「しぐるるや牡蠣割辻も灯りぬ」 貞 (2017.11.28)
昭和の風林史(昭和五四年十一月二十日掲載分)
遅行商品輸大が 一巡煎れ出し尽す
師走の勝負手は輸大先の百円幅売り上がり。
天井した精糖とゴムの先売りでなかろうか。
「しぐるるや牡蠣割辻も灯りぬ 貞」
小豆先二本が三千円を割った。
期近限月の夜が明けたら
安い底抜け相場に、どうしてもなびく。
日足(日柄)19本をかけた(3月限)
三千百円と三千八百円でのボックス型保合を
下放れてしまうと、買い方勢力は、
心理的にも打撃が大きい。
あと、下の値段は先限二万二干円である。
それは本年六月27日に付けた安値である。
ホクレンが、
どのあたりで定期オペレーションの
第一ラウンドを終えるか
(売り玉の買い戻し)。
それにしても期近限月の下げ幅四千丁は、
十月4日を頭にしてのものだけに、
人の気の付かぬところに大相場があった。
目下のところ輸入大豆市場が
活気を呈しているから、
実勢が悪い小豆なら思い切ってこの際、
悪目を出しておくほうがよい―
という見方も出来る。
悪材料すべて織り込み、下げるだけ下げて、
更に行き過ぎるぐらい下げれば、
相場は、むしろ灰汁抜けして、
すっきりと自律反騰にむすびつくだろう。
先行商品・ゴム相場が
非常に不安定になっている。
51年の大相場の時は
月棒新値8本で天井した。
今月で、月棒新埴8本だ。
今月の月棒が陰線引けすると
大暴落線になる。
日足線で、もう一度
三百二十三、四あたり以上に買われる事が、
ないとはいえないが、
あれば(売り)勝負をかけるところだ。
手応えのあるクリスマス・ボーナスになろう。
精糖相場も、きわめて不安定である。
(大阪先限)二百十三円→二百九円の下値を、
この相場は取りにいこうとしている。
新値足(日足)で25本。
実数53本で天井したあと、
高なぐれで熟すのを待つ姿。
海外も、買い疲れ現象を濃くしている。
国際商品の中で、最も遅行している大豆が、
シカゴ底入れ感と国内の商社強気で、
玉が回転した。
中国大豆が入荷するものと思って
売られていた市場が、
カードが狂って、踏み上げている。
東京自社玉は七千四百売りの三千七百買い。
これは食われている。
玉を巻いた、巻いたで、
ひろげるしか手がないだろう。
大阪自社玉は、
関西の営業システムが関東と違うから、
早くから買いになっている。
窓を明けて飛んでいるだけに、
下げにまわるとS安崩しだ。
先限百円幅での売りが師走の勝負手。
●編集部註
古来より山師、成金と蔑まれる彼らも、
楽して儲けているわけではない。
相場読むより日柄読めだ。
「荒海や北窓ふさぐ軒つづき」 和香子 (2017.11.27)
昭和の風林史(昭和五四年十一月十九日掲載分)
この小豆駄目だ 輸大先売りが勝負
小豆の先は二千二百円を取りに行く。
為替が怖くて相場が張れるか―精粗糖暴落。
輸大先売れ。
「荒海や北窓ふさぐ軒つづき 和香子」
小豆相場の前二本は、
夜が明けたらチンタラ、チンタラ値を下げる。
現物は新と古品で五千円もサヤ開きした。
ホクレンは、およそ30万俵ほどの新穀を
定期にヘッジしているのではないか
と言われる。
30万俵のヘッジはしたが
農家は安い値で仕切ってこない。
これを仕切るために古品小豆で相場を叩き、
一石二鳥を狙う。
新穀を安い値段で農家から買い取る狙いと、
定期のヘッジ玉を安値で利食いする。
だから、力のある投機筋が、
ホクレンのカラ売り玉の場勘を狙って
逆手を取れば、ひとたまりもないだろう―
と言われるが、
目下のところそのような物好きもいない。
いうなら古品を道具にしたホクレンの
定期オペレーションに、
市場は冬の夜のように沈黙している。
それというのも、品物の売れ行きが悪い。
実勢悪である。そ
こへ、余り物に根なしと来ている。
更に悪い事は、国際商品に人気が奪われ、
小豆市場に大衆の投機資金が流入しない。
各穀取にしても、
輸入大豆の商いが盛況を続けているから
敢えて小豆市場の閑散に深刻さがない。
こうなると、小豆市場は、
いよいよ鳥なき里の蝙蝠で、
売り方の思うままである。
自社玉も、
市場環境に呼応する如く
圧倒的な売りである。
古品現物一万八千円で売れない環境なら、
まして買い方不在の定期相場の先二本など、
先行き輸入小豆の圧迫もあれば、
二万三千円割れの値頃買いは、
一考を要する。
時と場合で新穀定期の二万二千円。
本年六月27日に付けた安値を
取りにいく事になる。
相場の悪さをためていた精糖相場が、
素直な動きになりそうだ。
砂糖の実勢は、
デパートの北海道物産展で
グラニュー糖一㌔百六十五円で売っている。
スーパーの目玉も百六十円で買えるとか。
メーカーの建値引き上げ二百四円では、
売れ行きを一層悪くする。
定期は外糖と為替とフレートに
支援されているとはいえ、
いつまでも噴水の上のピンポンの球は
踊っておれまい。
輸入大豆は
先限五千五十円、百円、百五十円と
売り上がるのが、
リスクを負った投機家の勝負どころである。
為替が怖くて相場が張れるか―のところ。
●編集部註
駄目だと言い切られると、
このコメントを待ってましたとばかりに
相場が反発しだす皮肉かな。
ここでリスクを取った勝者を
称える世の中なら、
今の日本はもっと風通しが良かったろう。
「大霜の朝日の野道みな濡れぬ」 秋桜子 (2017.11.24)
昭和の風林史(昭和五四年十一月十六日掲載分)
輸大の攻防激し 食うか食われるか
余り物に値なしという言葉は、
今の小豆の期近限月を言うためにあるみたいだ。
輸大先噴値売り。
「大霜の朝日の野道みな濡れぬ 秋桜子」
ゴム相場は為替に連動しているだけに
商品市場の輸入商品の指標的な存在である。
そのゴム相場が売り玉の煎れに次ぐ煎れで
ようやく煎れ終った格好である。
一応13日の三百二十七円10銭(神戸先限)が
〝寄天〟(寄り付き天井)になっている。
しかし、大相場の天井は、
一本値でなく幾つかの山をつくる。
まして米国とイランの問題や
まだ激動期にある為替の推移、そして、
暴騰を続けるフレートなどの関連で
下げ幅を大きく切り返すエネルギーは
相場が持っている。一応天井はしたが、
情勢で
二番天井、三番天井を取りにいくものと見て、
安場を売るのはリスクが大きいだろう。
相場は、売り込むと下げるものでも抵抗が出来る。
精糖相場は、海外高についていけない。
二百二十円までは煎れと新規買いと、
海外高等で来たが、国内実勢が伴なわない。
また、二十円どころは相当な買いつきがある。
いわゆる回転してきた玉が高値で、
思い切り玉をひろげた。
先月受けた仕手筋(商社)も、
実勢がそっぽをむいているため
難渋しているみたいだ。
品物がないわけでない。
まして売れ行きは非常に悪い。
海外がゆるみ、
円安が止まれば国内は
取組悪でS安ものだろう。
線型は、頭が重くてしようがない。
輸大期近限月は戻り新値を買った。
商社筋の売り玉はずしに
大衆の売り玉が踏まされている。
大阪自社玉は買いが売りを千枚も上回っている。
東京自社玉は売りが買いを三千枚上回っている。
大衆の買い―といっても筋ものだが―
を特定の店が自社玉売りで攻防熾烈。
食うか食われるか。
期近のつなぎ売りをはずしている商社は、
その分を先にヘッジしなおす。
フレートに火がついているだけに、
商社としても手当てを躊躇する。
まして為替がらみだから、
国内定期をフルに活用するしかない。
期近三本は手のほどこしようがないが
先限はあと百円、百五十円の
上値は要警戒である。
それにしても小豆は塩たれてしまって、
斯近限月がチンタラ、チンタラ値が消える。
余り物に値なし―というのは、この事を言う。
東西小豆自社玉比率を見れば、
まだまだ悪さを引きずるだろう。
●編集部註
1979年のイラン革命は各方面を刺激した。
この革命でイランはシーア派が実権を握った。
スンニ派の国々は
革命後のイランを脅威に感じる。
スンニ派の国イラクと
戦争が起こるのは翌年だ。
この年の11月には、
イスラム過激派が
サウジアラビアにある聖地メッカの
礼拝堂を選挙するという時間が起こっている。
昭和の風林史(昭和五四年十一月十五日掲載分)
輸大も警戒水域 精糖来月しんどい
円安もこのあたりで歯止めがかかろう。
さしものゴムも天井みたいだ。
輸大も売り場にきている。
「葛城を背に村々の冬構 木小路」
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昭和の風林史(昭和五四年十一月十四日掲載分)
輸大香港も活況 制限値幅なしの機能
輸大は売り大手が踏んできた。
為替と期近の玉薄が相場に火をつけた。
香港も活況を呈す。
「短日やされどあかるき水の上 万太郎」
連日の円安で商品市場の輸入商品相場は
騒然としている。
日本の政治に空白が、およそ一カ月あった。
ポッカリあいた政治の空白分が、
とりもなおさず今の円安で象徴されている。
半値押しの二百四十二円で止まるべきものが、
余分に行き過ぎて、
三分の二押し二百六十四円は、
時の勢いという事になる。
輸入大豆は煎れが出ている。
『関西の人は実によく相場を見る』
―と言われるが、東京の輸大自社玉が、買
いより売りが多かったのに大阪は、
早くから売り買いほぼ同じであった。
それがここに来て売りより買いが随分多い。
反面、大阪の小豆自社玉は、
圧倒的な売りである。
このあたりに、
小豆相場の下値不安が残る。
ともかく、師走を控えて穀取市場は
輸大さまさま大豆大明神である。
出来高増大、捨てる神ありゃ拾う神あり。
さしものマルモト千九百六十枚売りが
鳴動しだした。
いかな御堂筋の小鬼でも、
泣く子と地頭ではない、
為替と中国には勝てない。
香港市場も東京大豆に刺激されて、
連日大商盛である。
東京がS高で商いストップなら、
ストップ制限のない香港市場に
場勘へッジの玉が流れ、
結構香港の取引所が機能する。
香港13日輸大相場前2節
2月限…一〇四80比20高
3月限…一一〇60比20高
4月限…一〇八60比40高
(単位香港ドル・セント比較前日比セント)。
この日、為替は
一香港ドルスポット四九ドル12セント。
昼時分は50ドルを越えているから
日本円にすると、
日本時間午前10時50分一節二月限が
五千二百四十円(東穀一節五千二百三十円)。
三月限五千五百二十五円(同五千二百円)。
四月限五千四百三十円(同五千二百六十円)で
三、四限が東穀の上ザヤを買っている。
(三限が天狗になっているのは
オープン第一節の時点からである)。
手数料(片道一枚90㌦)も証拠金も
取引所は一応参考として表示しているが
個々の会員と相談で決めればよい。
ともあれ、最終節は日本時間の15時50分だから
日本の引けあとは香港に玉が流れる。
目下、エース交易と岡地のテレックスが
相場を入れているから香港マーケットに
関心を持つ人は注文を取りつぐかどうか
問い合せてみるとよい。
●編集部註
リスクをとる事の大切さと恐ろしさ、
リスクをとった勝者を称え、
敗者を労わるやさしさを、
この頃から教育プログラムに入れておけば、
現在はもうちょっと違った世の中に
なっていたような気がする。
上記の文章にリスクをとる者たちの
キラキラが行間に出ている。