昭和の風林史(昭和五七年一月二十七日掲載分)
頭のまるい三山型の天井
小豆は三山の売り線と化す。
老鶴一声、はっとして千五百丁落ちる格好。
戻り売りだ。
強気には強気の理論がある。
また弱気には弱気の理論がある。
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昭和の風林史(昭和五七年一月二十三日掲載分)
下げたほうが判りやすい
北京商談ではなく東京商談になるそうだ。
相場は押すほど先に行って楽しみがふえる。
納会接近に伴って小豆期近限月は
(1)芯のある受け手不在
(2)台湾小豆の一月大量入荷
(3)一月末消費地在庫増
(4)中国小豆値下げ機運等
嫌気して焦げついていた相場が気崩れした。
しかし期近限月の続落にもかかわらず
期先限月は底堅い。
本当は、期先限月も、このあたりで
三千円を割る下げに入ったほうが
商いにも弾みがついて、
先行きの小豆相場に妙味が出てくるのだが。
台湾小豆の大量入荷という事は、
これは十分に予想されていたことで
別にあわてる現象ではない。
まして品物が大納言なみによいのだから
定期に渡ってくるものは
受け手殺到かもしれない。
一月に七千㌧ないし一万㌧の入荷なら、
二月の入荷は急減するだろう。
北海道小豆が五万円台で、
さらに先行き価格上昇が予想されている。
幾ら高くても、
北海道小豆を必要とするところは
必要なのである。
ところで取引員自己玉の買いが
目に見えて急増している。
裏返していえば、
お客に売られている取り組みである。
自己玉は、おおむね儲かっていない
という傾向が続いている。
ということは、マバラ大衆筋、
決して相場の素人でない証拠。
一般的に、
納会をみたあとの相場は高いだろうという。
渡し物の数量が判り、
受け方の顔ぶれをみて逆
ザヤがどこまで解消するのか。
その時の先限の下値は多分買い場になろう―と。
考え方としてはそれでよいと思う。
月々五千㌧の輸入があって
需給のバランスがとれるのだから、
輸入で安いところは買いであり、
期近が崩れるということは、
逆ザヤで突っ張っていたのだから
これは仕方ない。
あとは、人気が弱くなるのを待つだけ。
●編集部註
現在の大衆の買い方は
もっと現受けを活用すれば良いのになぁ、
と思う時がある。
対面の営業マンは教えてくれないのだろうか。
いや、コンプライアンスの世の中である。
説明していない筈がない。
恐らく手数料がべらぼうに安いネットでの
取引が主流になっているためなのかも知れない。
小豆は放置すると劣化するが、
貴金属は放置しても腐らない。
現受けすると
すぐ自宅に現物が届くわけではない。
倉荷証券が貰える。
更にこれは充用有価証券として
先物取引に使用出来る。
現物を持つプレーヤーは強いと
相場が決まっている。
東京金がグラムで2000円以下であった頃。
先物で買い現物で受けろと営業していた。
全部受ける必要はない。
受ける分以外決済し、
それを現受け購入代金に回せと。
ただそうすると手数料が取れない。
おかげで会社から嫌われたが、
その会社はもう存在しない。
昭和の風林史(昭和五七年一月二十二日掲載分)
押しといて月末高コース
月末は高いと見る。
そのために押すが、押しても浅いので物足りん。
冬眠相場は困る。
小豆市場は焦げついて、
どうもならんので緩めてみるべえ―
というわけで六本木筋の意向を
確かめるべく期近が反落。
先月は桑名筋。
今月は六本木が当番みたいにいわれているが、
六本木よ、受けるのか、受けんのか?
と相場が催促していた。
台湾小豆がどれだけ渡しに出るのか。
21日名古屋港に加商の七コンテナ陸揚げ。
渡すのかどうか。
台湾新穀は一見大納言なみ。
ツヤが少しなんだが、受けてもよろしい。
問題は積極受けすると、
なんだかんだと文句の多い電話攻勢を
受ける今の市場環境である。
これは悪いくせをつけたものだ。
定期相場の負け犬が
役所や取引所に土俵の外で工作する。
役所や取引所に
確りした態度がないからこうなる。
今のような市場環境では
小豆商いは淋れるばかりだ。
ルールはルールで守るべきは当然だが、
四万円付けるか付けんかの、
あの時と同じ考えでやられたら、
是が非でも小豆じゃなければ投機でない―
という人以外は、そっぽを向く。
まずは証拠金を引き下げるべきである。
突いて駄目なら引いてみな。
先限の三千円割れは買いたいが、
割らないだろう。
現物は逆ザヤの期近に渡して、
当用買いは桑名から手当てする。
桑名は俵が現金に変わるのを待って、
陽気のよくなる三、四月頃から
本腰を入れる段取り。
『この小豆は三川(さんせん)が入って絶対上だ』
と信念の米常祥雲斉教祖のもとに
ホクレン、メナード、ホンチュー、タチカワ
という連合艦隊が51年相場の再現を狙っている。
売り屋は三川は三川でも
山川草木うたた荒涼じゃなどと言う。
本間宗久、三山、三空、三兵の極意を知らないな。
ともあれ下でもよい、目下は動くこと第一だ。
●編集部註
筆者は当時の相場状況を知らない。
しかし、風林火山は
相場に関しては極私的である反面、
相場運営に関しては無私の人であった事は
よく知っている。
従って
〝役所や取引所に確りした態度がないからこうなる〟
という憤りに私はない。
事実、最後の最期まで運営を批判し続けていた。
誤解のないように述べておくが、
批判と悪口は全く違う。
何でもかんでも悪く言うのが悪口、
対象の本質をしっかり理解した上で、
矛盾点や悪い点を指摘するのが批判だ。
対象に愛がなければ、決して批判は出来ない。
風林火山は、相場に淫する事なく愛していた。
それ故に多くの読者が付き、
長く読まれ、
こうして三十余年前の文章も色褪せないのだと思う。
昭和の風林史(昭和五七年一月二十一日掲載分)
買い方は持久戦で待機中
崩れようがない。
押したところは買いたい人気である。
長い目で見ていくところ。
小豆の証拠金を下げてもよいのでないか
という声が多くなった。
冬山眠るが如き市場に対しての
焦りが出てくる。
証拠金の増減は各種規定もあるが
取引所の判断であり、
会員の意向が反映されて決まるものである。
商いが出来ないから
証拠金を下げるという考え方は定見がない
という人もあるが、
取引員としては、
商いがしやすいほうがよい。
まして穀物が主な取引員のセールスマンは、
小豆の証拠金引き下げを
千秋の思いで待っている。
相場のほうは
在庫がふえてくる傾向の時期だけに
押しても不自然でない。
下げたら買いたい人が多い。
一体どのあたりまで下げたらよいのか。
二千八百円あたりなら買いたい。
もう四千円は抜けないのか。
抜けない事もなかろうが、
支援材料がない。
よく買い方の顔ぶれがよいなどというが、
幾ら顔ぶれがよくても力がなければ
雛節句の人形である。
売り屋がいないということもいわれるが、
いないのではなく目に見えないだけである。
思うのであるが、
今の小豆相場は
長い目で見ていくところである。
その考えの骨組みは
次元の違うところで
操作されている輸入枠の調整と、
官民あげて相場を崩したくない
という総意であろう。
これは輸出する側の
中国も台湾も同じ考えだと思う。
そしてそのような現象を見て取って
肌で感じているのが相場師である。
だから今年の小豆相場には、
えたいの判らない投機資金が
流れ込んでくるだろうし、
安ければ幾らでも買いものが入る。
その事を相場が一番よく知っている。
●編集部註
本文に〝証拠金の増減は
各種規定もあるが取引所の判断であり、
会員の意向が反映されて決まるもの〟
とある。
賭け事と商品先物取引を同列で語ると
怒る人がいるかもしれないが、
オッズや掛け金の選定がダメダメな賭場に
未来がないように、
目先の意向に縛られて
相場を張る人の目線に立って
臨機応変に対応出来なかったツケを、
我々は今現在支払っているのかも知れない。
ちょっと前まで、
TOCOMの注文方法は
アルファベットの羅列で最悪だった。
取引する者の事など考えぬ、
外国かぶれの取引経験の浅い
似非相場ヲタクが考えた
としか思えない酷い物だった。
現在、少しずつ商品先物取引側が
〝お客様〟に向き合い始めている。
注文もより明確になり、
限月なしの銘柄も登場。
相場自体も長期サイクルの観点では
大底を打ち新サイクルに入っている。
未来は明るいと思う。