昭和の風林史(昭和五四年七月十八日掲載分)
今の小豆相場は目には見えないなにかを秘めている。
それは大相場への挑戦である。
「松風に醤油つくる山家かな 虚子」
小豆相場は、まだ強気になりきれないものを残しているから、
このようなところで買い玉を仕込んでおくのが判りやすく、
非常に有利な方法である。
産地における低温傾向は、
先に行って必ず小豆等に低温障害をもたらすことであろう。
その時になって市場は、
久しく見ることのなかった?これが天候相場だ〟
―の場面になる。
人々が今の段階で強気になりきれないのは、
供給過剰という印象が、
あまりにも強く刻み込まれていることと、
小豆市場に買い仕手が介在していないことによる。
来る年も、来る年も、
小豆市場は仕手筋の遊び場のような状態が続いてきた。
従って、商品セールスマンも投機家も、
仕手の介在しない相場には、馴染が薄く、
自主的相場判断が出来ないきらいがある。
そういうところに今の小豆相場が、気迷いを深め、
本来なら二万五千円あたりまで反騰していても、
なんら不思議でないのに、まだ三千五百円以下
という強気する側にとっては夢みたいな低水準にある。
しかも、戻り売り人気という、有り難い環境下にある。
これが四千円を抜けてくると、安値売り玉の買い戻しと、
ドテン買いの手が殺到し、
二万五千円は指呼の間という相場になろう。
七月の、どのあたりからこの相場に鞭がはいるか。
八月ともなれば、騰勢に拍車がかかるはずだ。
近頃よく、小豆の強気は信念ですか?と問われる。
冗談ではない。信念なんか無用の、
寝っころがっていての買い方針である。
過日、第一商品の津支店での講演会で
〝輸大〟のようなわけの判らん相場で大損こいた人は、
七月中に小豆の買い玉を仕込みで取り戻せばよい。
小豆は三万円相場が出現する―と、
やったところ東京第一商品の伊藤瑛企画部長は、
おったまげて目を白黒させていた。
筆者は、今の小豆相場を、
そのくらいの大相場と見ているが、
これでも抑えた予測で、自分の腹の中では、
いずれは三万六千円を抜く相場につながるから
向う15ヵ月は大投機の売買プランを
黙々と実行すればよいと思っている。
いまのところは売られもするし、
押したり突いたりだろうが、
相場が、どちらを向いているかを知っておればよい。
●編集部註
それにしても第一商品である。
この頃、まだ金は上場されていない。
ただこの当時、いまでいうIT化を図ったのは先見の明がある、
これが礎になって、今があるのは間違いないと思う。
「萍を岸につなぐや蜘の絲」 千代女 (2017.07.24)
昭和の風林史(昭和五四年七月十六日掲載分)
先生の碁 勝を勝ちきるには
四千円台は売り上がりたい人。
二千五百円以下を買いたい人。
小豆相場はこれからである。
「萍を岸につなぐや蜘の絲 千代女」
フライビーンズをつまみながら先生は碁を打っている。
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昭和の風林史(昭和五四年七月十三日掲載分)
買いあるのみ 理由の如何問わず
小豆相場は買い方針でよいと思う。
世界的に穀物相場が上昇していく時代である。
「十楽や蕗や茗荷や庵の庭 子規」
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「夕暮は鮎の腹見る川瀬かな」 鬼貫 (2017.07.20)
昭和の風林史(昭和五四年七月十二日掲載分)
換物の対象に インフレ再燃必至
今年の秋口からインフレはきつくなるだろう。
北海道小豆新穀は格好の換物の対象商品だ。
「夕暮は鮎の腹見る川瀬かな 鬼貫」
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目利き“だろう”は、 ないかもしれぬ (2017.07.19)
昭和の風林史(昭和五四年七月十日掲載分)
買い姿勢一貫 本年後半大相場が
本年後半の小豆市場は、
買い玉を常に保持している人にとって、
毎日が楽しい日々になろう。
「ふるさとに荒き布目の冷や豆腐 恒明」
小豆相場の流れが変化していることは、
およそ誰もが感じるところである。
ただ、このまま一本調子に直っていくとは見ないだけで、
もう一度、押し目を入れて駄目底をとるだろう
と考える人が多いようだ。
要するに、底は入っているが、
当分のあいだジグザグして、それから出直る
―という観測である。
相場が下げている時、大倉商事の川村雅宣氏は
『この小豆二万二千円の近くで止まる。それ以下の値はない』
と断言したが、まさに相場はお説の通りの動きをした。
彼は『この小豆は
八月の声を聞いてから怖い動きになるでしょう。
七月の基調は強含みで推移し、
大きく揺さぶるかもしれないが、
八月から買い一貫の大相場にはいっていく』
と自信を持っていた。
先般紹介した多田商事の加藤さんは、
『とりあえずお客さんに買い玉利食いしていただいたが、
姿勢としては買い場待ちです』と。
押し目待ちのようだ。
今では、現物を相当量手持ちしている本田忠氏の動向が
業界関心事であるが本田氏も、
ぼつぼつ相場の流れが変わろうとしている事を、
『どうも、そんなふうだね』―と。
本田氏は、下げ相場を売って、勝利してきた。
定期市場の売り玉を引きあげて
現物をロングするポジションに変化するかもしれない。
市場は、まだ決定的な強気材料を
手さぐりで探している格好である。
しかし、大勢的には本年後半の小豆相場は、
買い玉を持っておらねば話にならない
―という感覚は掴んでいるみたいだ。
筆者は、総選挙を控えている時だけに、
選挙資金手当ての場として、
小豆市場が恐らく利用されるだろうと思う。
いまは、安値で玉の仕込み中といえないだろうか。
大底が入った商品である。
産地の気温が低めに推移してきた。
60万俵の供給過剰が言われている。
外貨ワクの削減という農家保護の政策が
打ち出せるタイミングを持っている。
安値で売り玉が掴まっている。
高値の因果玉が整理された。
思うのである。
もう一回安いところがあるだろうの“だろう”は、
ないかもしれない。
いまの水準を買って、仮りに安くなっても五、七百円であれば、そこでまた買えばよい。買い玉は本年後半の投機家必携のパスポートである。
●編集部註
数々の相場識者の声がここに掲載されている。
よくよく注意して読むと各人とも相場の「日柄」「値幅」「波動」を意識したコメントになっている。
単語を変えれば、潮の流れを読むベテラン漁師や、一級品をセリ落とす魚河岸の目利きのコメントと何ら変わらない。