証券ビュー

森羅万象

支形の地(孫子)〝政策は信ずべし・信ずるべからず〟 (2018.10.15)

昭和の風林史(昭和五七年九月十七日掲載分)
空気の止まった小豆相場
商いが非常に薄い。
売り方も、買い方も息をひそめている。
無風の怖さを感じる。
休日明けは、
空気が止まったような小豆相場。
17日きょうの作況発表を待つところ。
商いは閑散などというものでない。
森閑である。
このような時に声を出したり、
手をふると斬られる。
玄人相場の怖さでもある。
相場としては上昇エネルギーはない。
いまの保合圏(九千三百円~八百円)を
維持するのが精一杯である。
この保合が下に放れると
九千円割れ一瞬だ。
買い建は、
そのほとんどが三万円台である。
これらの玉は、
まだ早霜一発を期待しているから
投げられん。
そうこうするうちに収穫が進んでいく。
あとは需給相場になる。
モノが売れるか売れないか。
売れて当たり前、
売れなければ下げるしかない。
あんまり安ければ
政策面のテコ入れもあろうが、
政策は信ずべし・信ずるべからず〟という。
もともと価格政策などというものは
後手、後手になるもので、
早手回しに出るべき性質のものでない。
相場が二万七千円ぐらいに落ち込んで
世間が騒ぎだしてからである。
勝敗は鞘の中にありという。
刀を抜いた時にはもう決着がついている。
それと同じように相場も
今みたいに森閑としている時に
案外勝負がついている。
七月19日安値の一本足。
12限(大阪)の二万八千百六十円。
あの値を取るか、
あれ以下に落とすかせんと
今年の相場の大底は出来ない。
すなわち秋底である。
そのうち変化があろう。
待つは仁という。
待つは忍耐でもある。
霜軍営に満ちてまさに秋気清し。
数行の過雁月三更

という場面である。
孫子兵法支形の地
われ出でず、彼出でず。
流れの変化を待つのみ。
●編集部註
 霜滿軍營秋氣清
 數行過雁月三更
 越山併得能州景
 遮莫家郷憶遠征

 この七言絶句には
九月十三夜陣中作」という題名がついている。
 作者は、上杉謙信であると言われている。
 越中・能登に侵攻、平定した謙信は
1577年に七尾城を包囲。
落城の2日前に詠んだとされる。
 七尾城の戦いの後、上杉軍は
撤退中の織田家、柴田勝家軍を追撃。
撃破する。
 その年の12月、
次の遠征に向けた動員をかける。
翌年3月、遠征の準備中に倒れて急死。
一説には脳溢血であったという。
 もし彼が生きていれば
この遠征で織田信長は
倒されていたかも知れない。

天上影は変らねど 栄枯は移る世の姿(耕作) (2018.10.12)

昭和の風林史(昭和五七年九月十六日掲載分) 
小豆は九月中にドカ安が
小豆は薄商いで玉の出具合いの
押したり突いたりしていて
ドカ安になるだろう。
黒い九月といって、
なんとなく商取業界は騒然としている。

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意外に深い 秋底をつくるための下げ (2018.10.11)

昭和の風林史(昭和五七年九月十四日掲載分)
小豆の下値は意外に深い
小豆は七月19日の下値を
とりに行くだろう。
要するに
秋底をつくるための下げだ。
小豆の高値掴みの人は、
12日の日曜の台風18号進路を
夜遅くまでテレビに張りついて、
よしこれなら産地直撃、
週明けS高かも―と
期待したことであろう。
確かに北海道二番限月は
S高付けたが、
被害もなかったようで
消費地相場は、よく知っている。
高値掴みの玉が逃げられるほど、
相場に戻す力はなかった。
今回の台風18号が日曜でなく、
あれが相場の立っている日だったら、
もう少し買ったかもしれない。
ということは、買い方にツキがない。
相場の世界で
なにが一番悲しいかといって、
このツキが離れるほど
悲惨なものはない。
この七月に
潰れた桑名筋にしても
去年は10年ぶりに戻ってきたツキだった。
これを大切にしなかったがため
今年に入って延々と苦戦して
遂には店二軒を飛ばし
業界に多大な迷惑をかけてしまった。
いま生糸市場で似たようなことを
栗田氏がやっている。
彼からもツキが離れている。
四斗樽一杯の才能よりも盃一杯の幸運が勝るのが人生であり相場である。
ツキが離れた時は無理をせず、
腕をこまねいて放つなかれ。
日暮れて道遠しだが、
忍の一字しかない。
二万九千円は割れない
とみる人の多い小豆だが、
割るときゃ一発雨ん中。
三万円は傘。
二万九千円を割るために
戻したようなものかもしれない。
大幅増反、豊作相場を
出しきっていないこと。
三万円台の因果玉が
整理されていないこと。
景気がよくないこと。
そんなことで、
収穫が進めば、
大根どきの大根相場。
買い玉の大掃除で
二万八千円を割っている
かもしれないと思う。
七月19日の安値は必らずとりに行く。
●編集部註
 鍋島高明氏がこれまで
何冊にもわたって
書き綴られておられる歴代の
相場師たちの評伝を見ると、
つくづく引き際の難しさを感じる。
勝ち逃げという表現は
するべきではないかも知れないが、
最後の最後で
一敗地に塗れるケースが少なくない。
 勝利者は、
大概相場から離れて
別の分野に移っているケースが多い。
鍋島氏の著作を読むと
「え、この人相場張ってたのか」
という人物が登場する。
 繰り返す諸行無常―。
 相場とは関係ないが、
この日グレース・ケリー
自動車事故で死んだ。
 ヒッチコック作品の
ヒロインとして頻繁に
出演した彼女は、
1956年に引退。
モナコ公国の公妃になっていた。

呆くら行政 勝負する度胸なく其の場限り (2018.10.10)

昭和の風林史(昭和五七年九月十三日掲載分) 
今週は輸大期近上昇週間
この輸大前二本は
押した幅のまず倍返しがみえている。
小豆は、つるべ落としだ。
風林が生糸を書くようでは
世も末だ。などといわれた。
ほんまや。そう思う。
とどのあげくは
商取業界違約月間。
生糸の角田が危ないという話は
前々からあった。
取引員経営者として
相場の張り過ぎである。
七月に京丹、川村のオーナーが
小豆の張り過ぎで逆境一発
場勘払えず業界に迷惑をかけた。
みんなで違約は怖くない
という風潮は、
商取業界の信用を落とすばかりだ。
取引所も取引所だ。
三木滝蔵氏健在ならば、
こんな馬鹿なことには
ならなかっただろうと思う。
役所も、あの伊藤課長というのは、
なにをしているのだろう。
確りしてもらわなければ困る。
彼に小豆問題の時、電話したら、
えらい腹立ててもの言いよったが、
市場利用者は、
呆くら行政にもっと腹立てている。
さて、小豆だが、
ホクレンの百三万九千俵収穫予想は、
ちょっとおかしい。
第一、相場様が、
ウッソダーといっている。
三井物産から
送ってくれた十勝の小豆の写真を
見ると、まるでバナナの房である。
こんなの見たこともない。
百四十万俵は多すぎる
という人もあるが冗談ではない
百五十万いくかもしれないよと。
それなら次期枠零でもよいが、
そうもいくまい。
市場は、
七色パッチの神戸のKさんもそうだが、
三万五百円ないし八百円まで
戻すだろうと大層強い。
しかしKさんの強弱は、
五秒過ぎたらどう変化するから判らんから、
その場限りとしておいたほうがよい。
それはそれとして輸入大豆の強いのは、
これいかに。
期近大阪当面五千円目標がいわれる。
今週は輸大週間になろう。
●編集部註
 やはり、悪口は
知性と教養があった方が良い。
 〝呆くら〟とは素晴らしい表現である。
平成の御代に
この言葉をネット検索しても
すぐに出てこないところがまた良い。
ネットで出てこなくても
たった3文字で罵詈雑言感が出ている。
なかなかこうはいかない。
 凡人だとこういう時には
ぼんくら〟を使いたがる。
漢字だと「盆暗」。
賭博用語で盆の上での勝負で
目利きが暗い者(即ち下手くそ)の事を
指すのが語源。
ただ、これだと少々生々しすぎる。
 盆の上で勝負する度胸さえなく、
呆けているくせにエラそう
―。
そんな感じが〝呆くら〟の
3文字に凝縮されている。
 〝呆くら〟行政は
今も昔も変わっていない。
腹は立ちっぱなしである。

そのような足どり 政策はたえず後追い (2018.10.09)

昭和の風林史(昭和五七年九月十一日掲載分) 
小豆戻り待ちに戻りなし
来週は小豆崩れ、輸大期近高のリズムが
戻ってくるだろう。
そのような足どり。

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