昭和の風林史(昭和五七年四月十二日掲載分)
流水先を争いながら安い
倍崩し二千三百円目標。
三倍崩し三万五百円目標。
本格安は五月だろう。納会後悪し。
小豆相場の流れは目先的に
二千三百円あたりまで行くのでないか?
三月17日から四月1日までの
上げ幅約千八百円。
これをまず下に折れたあたりである。
四千円割れあたりで売り玉の利食いが入る。
買い方も必死に買うだろう。
反面、買い方の投げも出る。
売り方は利食いしたあとの下げが
速かったり、大きかったりする。
今の線型は昨年八月24日の大天井、
九月14日の戻り天井のミニ版である。
八月24日を二月10日とみる。
九月14日を四月1日とみる。
昨年夏の時は、当限が
大幅逆ザヤで八月の高値を上抜いた。
今回は、当限の逆ザヤが
買えないほど弱っている。
これは環境のなせるわざ。
当限千円棒を引いている人には判るが
頭三ツの山をつくり、
これが今黒線に転換して
季節的下げに入った。
去年も当限千円棒は三ツの頭をつくり
三月に入るや三千五百丁を崩して
三万円大台を割った。
市場では三晶の積極売りや
輸入小豆の格差手直しの
期待はずれ(買い方)、
そして小豆以外の雑豆の、
さんたんたる売れ行き不振と
値崩れが話題になっている。
そして、もっと怖いのは
自由化問題が片づいていないことである。
さて、週間棒は
話にならない悪い線を一本入れた。
新値三段も売り線。
そして取り組み減少傾向だし薄商い。
だから今週はS安もあり得る。
見ていると八日満月からの
相場の萎(な)えかたがひどい。
バイオリズムは24日まで落潮だ。
出来高が
東西合計一万六千枚出来るような場面は
四千円割れあたりだろうか。
あるいはもっと下げに勢いがついて
三千四百円あたりか。
出来得ればS安せずチンタラ安がよい。
悪質肺患症状というやつだ。
●編集部註
1月の当欄でこの当時の週足を掲載した。
3カ月が経過し、
もう一度この頃の週足を見てみよう。
売り方は、
2番天井をつけて下落中と見ている。
上記の〝悪い線〟というのは、
恐らく82年に入って9本目の大陰線の事を指す。
罫線玄人は
このような相場展開で出現する陰線を
「五寸釘が撃ち込まれた」と
表現していた事を思い出す。
昔の商品会社には、
日がな一日フロアの片隅で罫線を書き込み
「この足から今後どういう展開が…」
などと尋ねようものなら
小一時間は熱く語りだし、
この手のパンチラインを
連発する気難しくて小うるさい
愛しき古参社員が何人かいたものだ。
昭和の風林史(昭和五七年四月十日掲載分)
来週から下げ足を速める
買い方の防戦買いは
流れに逆らっているようなものだ。
相場は人為の及ぶところに非ず。
小豆相場のトレンドは
綺麗な肩下がりの中にあって
これが来週から下げ足を速くする格好である。
一般に、まだ買い方の反撃を警戒して
掴まらぬよう用心深いが、
買い方は買い過ぎているため守りは、
攻めの三倍の兵力を必要とするから、
きつい追証の攻めを
受けると案外モロイだろう。
特筆すべきは期近限月が重い。
これをいうなれば〝死に体〟である。
当限から下げの千円棒を入れるという事は、
これまでとは相場の流れが、
まったく変わった証拠。
期近限月は現物の重圧と、
高値買いのモタレ、
そこに日柄の疲れがきているから、
納会待たずに、ひょっとしたら、
ひょっとの暴落がくるかもしれない。
要するに相場の基調が、
まったく変化してしまったのである。
それは輸入商社のヘッジ売りの姿勢を見れば判ろう。
罫線は〝天地返し〟である。
昨年10月、11月のWボトム、
即ち三川(さんせん)型を
高値でひっくり返した三山(さんざん)型。
小豆の春天井は54年は三月。
55年も三月。昨年は二月。
そして今年も二月だった。
これは季節的リズムである。
そして春天井は五月崩しに向かう。
この五月崩しがないと夏相場が買えない。
買い方にとっては
千丁も千五百丁も引かされては苦しいから
防戦買いを先限に入れる。
だが結果的には買っただけ悪くなる。
それはトレンドに逆らうからだ。
要するに相場の大勢は
下げに入っているのだから
人為の及ぶところではない。
来週は本格安で四千円を割るだろう。
●編集部註
恐らくこの頃の商品取引会社に行けば、
全国どの店でもどこかのフロアに
ローソク足や
十勝などの気温を記録した罫線用紙が
張られていた筈だ。
穀物相場を得意としている相場師は
往々にして季節に敏感である。
小説『赤いダイヤ』でも
主人公と小豆買いの巨魁が
初めて出会う場面は海であった。
褌一枚で海に入り、
身体で海水温を感じて北の小豆畑を思うのだ。
巨魁は
北の大地で苦労する小豆生産者のため
侠気から買い本尊となったが
80年代はこの小説の舞台から20年以上経ち、
時代は日米経済摩擦の主戦場が
自動車や農産物となった時代だ。
「農協」という言葉は良くも悪くも
既得権を持つ旧勢力のアイコンのように見え、
自由化論者の格好の攻撃対象になり始めたのは
この頃辺りからではないか。
昭和の風林史(昭和五七年四月九日掲載分)
小戻すところ売りの急所
買い方の夢は消えた。
私の四月、五月は暗かったという事になる。
下値は深かろう。
小豆相場は
四千円あたりまで下げてどうするかである。
本当の崩れは五月中旬以後からと
日柄及び俵の重圧を読んでいる人もいる。
そして六月崩しの劇的場面を予言する。
相場の現実はそれよりテンポが速く、
売るのが怖けりゃ
お先にご免と下げ足速める。
売って引かされ、
売って引かされ今の買い方には
嫌というほど苦労させられたから、
誰もが用心する。
しかし環境とみに買い方に離反。
これは日柄のなせるわざ。
まして高値に突っ張ったその反動だ。
やみくもに買えばよいというものでない。
相場には波動というものがある。
上げ潮に乗った時の買い方は、
さながら無人の荒野を行く如くだが、
引き潮に逆らえば、
あたら労多くしてしかも流される。
大勢基調は明らかに三段上げ完了して
例年通り春の天井をマークしている。
強気は二段上げのアタマ、
二月10日の高値を
三段上げ波動で抜くと見ていた。
しかし相場は
実勢悪というファンダメンタルズで
二段上げの頭に遠く及ばず
三段上げを作法通り完了して
すかさず反転してきた現実は、
これは押し目などというものでない。
この下げを
押し目だ、押し目だという人は
相場用語を知らない人か、
腹の中では崩れと思っていても、
それがいえない立場にあるか、
それとも本心、
押し目とみているのかである。
まあ相場そのものの流れを見るより
買い方大手の顔色見て
強弱垂れる人が多いから、
買い方反撃するだろうという
他人頼りの相場観になっても仕方ない。
ともあれ悪い相場は悪い。
戻したらどうなる?
戻したら更に悪くなることは確かだ。
米の値段も崩れる時に
小豆だけ野中の一本杉であるはずがない。
夜が明けたら安い日が続こう。
●編集部註
ゴリゴリの買い方は、往々にして
下がる理由が本当に解っていない、
というより、
理解したくない心理が働く傾向がある。
実際、ある銘柄に対して
〝なんでこの相場がいま下がっているのか
よく解らない〟と
筆者に正直に吐露するトレーダがいた。
相場を張るのが仕事故
休むわけにもいかない。
ただ、このように相場と対峙して
素直な気持ちが吐露出来る人は
〝解る〟時に
ガンガン攻めの姿勢を取って儲けるので、
トータルでは勝っている。
人徳とでもいうのだろうか。
頭が抜けない 相場読むより日柄読め (2018.04.20)
昭和の風林史(昭和五七年四月八日掲載分)
お先にご免と相場は安い
誰もが怖がって売らないから、
それじゃお先にご免と
相場はズカズカ下げていく。
小豆当限引き継ぎ足は
綺麗な〝三山型〟だ。
これは相場が煙ったい。
上には行かんが
ドサっとくるよというシグナル。
逆ザヤ解消。
泣く子も黙るサヤすべりだ。
しかも取り組み減少は、
いつ黒い糸を
長々と垂れてもよい相場であった。
パターンは先月新ポから
17日までとまったく同じ格好。
商いが薄い。買い方が買い支えた。
しかし、階段を
踏みはずして転落するのが見え見えであった。
現物の売れ行きは非常に悪い。
三月末の在庫が数字の面で減っても、
相場は無反応。四月は入荷がふえる。
商社のヘッジも嵩みだした。
悪い相場である。誰かがいった。
酒は白雪―。相場は下行き。悪い洒落だ。
どこまで下げるか。それは判らん。
二段上げの
頭が抜けない三段上げを完了した。
四月1日馬鹿天井で
春の相場の終わりを告げたことだけは確かだ。
従って下値は六月まで深いと見たほうがよい。
前にも書いたが昭和47年型に類似している。
三月甲の安回り年に出る姿。
二千五百四十万㌦に
予備枠千六百二十万㌦がついた事で
買い方は夢も希望もなくなったのが本当だ。
人は年を取るだけでは決して老けないという。
理想を失った時に老いる。
相場師も一緒だ。
追証追証の場勘が攻めても、
夢と希望のある限り、
どんな苦労もいとわない。
千六百二十万㌦の予備枠は
頭の上に石を乗せたようなもので夢破る。
しかも買い方は無理をしてきた。
流れに逆らうこと強引。そのとがめだ。
四月、五月チンタラ節。
買い方にとっては切ないところだ。
夜が明けたら安い。
誰もが怖がって売らんから値は消えていく。
どこを売っても大丈夫。
●編集部註
げに恐ろしきはサヤすべり。
金なら受ければ良いが、
砂糖なら腐らないので
これも受けて良いだろう。
しかし、穀物はそうもいかない。
買い方は追い込まれている。
限月の端境期に際して、
筆者の知る百戦錬磨の相場師は
「大局が間違っていない
という信念があるなら、
目を瞑って限月を変えろ」
という指導を受けた事がある。
この〝大局が間違っていないという信念〟
という文言がポイントである。
まさに「相場読むより日柄読め」。
長期相場サイクルを
しっかり把握しておく必要がある。
昭和の風林史(昭和五七年四月七日掲載分)
落花帰らず春風憂いあり
四月一日馬鹿天井。
あれで頭の低い三段上げを終わった。
落花枝に帰らず憂い濃し。
小豆の現物問屋筋は異口同音、
売れ行きが非常に悪いし、
横の流通(取り引き)は、
まったく止まっている。
また小豆以外の雑豆は値下がりで
輸入採算を割っている―と。
二千五百四十万㌦に
千六百二十万㌦の予備枠という事は、
定期の二万六千円など
決して付けさせないぞ
という行政側の無言の圧力である。
自由化を阻止するためには
止むを得ないという配慮かもしれない。
幾ら枠があっても円安だし、
買うものがなければと強気は思うだろうが、
中国には一万㌧の安徽小豆がある。
これを入れたらよいじゃないかとなる。
「政策には逆らうべし・逆らうべからず」
という相場金言がある。
三万五千円以上は感心しない
という政策当局の心証を
逆なでするような行為は、
買い方自ら墓穴を掘る。
場勘の関係で下げるわけにいかない―
というのであれば、
これは建玉中心主義である。
相場を強気するのではなく
力を過信した考えで、これは邪道だ。
取り組みは減少傾向である。
これは崩れる前兆とみてよい。
順ザヤ。
そして
泣く子も黙るサヤすべり現象が始まっている。
在庫は四月末、五月末と急増カーブを描く。
売れる時期に相場を安くして
モノの消費をはかるのが本当なのに
敢えて高値に突っ張って
売れ行きを悪くするという事は
経済原則に反する。
即ち流れに逆らっているのである。
流れに逆らう事は、
流れを変えることではない。
それだけあとを悪くするのである。
●編集部註
言わずもがな、投資と投機は違う。
株式市場の本分は企業の資金集め。
故に、資本にお金を投じると書いて投資と読む。
一方、先物取引の本分は物価の安定。
モノの価格が高くなれば生産者は嬉しいが
消費者が苦しい。
安くなると消費者は嬉しいが
生産者が苦しい。
故に相場の高下極まった機会に
売買を促す事で価格は平準化する。
機会にお金を投じると書いて投機と読む。
買い方の皆さん、
商品先物取引の原理原則を
忘れていやしませんか、
とここで
風林火山は指摘していると思って戴きたい。
原理原則は
英語でプリンシプル(principle)という。
今思うと、風林火山は勝ち負けは別として、
相場のプリンシプルを
しっかり持っていた人であった。
故に広告を貰っている主務省でも
取引所でも取引員でも
横紙破り、怠惰、横着な姿勢を取る者は
徹底的に攻撃した。