昭和の風林史(昭和四九年二月二十日掲載分)
投機市場の法則は
投機熱が新たな投機エネルギーを呼ぶことである。
小豆は人気化の前兆。
「水底にゆく水うつる春日かな 句仏」
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昭和の風林史(昭和四九年二月十五日掲載分)
押すだろうとか、上値目標は―
などと考えないで大相場出現の信念で
罷り通るのが王者の戦いだ。
「白梅や寺に嫁来る噂など さかえ」
押すのではないか?と心配している。
押したっていいじゃないか。
しかし、押してくると、
それが押し目と判っていても、
いい気はしない。
押し目は買わなければならない相場。
いや、押し目を買っておけば
わかりやすい相場であるが、
買わずに売ったりするものだ。
一万六千円。ひとつの節(ふし)、
関門だという見方。
あるいはそうなのかもしれない。
関門ならどうなのか。
ひとまず利乗り玉を利食って押し目待ち、
押し目買い。―冗談ではない。
利食いしたら〝押し目待ちに押し目なし〟だ。
相場なんて絵に書いたようにいかない。
押し目ありという警戒人気が強ければ強いほど
押しても浅い押しで終わる。
春まだ浅き戦線の湖上にかおる梅の花、
せめて一輪母上に便りに秘めて送ろうじゃないか―
という歌があった。
中国大陸での戦線が膠着していた時分の唄である。
春まだ浅きとか、押しても浅い押し―
などという言葉は、
淡白で、さっぱりしていてよろしい。
大発会高値に対して半値押し地点が
一万六千八十円どころ。
相場の勢いからいえば、三分の二戻し地点、
即ち一万六千六百八十円。
春の相場は動けば早いものである。
電光影裏春風を斬る。
それから先の事は、そのあたりに来てから考える。
恐らく相場が高くなれば、
もっと高くなる材料が出現するものである。
いまのところ、途方もない上値を
考えている人は少ないが、
昨年活躍した仕手筋が後退していて、
この相場である。
一度相場の麻薬に中毒した人は、
必ず再び相場の刺激を求める。
それは、人を一度食った虎が、
必ずまた人を食いに来るようなものかもしれない。
まして手負いの虎となれば見境がない。
虎うそぶいて風冽しく、
竜興りて雲を致す―。
本年の小豆相場は、
ともかくスケールが大きいと思う。
穀物市場を敬遠していた大手専業取引員
(たとえば富士商品の如く)が
活発な手口を披露している。
異常天候と食糧不足とインフレ。
ひとたび熱風呼ばんが、
小豆相場の二万円は
淡々としたビジネス行為である。
●編集部注
富士商品とは、
いまのフジフューチャーズの事。
現役の会社が登場すると、なんだかうれしい。
【昭和四九年二月十四日小豆七月限大阪一万五八九〇円・一五〇円高/東京一万五七七〇円・一一〇円高】
昭和の風林史(昭和四九年二月十四日掲載分)
五千五百円以下は下げ過ぎだった
―という事になる。
底入れ→自律戻し→大出直りのパターンだ。
「梅見るやつとめは遠き日のごとし 民郎」
小豆相場は、案外全値戻し(大発会の水準)を
難なくやってしまうのではないかと思う。
というのは、これといった硬材料もないのに
反発する姿勢というか、その態度が誠によろしい。
この事は、相場に底が入った→自律反騰→出直り。
そして、五千五百円以下は、
下げすぎの値段であった(のかもしれない)事を改めて知る。
産地筋は安値にそっぽを向いて頑として売ってこない。
見る者にすれば、農家は欲の上に欲の皮が突っ張って、
いい加減強欲に思うだろうが、そうではない。
①生産コスト上昇。
②懐ろにゆとりがある。
③今年の天候を楽観していない。
④輸送事情が悪い。
⑤汗も流さず、ひと握りの豆も生産しない投機家に
そうそう勝手に値段を決められては面白くない。
消費地の二万円相場は必ず実現するはずだ
―と生産者は期待し、
そして本年の天候に賭けている。
相場とは面白いもので、高くなると買いたい。
突っ込み安値で、かなり売り込んだ取り組みが
蠢動してきた。
おやおや―の相場である。
こんなはずではなかったのに―。
関西では両建てのことを〝パッチ〟という。
パッチとは、ももひきのことである。
高値掴みをして安値でパッチをはいて、
はいたパッチのまたパッチ。パッチに底なしである。
切り違いパッチなどと申し、
仏さまのお手手のように左手の人差し指は天を示し、
右手の指は地を示し、天上天下唯我独尊。
さて、きのうも書いたように
五月限で半値戻し地点の一万五千七百三十円。
七月限は五月限にサヤすること三百円を買うから
先限で一万六千円地点。
振り返れば半値を折り返す峠の茶屋だ。
こうなると突っ込みを叩いた玉に追証がかかる。
ベルが鳴るなり電話のベルが追証入れよか、
ララ踏みましょか―。
逆に辛抱していた買い玉が逃げ腰になる。
水風呂で辛抱していた人たちが、
少し温かくなると、あわてて飛び出す。
そして、なお強く見えると今度は飛び付き買いをする。
いつもの相場である。
構う事はない。丸太棒のように図太く強気すべえ。
●編集部註
やってみると判る。パッチは楽なのだ。
張る側も、張らせる側も。
【昭和四九年二月十三日小豆七月限大阪一万五七四〇円・八〇円高/東京一万五六六〇円・一〇〇円高】
昭和の風林史(昭和四九年二月十二日掲載分)
すでに小豆は底入れしている。
市場は戻り売り人気が支配している。
それでよいのだと思う。
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