深く考えないようだ。
今年が作付け大幅減反。
天候異変なら、当然新穀限月は凄い相場になろうし、
今の限月も値打ちが出てくる。
スペキュレーションは常に
市場人気の裏側を考えておかなければならない。
万人総悲観の今なら手亡は、
先行き強烈な反騰を暗示していると筆者は確信している。
小豆相場はどうか。
先限七千円中心の動きであるが、
手亡安で地合いを悪くしたり、
金の延べ棒、買い場になる。
三月20日の、まるで、
こぼれ落ちたような瞬間的安値、あれが底である。
万が一、先限が七千円を割るようなら、
嬶質置いても買うところである。
小豆、手亡とも、こんなに弱気ばかりの市場は珍しい。
判り過ぎた弱気である。必ずこの裏、反動がくるだろう。
●編集部注
相場格言にある「大衆は全て間違っている」と。
相場に絶対はないが、古今東西を問わず、
この格言は必ずしも間違ってはいなと思う。
平成の御世にNY金の上昇要因として
「第三次世界大戦が始まるようにみえる」からと
市況に書かれたら、
玄人はやはり警戒すべきであろう。
【昭和五十年四月十日小豆九月限
大阪一万七一一〇円・五〇円安/
東京一万七一八〇円・三〇円安】