昭和の風林史(昭和五十年四月三十日掲載分)
急反発がある 戻り一杯を売れ
手亡の大勢は下だが目先の突っ込みを売ると
五、七百円の反発があろう。戻りを待って売る。
「城跡や井戸の中より揚雲雀 虚子」
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「チューリップ馬券の屑の舞ふ中に」 赤舟 (2017.05.09)
三軍散じ尽す されどまだ悪し
手亡の悪さが尾を引くのはこれからだ。
小豆も黒い五月だろう。
手亡の戻り売りが判りやすい。
「チューリップ馬券の屑のまふなかに 赤舟」
手亡の取り組み高の推移をグラフにすると
一月の九万枚から二月→三月→四月と
斜め45度の角度でなんと二十二万枚まで
一気阿成にふえ続けピークに達した。
手亡の取り組みが増勢に転じたのは
昨年の十一月新ポからで、当時五万枚。
生糸、ゴムとほぼ変わらぬ数値であった。
その当時の小豆取り組みが十一万枚。
毛糸が二十万枚を誇った。
手亡が小豆の取り組み線とクロスして上抜いたのが
一月発会時分。
すでに下降をたどっていた毛糸の取り組み線を
上抜いたのが三月の中旬である。
手亡のこのような異常な取り組みの推移を見て
いろいろな事が考えられた。
毛糸から手亡に。
小豆から手亡に投機資金が移動したこと。
結局は、動く相場は人気を寄せやすいということである。
相場が続落していくのに取り組みがふえるという現象は、
まさしくミステリーであった。
いま、手亡のミステリーは結末を出そうとしている。
手亡相場はどうなるか。
取り組みは今後徐々にほどけていこう。
その結果は恐ろしい現象を予測させる。
大衆買いが萎縮して、
ピービーンズ七千㌧の圧力が厳然たるものとなる。
六月以降、売り建ては実弾渡しきりの、
ぎっしり実のつまったものばかり。
手亡相場にはペンペン草もはえなくなろう。
四千円→三円円→二千円と大台三ツ替わって千丁戻し。
三千円→二千円→千円と大台三ツ破って、
一万五、七百円どころから小千丁戻し。
その戻りは、売り方が売る。その目標は一万円ライン下り。
手亡相場は、これからも悪いのだ。
小豆に期待をかけようとしている。
しかし、これだけ荒漠とした市場に、
勢いのある相場は誕生しない。
小豆も五月中は一万七千円が頭になろう。
そういう事を言うと、あすという日に望みがなくなるが、
手亡相場の戻りを売る手。
小豆相場の六千五百円以下を拾う姿勢。
あるいは小豆の七千三百円以上を売る方法等がある。
義理も人情も相場には勝てない。人海戦術また悔いあり。
三軍散じ尽して旌旗倒る。嗚呼―。
●編集部注
アッツ島か二百三高地の如き嘆きぶりである。
だが世間は黄金週間。
当節東北では弘前、九州では博多、中四国では広島に
150万人以上の観光客が集まる。
この頃はどうだったのであろうか。
【昭和五十年四月二五日小豆九月限
大阪一万七〇六〇円・九〇円高/
東京一万七〇五〇円・一〇〇円高】
「水草の浮きも得せずに二葉かな」 鬼城 (2017.05.08)
昭和の風林史(昭和五十年四月二八日掲載分)
荒漠たる市場 落花枝に戻らず
ジグザグして下値に届いたような動きを
手亡が見せても戻りは売りである。
小豆は逆張り。
「水草の浮きも得せずに二葉かな 鬼城」
ゴールデンウィークにはいる。飛び飛び休みのあとの三連休。
気候はよしで、仕事にならに。
相場も、ちぎれちぎれで調子がつくまい。
連休が終わると国鉄、私鉄のスト計画がある。
五月は中旬まで、
これといった相場にならないかもしれない。
納会が終わって手亡相場は
一万一千円の抵抗で戻したりするが、
長い目で見ると決してこの相場は楽観出来るものではない。
いまのところ大出来高で玉整理にはいった。
売り方の利食い。
海外の白系雑豆価格の様子眺め、
産地の新穀相場(十月限)の推移、
そして以上を感じる天候と、産地の融雪遅れ、
春耕遅れなど、ここでもう一度
手亡相場を検討してみようというところでなかろうか。
六月以降に入荷が予想されるピービーンズ。
この圧迫感はぬぐえない。
輸入業者筋に言わせると、
結局手亡相場は八千円だろうと極端に弱いが、
一応一万円あたりは常識化された感じだ。
従って手亡相場に対する基本的姿勢は、あくまでも戻り売り。
八月限も九月限も、十月限も
売ってさえおけばよいという相場だ。
さしもの大取り組みも、もうふえはするまい。
手亡相場の怪、手亡相場のミステリーは
余韻をもって解明されていこう。
ここで考えておかなければいけないのは、
買い方大衆筋が全滅したことである。荒漠とした市場である。
すぐに新規は出ないかもしれない。
手亡に対する根強い不信感が植えつけられた。
長年、大衆相場の花形であった毛糸が、
その取り組み高、出来高を見ていると衰頽を示している。
その帰途にとって代わる手亡相場が三軍散じ尽した格好で、
すぐに次は小豆だというわけにいかない。
手亡の取り組み二十万枚突破は、
ゆうに三カ月の日数をかけている。
その間、買い方は、
役者変われどそのすべてが敗北していった。
しかもなお手亡相場の前途は悲観的である。
五月という月は穀物市場にとって、
底抜け陽気になれる月ではなさそうだ。
小豆の悪目買い。即ち突っ込み買い。
七千三、五百円の戻り売り。
手亡の戻り売り。一万一千円割れ狙い。
そういうところか。
●編集部注
相場とは無関係だが毎年5月3日からの3日間で
160万人の人を集める広島フラワーフェスティバルの
ルーツはこの年のカープ優勝パレードがきっかけ。
沿道に30万人が集まったという。
【昭和五十年四月二六日小豆九月限
大阪一万七〇〇〇円・六〇円安/
東京一万六九七〇円・八〇円安】
昭和の風林史(昭和五十年四月二五日掲載分)
寂然と声なく 落花紅雨の如し
手亡は下値を残している。買い方慙愧の整理場面に移る。
市場は閑になるだろう。
「ふり出でし雨の水輪やさざえ桶 茅代子」
新しい局面で下げに入った相場が小さく戻す。
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「風鐸の中より垂るる巣藁かな」 麻葉 (2017.05.01)
昭和の風林史(昭和五十年四月二四日掲載分)
新しい局面に 買い方総懺悔へ
手亡は下げの新しい局面に入った。
目標一万五百円。買い方総懺悔のとき。
見切り千両だ。
「風鐸の中より垂るる巣藁かな 麻葉」
手亡の崩壊が始まった。
当限以外の限月は23日の朝寄り付きで、
いずれも新安値に放れた。
ここから新しい相場と見てもよい。もちろん下に。
一万四千円台の買い玉が両建てになっている人。
一万三千円どころの買い建て。
そういう玉が決断の局面を迎えた。
一万二千四、五百円の買い建て玉に追証がせまる。
お客さんは、ガタガタになったとセールスは嘆く。
テレビ番組で連想ゲームというのがある。
ヒント・手亡の買い方。
答え・ガチャガチャ。
下値は七、八、九月限の一万五百円あたり。
買い玉は辛抱しても報われない。
ナンピンかけても救われない。
なぜなら、崩れ落ちたあと反騰出来ないからだ。
下げっぱなし。
コインロッカーにでも
入れておくしかない世相を反映している。
見切り千両という。
穀物市場の畠が荒れてしまった。
その結果は、
期待された小豆相場の出発が、かなり遅れよう。
小豆も重い。納会は渡し物が多い。
しかも古品がかなり混入されているそうだ。
期先限月にはホクレンの売り物が頭を抑える。
取り組みが薄い。新規が出にくい。
小豆も先限六千五百円以下の値。
時に三月20日(彼岸)瞬間的につけた安値近辺を
洗いに行くかもしれぬ。
小豆を買うのは、まだ少し早い。
手亡の終戦処理が終わってからでも間に合うだろう。
市場が総悲観人気に包まれねば買い妙味はないのだ。
小豆も判りやすいが手亡はもっと見え見えだ。
ミシガンピービーンズが値下がりしている。
商社は定期利用で高収益を挙げることが出来る。
極端な弱気は手亡相場の一万円割れを予想している。
怖いのは、
そういう値段が無いとは言えない環境である。
とりあえず、一万一千円割れ。一万五百円あたり。
二千円以上で取り組んだ玉が、
なだれ現象を起こすのである。
23日の寄り付きから
新しい相場に入ったと見るゆえんだ。
まだ間に合う下り最終列車。
汽笛残して赤い尾灯が消えて行く。
●編集部注
この年のこの月、
サイゴン陥落をもってベトナム戦争は終結する。
この時期、ベトナムに
手亡の崩落を重ねて見た人はいたと思う。
ただ、相場の終わりは新たの相場の始まりでもある。
【昭和五十年四月二三日小豆九月限
大阪一万六九〇〇円・九〇円安/
東京一万六九三〇円・七〇円安】