カレンダーとの戦い 辛抱する木に花咲く (2018.11.27)
昭和の風林史(昭和五七年十月三十日掲載分)
辛抱する木に花咲く輸大
輸大の買い方はカレンダーとの戦いだ。
煎れも出ているし、
強気もふえたから売り場。
輸入大豆相場11月限が
煎れと新規買いで夜放れした。
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「の・ようなもの」 巻き込まれた格好 (2018.11.22)
昭和の風林史(昭和五七年十月二八日掲載分)
各市場ことごとく衰老す
仕手相場のあとは、よれよれになる。
輸大も生糸も荒涼。
それにしてもひどいもんだ。
生糸市場は騒然としている。
現物の洪水に巻き込まれた格好。
それでもなお横神在庫の
水嵩は刻々とふえ、
早や来月渡し物五百俵が見えている。
買い方は
俵の読み違いをしたのでなかろうか。
また六本木絡みの問題などもあり
一寸先は闇。
相場自然の流れからいえば、
あるべき姿、
即ち順ザヤに戻るしかない。
生糸戦線は長い戦いであった。
兵馬倥偬(こうそう)の果て
三軍ことごとく衰老。
空にハカない片割れ月。
大受け渡しのあとに残るのは
疲労した市場と、
よれよれの相場のみである。
注目の輸大納会は
荷を集めるだけ集め
名古屋は六千円台乗せ。
大阪は六千円に三文遠慮した。
現物筋の話では
六千円の千円下で現物いらないか?
という話でしたが
実需は手を出しません―。
買い方、場勘は取ってきたものの、
大仕事の割りに益なきご苦労。
意地は通せど、
聖域を犯したという批判は
まぬがれず市場不信感がつのる。
特に東穀の六千二百十円納会は、
やりすぎだ―という批判が高まった。
いやはや恐るべき昨今の相場である。
この輸大も生糸みたいに
納会後が悪いですと、
ものいわぬ11月限がものをいう。
納会のない小豆は関心が薄い。
先限九千円抵抗は値頃観の買い。
割って戻すか、割らずに戻すか、
割ってよし、割らずもよし、
落ち行く先は
二万五、六千円(12月)。
ともかく業界が荒涼としていること。
小豆を
大きく買い上げていくエネルギーは
ない。
玉の出具合い、薄商いで反発しても、
現物の売りの前には値がモロイ。
そして政策政策いうけれど、
政策は信ずべし、
されど信ずるべからずだ。
●編集部註
自裁した芥川龍之介は
「僕の将来に対する唯ぼんやりした不安」
という言葉を残したが、
この文章は
商品業界の将来に対する
唯ぼんやりした不安
という言葉になるだろう。
〝唯ぼんやりした不安〟
というを描いた作品は
古今東西多岐にわたるが、
大別すると陽気と陰気に分かれる。
いま、東京池袋にある文芸坐では、
映画監督森田芳光の
全作品の回顧上映しているが、
彼が81年に撮った「の・ようなもの」は
陽気な不安の映画であった。
バブル景気は
86年まで待たなければいけない。
その前に、
円高不況というものがやって来る。
この時代はその不況の入口であり、
不安もまだ陰惨なものではなかった。
十里風生臭し 征馬すすまず人語らず(乃木希典) (2018.11.21)
昭和の風林史(昭和五七年十月二六日掲載分)
征馬すすまず人は語らず
注目の生糸納会。そして明日は輸大納会。
見ている側も手に汗だ。小豆気がない。
秋蚕の糸吐き急げ値が荒い―というところ。
横神生糸在庫は増勢を続け、
納会蓋をあけたらどうなるか。
先月に続き、受けも受けたり、
渡しも渡したりと予測されていたが、
二番限以降を見ていると寒い。
線は10月20日中段の戻り天井を打って、
11限の(神戸)七百三十円割れから
一気になだれ現象、
積水を千仭に落とすが型になる。
輸大は強気を支援する環境、材料が
常識化して、
これまた当限納会がドラマである。
輸大(大阪)11月限の線型は
三番天井型。
15日に上寄って
五寸釘のような陰線を叩き込んだ
この線が支配している。
日柄にしても実数52本。
買い主力は智略の用兵の極致を
余すところなく九月、十月と
見せてくれた。
そしてこれを11月にも延長を―
と強気している人たちに
期待を持たすが、
兵も馬も疲れ果てる姿。
乃木希典は
山川草木うたた荒涼、
十里風なまぐさし、
新戦場、征馬すすまず人語らず、
金州城外斜陽に立つ―と。
まさに生糸当限、輸大当限
そのものの観。
それはそれとして小豆のほうは、
ここまできたけれどという表情だ。
いま一歩前に進めば
売りやすくもなれば、
買いやすくもなろうが。
見渡せば強気が意外に多い。
カンカンの強気は
三万一千五百円(三月限)という。
普通の見方で
先限三万五百円あたりである。
小豆の上値は
大きく見ないほうがよいと思うし、
11月新ポは売りになると見る。
大勢的には
二万三、四千円といいたいが
二万五千円~六千円が
年内にあるだろう。
いまのところは
八千円の安値を売った玉が、
いじめられているが、
ナンピン売り乗せがご正解。
●編集部註
相場とは全く関係がないのだが、
この記事が掲載された82年10月26日に
灰田勝彦が亡くなっている。享年71歳。
「燦めく星座」に代表される
戦時中の人気歌手にして、
当時のアイドル高峰秀子と
共演するような映画スターでもあった。
戦後に入っても
歌手と映画スターとしての人気は衰えず、
上原健や笠置シズ子と共に
出演した映画の主題歌「野球小僧」は大ヒット。
これは後年、
小林克也や伊武雅刀によってカバーされ、
ミズノのCMにもなった。
そういえば民放ラジオのCMソング第一号の
歌い手も灰田勝彦である。
その昔、特に戦後間もない時代は、
映画の主題歌が
時代を象徴するヒット曲になる。
あの「リンゴの唄」も
映画の挿入歌であった。