証券ビュー

森羅万象

「河骨の花に神鳴る野時かな」 虚子 (2017.07.10)

昭和の風林史(昭和五四年七月二日掲載分)
君は底を見た 翻然買シグナル
悪魔の六月が終った。七月は小豆が反騰する。
小豆は底を入れた。強烈な買い線が出た。
「河骨の花に神鳴る野時かな 虚子」
シカゴは制限値幅を更に拡大して玉がはまるようにするが、
日本の制度は、まだそこまでの考えはない。
買い大手筋が投げ、三晶が利食うけれど、売り玉が残る。
先限で八百七十円幅が消えてしまった。
一枚の玉で二十一万円替えである。
10月限を残して全限が一代の安値だから、
輸大市場で強気をした人は、悪魔のような六月だった。
一応、月曜あたりで売り玉も利を入れにくるだろうから、
投げと利食い玉で出来高は増大し、
本年前半の戦いの終戦処理にはいるわけだ。
投機筋は随分いたんだ。
大手投機家も、かなりの打撃であろう。
このような相場のあとは市場が荒廃する。
まるでダムが決壊したような輸大市場を横に見ながら、
小豆相場は、違う表情をしている。
小豆の相場は、先にダムの決壊を見ている。
投げる玉は投げ尽し、とどく値にとどいて、
隣の市場がどうあろうと関知しない心境にある。
そのような動きから小豆は底を入れた
―と喝破する人も出てきた。
多田商事で大きな顧客を持つ営業の加藤さんなど
今回の輸大の天井をいち早く感じ、
また小豆の暴落を予見して西田昭二氏に言わしめれば
『加藤さんは日本一の営業マンです』
と感嘆することしきりであるが、
加藤氏は小説家の黒岩重吾氏に商品相場をすすめ、
黒岩先生をして商品は難かしい―
となげかせたこと幾たび。
かつては伊藤忠雄氏、
あるいは今は亡き西山九二三氏の薫陶も得、
心苦辛酸を経て今日の地位を築きあげた。
要するに彼は相場の虫である。
そして真面目である。常に前むきである。
非常に熱心である。自分で、物を考える目を持っている。
そして情報が早い。顧客に信頼されて当然である。
なるが故に、西田昭二氏をして
『加藤さんみたいな人が
(多田商事に)五人もいてくれたらな―』と言わしめる。
その当り屋の加藤さんが、小豆は大底を入れたという。
先限の安値は二万二千二十円。
一番安い引けの値が二万二千二百二十円。
数字が四ツ重なる珍しい現象だった。
下から食い込む陽線三本は出直りのシグナルである。
戻り売り人気が強いだけに、
存外大きな反騰を見せるだろう。
週末で小豆は強力買いの線をつけた。
●編集部註
 商品先物取引の起源は江戸時代の日本とされているが、
現代商品先物取引をけん引していたのはシカゴである。
 CFTCが生まれたのが1974年。
設立から5年目に入り、
6月下旬から始まったシカゴ穀物市場の崩落で
試練の時を迎える。

「坂ひとつ間違へ梅雨の狸穴に」 青邨 (2017.07.07)

昭和の風林史(昭和五四年六月三〇日掲載分) 
卒倒した輸大 投げ玉はまらない
輸大相場は失神した。先に小豆が気絶し、
今輸大が大暴落。
業界は多事多難。投げ玉はまらず。
「坂ひとつ間違へ梅雨の狸穴に 青邨」 

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目先の底入れ 材料次第で反発大 (2017.07.06)

昭和の風林史(昭和五四年六月二九日掲載分) 
小豆相場は、陰極圏内に入っている。
材料の出具合では
自律反発もきついものになりかねない。
「紫陽花や白よりいでし浅みどり 水巴」
シカゴ定期のS安で
輸入大豆相場のS安が見えている前場一節の
小豆相場が下げ止まり、二節反発したことは、
一応小豆相場が下値の抵抗ラインに入ったことを
小豆相場自から知らしめた。
輸大相場と小豆相場は
一時期“相思相愛”型で連動したこともある。
しかし、小豆は輸大と離婚して、別々の道を歩んだ。
輸大がS安なのに、小豆が反発するというこの現実は、
人気作用(附和雷同)よりも、商品特性による内部要因と、
純粋相場波動の影響が大きくなっていることを物語る。
それは、シカゴにおいて銀の相場と大豆の相場は
連動していたのが、ある時点から大豆は大豆、銀は銀。
それぞれの商品特性で独自の動きにはいったのに似ている。
これは、相場が一ツの極限状態に達した時、
人気作用を超越して、その商品の需給により
独自の歩みに入っていく自然現象である。
人気作用が相場に最も影響するのは、
相場を序盤、中盤、終盤と区分して
中盤から終盤の中時分までで
この間の相場をグラフで見れば、
上昇段階でも、下降相場でも、最も激しい。
いま、小豆相場は、下げの終盤に入っている。
買い方は白旗をかかげ、まさしく買い落城の安峠である。
売り方は、利益を確実に確保するところだ。
新聞将棋の観戦記に「指し切り」とは、
攻めれば攻めるほど
相手の王の詰みがなくなること
を言うと書いていたが、
成程うまい表現だと感心したことがある。
相場でも、多分に、そのような場面がある。
特に仕手の絡んだ相場に、そういう現象を見ることがある。
目下の小豆相場は、買い方は投了している。
にもかかわらず、ここからなお攻めて、
盤上から相手の王将駒を取り上げて、
残りの駒も全部取ろうというのでは、
これはもう将棋でない。
勝負はついたのである。二万二千円を叩いて、
下千丁を取りに行くということは、
焼跡の釘拾いにもなるまい。
というのは、仮りに下千丁の値があっても
それは瞬間的で、売り玉の利入れは出来ないものだ。
ここは、自律反騰を待つところであろう。
売り玉は利食いに専念するところでもある。
下げの末期段階は、長い線が横並びで高下する。
●編集部註
 この時東京小豆の総取組高は約二万五〇〇〇枚。
その半年前が約四万五〇〇〇枚。
買い方が刀折れ矢尽きた事がこの数字でわかる。 
 そして、この数字から
もう一つの相場格言が連想される。
そう「閑散に売りなし」である。

買わせずに高くなる 奔然と出直る (2017.07.05)

昭和の風林史(昭和五四年六月二八日掲載分)
陰極圏内突入 いつの日か大底を
ここから安いという事は、
相場様が陰の極にそれだけ接近するということである。
「泡盛や汚れて老ゆる人の中 友二」
ストトン相場である。
投げが投げを呼ぶ。下の値段に抵抗力がない。

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逆ウオッチのチャート 潮を読む (2017.07.04)

昭和の風林史(昭和五四年六月二七日掲載分)
自律戻し態勢 だが下げ日柄不足
目先は戻すところにきている小豆相場。
戻し具合を見てドカドカとまた売られよう。
「夕焼けて何もあはれや船料理 汀女」

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