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森羅万象

「六日の菖蒲」「十日の菊」 躊躇逡巡せず (2018.08.09)

昭和の風林史(昭和五七年七月二四日掲載分) 
躊躇逡巡せず買い方針?
小豆は積極買いよしのところ。
条件が揃った。意外な展開になろう。
来週は爆走高。
大阪は天神祭りで暑い時期なのに
変なお天気だ。
産地も土用に入って
日照も気温もよろしくない。
北海道は来週から
下り坂の気象サイクルに入る。
関西では昔から天神底という言葉がある。
今月は、なんだかんだと
大変だった七月七日の七夕さんの前日が
皆既月食。
そして22日に日食があった。
本間宗久伝には「日蝕の事」
日食、月食ある年
是迄大小となく不作なり―と。
相場界に
怨み相場なるものがあるのは御存知。
桑名も六本木も、
もうちょっと頑張っていたら、
格好もついただろうに―
という天候崩れの場面があるはずだ。
これをあとの祭りなどという。
いわゆる十日の菊である。
見ていると、
腹立ちまぎれがまだ続いて
感情的な売りが多い。
売り目標二万二千円―
などというのもその部類で、感心せん。
投機資金は、
相場が熱をもってくると
必らず帰ってくる。
小豆マニアは、やはり小豆である。
しかも売ってきた人は
大なり小なり儲かっている。
解け合いで儲けが少なかったというのは
死んだ子の歳をかぞえるようなもの。
この世界は、
済んだことは、さっぱり忘れる事。
(ただし相場に関してのみ)
線型は五千円下げの二千五百円戻しが、
三千円上げ三万一千円(引け足)を
取りに行く姿。
女々しい弱気が多いだけに、
天候崩れとともに
これこそ天候相場という爆走を
展開するだろう。
要するに底ができたのである。
安値から日足陽線三本で食い込み、
千円棒を立て理想の出直り。
取り組みも漸増傾向は
逆ウオッチで買い暗示。
相場が若いということ。
これが強味だ。
躊躇逡巡することなく買いである。
●編集部註
 まだこの頃、メリマン氏による
ファイナンシャルアストロロジーの見方は
日本に入って来ていない、
メリマン氏自身が
相場とアストロロジーの関係について
深く解析してみようと思い始めたのが
80年代初頭、
ボルカー・ショック後に
急騰した金相場を目の当たりにしてから
なので、黎明期だ。
 ただ日本ではそれ以前から、
月齢と相場の関係について
分析する人はいた。
また1930年代の
相場で活躍したギャン氏
早い惑星の動きに注意しろ
とアドバイスしていたという。

「秘伝・気を転ず」宗久伝 感情的相場観は捨てる (2018.08.08)

昭和の風林史(昭和五七年七月二三日掲載分)
もう、売る相場ではない?
戻せば弱気(売り)も出てこようが、
もうこの小豆売るところでない。
本間宗久伝に「秘伝・気を転ず」という一項目がある。
ともすれば惰性的な弱気になりやすいが、
気持の整理をつけて
感情的弱気をさっぱり捨てるべきだと思った。
戻ったら売りたい人が割りに多い。
また、目立つ売り玉が出ている。
この筋は『二万二千円目標』で
ケイ線一本という。
売りっぷりを見ていると、
なんとも、あぶなそうで、
掴まるのでないかと思う。
いわゆる新たなる売り仕手だ。
相場は反発した。
これは
仕手崩れ後に見せる自律反騰でもあるが、
下げ日柄が限界を越えていることから、
環境が落ち着いてくると、
冷静な見方で買い方針が有利になるところ。
また、
あれだけの取り組みが一瞬にほどけた。
これは原点に戻って考えると
玉整理完了といえる。
値頃水準も、だいたいこのあたり抵抗帯だ。
それに次期枠の絞り込み
という政策面からのテコ入れも
考えておきたい。
天災期は、これからが山場でもある。
今年は二週間周期のリズムだから、
来週から下り坂のお天気だ。
このように考えてくると、
いずれ証拠金も下げることだろうし、
規制も緩和方向にもっていかないと
取引所も業者も困る。
もとより現物のヘッジや
仕手手持ち現物の金融流れや
台湾小豆の値下がりなどの
軟材料もあるけれど、
相場さえ活力を取り戻せば
投機資金は小豆に戻ってくるだろう。
このように考えてくると
腹立ち商いで相場に売り向かうのは
愚の骨頂だと思う。
相場の世界は済んだ事は薬にこそすれ、
いつまでもくよくよしない事。
●編集部註
 相場は、勝つ事よりも
勝った後の方が恐ろしく、
そして難しい。
相場師あるあると言えるだろう。
 往々にして、
勝った後にいらん事をして、
被る必要もなかった損を
被る事がよくある。
故に「休むも相場」なのである。
 実際、小豆相場は
ここから反転上昇に転じる。
 しかし、大局的には
今回の相場で売り屋には
恩讐が残っている。
売り屋の恩讐の彼方に見える光景は
下降トレンド。
気を長く、臥薪嘗胆で
相場に接する売り屋の強さが
これからの相場で目撃される事になる。
 「相場は運・鈍・根」という相場格言がある。
運が回ってきた相場師が
鈍と根を駆使して臨む相場には凄みがある。

寂寞(せきばく)『じたばたせずに遊んでいるのが一番よい』松下幸之助 (2018.08.07)

昭和の風林史(昭和五七年七月二二日掲載分)
ほとんどの人は「気」がない
小豆相場は下値探りの段階のようだが、
ほとんどの人は無感動。
急に静かになってしまった。
強弱なしの人が多い。
黙して語らず。
これを寂寞(せきばく)と言う。
残れる限月ただの二本。
取り組みは枯れ細る。
まさに国破れて山河あり。
相場は、反発もしよう。
しかしまた売られる。
逆張りでお茶を濁すだろう。
人間というものは、
心に、ときめきを持てなくなったら、
持ちも下げもならないもので、
張りを失ってしまうと、
高かろう、安かろう、
まったく感動しないから困る。
小豆相場に取り組んできた人達は、
売り方にしろ買い方にしろ
心の張りを失ってしまった。
これを取り戻すには、
11月限が前にまわって
六本の限月が全部揃うまで
時間がかかるかもしれない。
一度失ってしまった小豆市場の信頼は
半年一年で取り戻すことはできないが、
気持を落ち込ませていては、
業界再建が遠くなるばかりである。
そのように思いなおして、
純粋相場強弱一本でいこうと思うのだが、
なにせ、二本の限月だけでは、
思考が展開せず、これは困りました。
本当言うと、このように気の乗らない時は、
相場など見えないもので、
まして手出しなどすると必らずいかれる。
松下幸之助さんが20日の朝日新聞に、
『じたばたせずに遊んでいるのが一番よい』
というようなことを言っていた。
さすが達観の境だと思った。
相場の敵は(1)に腹を立てるな。(
2)に悲観絶望するな。
(3)に、むやみに喜ぶな―である。
今回の事件で教訓を得た人は、
それが無形の財産である。
●編集部註
 まだこの頃、松下幸之助氏は
ご存命であった事に驚かされる。
1894年生まれなので
当時88歳、米寿である。
鬼籍に入ったのが1989年4月なので、
明治に生まれ、平成元年まで
生きておられたという事になる。
この方のような生ける伝説のような人物を、
人は勝手に殺している時がある。
有名なところでは、
晩年のアルベルト・アインシュタインの
エピソードが秀逸である。
 戦時中、物理学者として
核爆弾が開発される可能性について、
大統領に手紙を送った事で知られる彼は、
戦後は各メディアに登場し、
核兵器廃絶を訴えていた。
 それを見た小学生だったか中学生だったか、
彼宛てのファンレターには
こう書かれていたとか。
「ごめんなさい。教科書に載っている人が、
まさかまだ生きている人であったとは
思ってもいませんでした。
私の頭の中で、あなたは
ローマの哲学者とかの隣にいました」。

相場は現在進行形 今と未来に目を向ける (2018.08.06)

昭和の風林史(昭和五七年七月二一日掲載分)
原点に戻って相場を見る
値段としては、よいところにきているから
安値を叩いてはいけない。
小豆相場は下値圏に届いたとみる人と、
現物市場の荷圧迫で
相当長い低迷を続けるだろうと
考える人にわかれる。
建玉の方は一応終戦処理が終わるところ。
考えてみると、
取り組みも細ってしまったし、
先二本だけの限月では
重い病の人が
辛じてお粥を口にするような
小豆市場である。
決して無理のできる体力ではない。
しかし、天災期はまだ残っている。
限月二本に投機が集中し
値段も低ければ
一度天候に異変が生ずると
55年夏のような
アンペア(電流)メーターの針は
走ってしまうこともある。
本年五月、六月の相場は
ボルト(電圧)メーターが高く
電流が走らなかった。
この場合、
ボルトというのは取り組みであり、
アンペアは上昇値幅のこと。
近年の小豆相場は
夏に一相場の山を作り、
秋にかけて底を探り、
そして春に向かってまた高い。
春高か青田底になる―
という繰返しだった。
このパターンがまだ生きているとすれば、
小さい山でもよいから
七月末から八月にかけて、
あるいはもう少し遅れて
八月から九月に反騰するだろう。
逆に下げ相場が
これからも続くとすれば
業界はさらに沈滞する。
できることなら、
上げ波動にのって、
業界が
元気を取り戻してほしいものである。
強弱は慌てることもないが、
ここ両日、相場の動きと
商いの進み具合いを
ゆっくりと見定めて方針を決めたい。
●編集部註
 冷静に考えると、
この時の悲惨な相場展開は、
明らかに人災なのだが、
ハッキリと〝天災〟と
言ってしまうところに
相場師としての矜持がある。
 過去の事を検証する事も大事だが、
相場は現在進行形であるが故に、
相場師は
今と未来に目を向けなければならない。
それが上記の文章にハッキリと表れている。
今と未来のために、
過去を振り返っている。
この崩落相場が
風林火山の言う通り天災なら、
これは一種の〝防災〟と言えよう。
天災は忘れた頃にやってくる。
 この時期、日本は梅雨であった。
初めの頃は空梅雨であったという。
 しかしこの頃から
西日本各地で活発化した梅雨前線の影響で
大雨を記録。
この日はいったん小康状態になるが、
23日頃に再び活発化する。
 特にこの時、長崎県では
集中豪雨災害に見舞われる。
市内にかかる重要文化財、眼鏡橋は半壊。
死者・行方不明者299人、
負傷者805人、
被害総額は年時価で
315億円にのぼる未曽有の
大水害となった。

ケチのついた相場 原点に戻り、想を練る (2018.08.03)

昭和の風林史(昭和五七年七月二十日掲載分)  
強弱あわてることもない
ものの考えかたを
また一から組み立てていくところ。
強弱にあわてることもない。
小豆市場は先二本だけの終戦処理段階。
16日までのことは
済んだ事として区切りをつけ、
これからの相場を考えてみたい。
一瞬にして三市場の
出来高六万一千七百五十二枚。
強制解け合いだから当然とはいえ、
玉整理完了。
強気的考え方の土台となるのは、
下げ値幅、新穀の値頃水準、
玉整理、作柄はこれからの天候次第。
そして二月10日天井からの日柄など。
弱気的考え方の土台は
人気が離れてしまうことと
現物筋の流通面の混乱が尾を引くこと。
ヘッジする場所が先二本に限られ、
向こう四カ月間納会がない。
ということは、新旧格差不利でも
一応先二本にヘッジする。
だから戻りを見て繋ぎが出るし、
桑名手持ちの現物も圧迫要因になる。
今月末消費地在庫はふえるだろう。
普通なら天候相場で
人気面がウエイトを占めるが、
もう小豆はしないという人も多い。
取引員会社は、
終戦処理に営業戦力を阻害される。
しかし、需給相場的色彩70%、
天災期的色彩30%という性格になって、
一挙にほどけた投機資金の、
どの程度が小豆に再び取り組んでくるか。
市場には、
まだ強化された規制が残っているし、
仕手後遺症が出てくるのはこれからだ。
取引員も大なり小なり被弾している。
このような時のモノの考えかたは、
一度なにもかも
頭の中のものをカラッポにして、
原点に戻り、
想を練ることである。
焼跡の釘と見るもよし。
相場は相場と見るもよし。
また、休養するもよし。
強弱なしのところだ。
●編集部註
 この予言通り。
穀物相場は斜陽銘柄となる。
現在、小豆はおろか大豆相場も
開店休業の状態になっている。
値はついているが、
商いがなければどうする事も出来ない。
一度ケチのついた相場が
昔の隆盛を取り戻すというのは
至難の業であるという事を、
我々は小豆以外に
パラジウム相場で経験している。
 歴史を振り返ると、
この時期、日本を見る世界の目が変わり始めた印象を筆者は持っている。
 この年の6月、FBIが行った産業スパイのおとり操作で日本の電機メーカーの社員が逮捕されている。
 この年のこの頃、国際捕鯨委員会で鯨の商業捕鯨の全面禁止が採択されている。
 日本は、良くも悪くも高度成長期を経て急成長してしまった。その代償を払う時期がここから始まったとも言える。