「秋の野や草の中ゆく風の音」 芭蕉 (2017.10.04)
昭和の風林史(昭和五四年九月二九日掲載分)
売られるため 敢て戻す詮のなさ
◇…市場に力がないから線は買いになっても、
長続きしない小豆だ。
投機筋も冷静である。
「秋の野や草の中ゆく風の音 芭蕉」
◇…ゴールドが
一トロイオンス(31・1グラム) 四百㌦時代にはいった。
国際商品は金の暴騰に刺激されて買われた。
国際商品は、インフレ、通貨変動、石油価格、
戦争、革命、天候等によって、たえず変動する。
◇…九月中、わが商取業界は、商い不振で意気消沈だった。
しかし10月は『天下大乱・物価不安定』をスローガンに、
わが商取業界は、出来高増大の時期を迎えることであろう。
◇…相場さえ動けば、商いは必らず増大するものである。
相場が動く要因は、天下大乱時代に幾らでもあろう。
わが業界は10月、11月と出来高増大の時期を迎える。
◇…小豆相場はホクレンの買い戻しを入れて反発した。
高値でヘッジしたものを、安いところで買い戻す。
ヘッジはずしは、つないでいた現物が、
現物市場でさばけた場合と、
現物は、さばけていないが、
値頃が安いので一応利食いして、
戻せばまた売り直す。
この他、ヘッジに名を借りて、
売り思惑した分の利食いという、
純粋ヘッジではなく
多分に投機色の濃い市場利用の仕方もあろう。
◇…さて、次期ワク削減という問題も、
当分ついてまわる。
しかし所詮は、
相場が高くなったら売りたい筋ばかりである。
北海道の生産者も、ホクレンも、中国も、
台湾も、雑豆輸入商社も
高いところを見逃すことはない。
◇…また取引員自社玉ポジションも
圧倒的な売りである。
従って、
『小豆とは、売られるために戻すもの』
と定義しておけばよい。
◇…目先的には、
彼岸の入りの新月21日に安値を叩いて、
応分の投げも出た。
あとケイ線は陽線が続いて反発を示したが、
先限四千六百円以上という値は、
ちょっとやそっと抵抗が強い。
さしもの
買いの片道切符しか持たなかった投機家も、
年がら年中、
ヘッジャーのために犠牲になるのは、
もう嫌だと言っている。
安いところは売ってもはじまらないが、
五千円近いところは売っておけばよい小豆であろう。
ケイ線では、四千円中心の
上下八百円圏内での動きを暗示している。が
◇…産地の日足線など見ると、
いかにも大出直り型に見えるが
線はそうであっても相場は別である。
●編集部註
NY金は1980年1月に800㌦を突破する。
この時の相場動向と天体位相の関係を調べてレポート化し、
その2年後に
『ザ・ゴールドブック』という本を上梓したのが
、現在のMMA主宰レイモンド・メリマン氏である。
彼の金融アストロロジャーとしての原点は、
この時の金相場にあった。
昭和の風林史(昭和五四年九月二八日掲載分)
井の中の戻し 欲張っても駄目!
◇…積み上げ努力が奏功、いま少し戻す場面があってもよい。
そこは再び判りやすい売り場となる。
◇…九月限は名古屋、関門が渡し物薄から急騰、
大阪、東京は平穏に幕を閉じた。
◇…受け手はサヤ取り、商社の決算受け、
そして一万九千円台という値ごろに誘われて、
実需筋もそこそこ拾ったようである。
農林水産省の豊作予想発表で、
人気面でひと区切り(弱気観の浸透)がついた市場である。
どう転んだところで大した展開になりっこないが、
〝売りたい上げ賛成〟に、
少しぐらい敬意を表してもよい頃合いである。
まずは先の安値からの千円戻し、
相場は勢い、弾みがつけば、
二千円戻しで二万五千円奪回―とくれば、
商いも賑わって結構な話であるが、
それは少し欲張り過ぎというもの。
◇…十月は今月以上に荷を呼び込む。
サヤ取りの還流玉があり、ホクレンも旧穀を処分してくる。
積極的に受けるのは一体誰なのか?。
「あと二、三百円方戻してくれたら」という地点で
恐らく相場は戻り一杯しよう。
◇…人気面でひと区切りとはいえ、
玉整理は取組高の推移からすると、
あまり進展したとは言えない。
期先を基準に見ると、
二万四千円台は因果玉が鈴なりにぶら下がっている。
この〝やれやれ〟の売りを浴びる地点を、
素通りできるほどのエネルギーを備えていない―、
緊迫した情勢でもない。
年間最大の需要期控えは、
同時に最大の出回り期にも当たる。
次期小豆ワクの削減→輸入物の定期ばなれ―
今や常識化している。
輸入商社のヘッジを
恐れる値ごろ水準ではないものの、
道産・旧穀の悪目は、
中途半端に〝閑散期〟へ入ったため、
未だ出し切っていない。
およそ、土台が固まっていない相場に
過大な期待やロマンを求めるべきではない。
◇…暫くはぶっ壊すための虚しい積み上げ努力が
なされようが、
冷やかな第三者の目で眺めておればよい。
判りやすい売り場が訪れよう。
●編集部註
この時小豆相場は
3~4カ月間〝二千円〟の呪いにかかってしまう。
株価が上がって困るのは
信用売りをしている人だけだが、
商品相場は上がり過ぎたら消費者が困るし、
下がり過ぎても生産者が困る。
平準化の名のもとに、
値動きは本質的に
心電図のような波形を描くのが良いのだろう。
昭和54年9月も間もなく終わる。
この記述のために、
この当時の年表を見るのが色々楽しい。
ハウス食品から「うまかっちゃん」が
発売されたのが昭和54年9月。
販売価格はわからないが、農水省のHPに行くと、
昭和55年の即席めんの小売価格は
1袋60円となっている。
鉛筆が1本30円、
JRの初乗り運賃が100円、
週刊朝日が200円していた時代だ。
昭和の風林史(昭和五四年九月二七日掲載分)
未だ陰極遠し 売らず買わず黙然
◇…業界は陰の極だが小豆相場は、
まだ陰の極までとどかない。
陰の極とは声を発する者もなし状態。
「大いなるものが過ぎ行く野分かな 虚子」
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昭和の風林史(昭和五四年九月二五日掲載分)
目先反動戻し 灰汁は抜けたか?
◇…小豆は投げが大分出たから急落の反動で反発する。
反発したからと言って大底したかどうか判らん。
「噴煙は遠し萩咲き野菊咲き 左右」
◇…普通なら彼岸底という言葉を聞くのであるが、
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昭和の風林史(昭和五四年九月二一日掲載分)
ドカ安もある 買い勢力壊滅状態
◇…絶望的である。
チンタラチンタラやっておいてドカドカと
一本の道に出る秋の下げ相場である。
「南無秋の彼岸の入日赤赤と 寸七翁」
◇…小豆相場は、ますます悪い。
この調子では先限の三千円割れから
二千円そこそこまでの下げは、加速度がつきそうだ。
◇…相場が悪いということは、
相場経験者なら百も承知の地合である。
だが、下降グラフに?まっている人が多い。
◇…基調の崩れた相場は地獄の底を見るまで止らない。
今の小豆がそれである。
◇…下げ相場は、売ってから考えよ―という。
基調崩れの相場を、なにがどうだから、
ああだ、こうだという屁理屈無用。
強弱垂れている間に値は消える。
◇…売り勢力と、買い勢力のバランスが
崩れているのだから、強弱観など、ないはずだ。
◇…それは、値頃感無用という場面である。
下げ日柄でいうと今月一杯は駄目だ。
先限二万二千円を割ったら止まるかというと、
それはどうだか判らん。
◇…古品小豆の圧迫。
そして新穀のヘッジ。輸入小豆のヘッジ。
とにかく、取引所に
ヘッジしておこうという環境である。
反して、買い方投機家は
資力的にも気力的にも消沈してしまった。
◇…ホクレンは、ガリバー的巨大な売り仕手である。
取引員自社玉も、売り仕手的存在である。
中国も売りたい。台湾も古品を売りたい。
◇…一体誰が買うのか。
ほかならぬ、投機家、貴殿である。
さしずめ〝汝らの双肩にあり〟
というところであるが、汝らは痩せてしまった。
松尾芭蕉ではないが
「此道や行人なしに秋の暮」である。
◇…そういう相場だからチンタラ、チンタラ下げているかと思うとドカドカときたりする。
なにを言おうと、底が入るまであかんのだ。
土井晩翠の「星落秋風五丈原」。今の人は知らないだろう。
丞相(しょうじょう)病(やまい)あつかりき―である。
祁山悲秋の風ふけて、陣雲暗し五丈原―と歌ったものだ。
零露の文(あや)は繁くして草枯れ、
馬は肥ゆれども、蜀(しょく)軍の旗光なく、
鼓角の音も今静か、丞相病あつかりき―と。
◇…相場には、投げ当りというのがある。
投げたあと相場が更に安い時に言う。
あかんのだから、
投げは早いに越したことはない。
つまらないプライドと強情で辛抱しても
損を大きくするばかりである。
あかん相場は、あかんのである。
●編集部註
総悲観の時、大概節目をつけるから皮肉である。
ちなみに今回登場した土井晩翠は
『荒城の月』の作詞者として有名だが、
ホメロスやバイロンの訳詩を
日本で初めて行った人物としても有名である。