昭和の風林史(昭和四九年四月十三日掲載分)
来月の北海道の新ポは新穀限月。
投機の対象となろう。
目先押すもよし、一路天候相場へ。
「山吹や暮ゆく水のとどまらず 水巴」
ビジネス街は、ひっそりとしている。
オフィスにかかってくる電話も、まったく少ない。
郵便物はぱったりと来なくなった。
>>続きを読む
昭和の風林史(昭和四九年四月十一日掲載分)
スト明け後の来週あたりから
小豆本来の活発な動きに入りそうだ。
>>続きを読む
昭和の風林史(昭和四九年四月十日掲載分)
最大の山場〝天災期〟を控えて
小豆はゆるむことがない。
押せば玉を仕込もうという市場だ。
「春深し踏まじとすれど踏む苔の 三汀」
交通ゼネストでも全国の商品取引所は
常に変わらぬ立会いを行なう。
この事についていろいろな意見がある。
証券取引所は立ち会い開始時刻を延刻したりするが、
商品市場のほうは各市場独自の時間繰り下げは
諸般の事情で難しいというのが理由のようだ。
各市場の穀物、三市場の綿糸、毛糸、
二市場のゴム、そして砂糖、横神の生糸と
次々に市場はオープンする。
単品取引所は関係のない事ながら、
デパート式取引員は少し商いが長引くと、
二ツ、三ツの商品立ち会いが重なる。
それは、充分に計算されて
決められたそれぞれの取引所のオープニングだけに、
たとえストライキの時でも
立ち会い時刻を変更したりする作業は、
甚だ難しいのだ―と聞いた。
いうなら、
これは全商連段階での作業である。
全商連というところは、
業界人なら誰でも知っているが
お役所のなれの果てが事務局を掌る。
彼らに、緊急時の早急な対策を求める事は、
明らかに酷である。
その能力、その権限、その責任、
いずれの面から見ても望むべきではない。
だから、商品取引所はスト時であろうと
立ち会い時間については、
神戸の坪野光男理事長が
神戸穀取の時間繰り下げぐらいならやれるだろうが、
古ぼけた大阪三品や化繊、
あるいは三木滝蔵氏去ったあとの神糸、
意見がいつも合わない六ツの穀取、
機能を放棄して恥じる事なき砂糖取、
超然と構えている東繊取、
その他発言力弱く、
また他取引所の出方待ちの取引所等が、
あえて独自の行動に出ることはあり得ない。
故に取引所の市場関係者および取引員の市場要因は
朝もまだ暗いうちから家を出るか、
経費がかかろうと前日より宿泊して
汝の職務に忠実たれ。
小豆のほうは七千円ラインがまだ気になっている。
利のある玉は、ひとまず利食いしておこう
という動きもあるが、
今後は、押しても深くはなかろうと、
長期的投機の態度の人も多い。
いずれにしてもこの小豆相場は
天災期という最大の山場を控えてゆるむことはない。
日柄は浅いし相場は若い。
●編集部註
少々口は悪いものの、悪意はない。
あるとすれば憂いであろう。
言い換えれば誠実な諫言である。
これに対し運営側は
〝風の吹く方を後ろに柳かな〟の如き姿勢。
ならば風を強めるまでと舌鋒は更に鋭くなる。
その繰り返し。
このような構図は
結局、平成まで続いてしまった。
【昭和四九年四月九日小豆九月限大阪一万六八七〇円・一五〇円安/東京一万六九四〇円・一八〇円高】
昭和の風林史(昭和四九年四月八日掲載分)
小豆相場は買いの一本道だと思う。
産地相場が意外に底堅かった事を改めて考えてみる必要あり。
「諸子釣しきり釣れてなに思う 黄枝」
今週は仕事にならないかもしれない。
ギリギリでもよいからストが回避されたらどれだけよいか。
日本の経済は、大変な損失であり、
国民生活に及ぼす影響は大きい。
三月末の豆類需要は四市場の在庫が
四十二万五千七百八十四俵。
このうち十五万三千二百六十九俵が48年産(新穀)である。
新穀の入荷量が少なかったこと
旧穀受け渡し供用の打ち切られた今月の納会を心配する人が多い。
相場のほうは一月四日、二月四日、三月四日と奇しくも
それぞれの月の四日が転換日になって、
それでは四月四日が―と注目していたら、二日の日に底入れした。
2月4日に対してその裏の4月2日。
これは単なる数字合わせでなんの意味もないと思う。
業界の相場達者な人たちに聞いてみると、
総じて『ここからすぐに高値を出してしまうと、
あとの楽しみがなくなる。
一万七千円、八千円、九千円という動きは、
天候相場に入ってからのほうがよい』―。
しかし、また別の見方もある。
カネツ貿易の若林会長は、
氏独特のクールな相場観が常に注目されるが
『私は今年は基本的に
小豆相場が大きく崩れる年だと見ている。
相場革命、物価革命といわれて
現在、高水準に位置している小豆だが
静かにみていると供給過剰を、
ともすれば忘れている。
昨年、一昨年も供給過剰であったが
仮需要の花が咲いて狂乱場面を展開したが、
本年は違うと思う』と。
産地農家は手取り一万円を一万三千円。
一万三千円を今度は一万五千円と
米価等の価格高騰に比例して
小豆の値段も引き上げようとしている。
従って、農家手取り一万五千円を望むなら、
運賃諸経費を上積みして
消費地相場一万七千二百円以上でなければならない。
三月の相場で、北海道定期が
予想外に頑強だった事を誰もが気づいていた。
消費地相場が
千八百円(先限引き継ぎ)幅も下げたのに
北海道先限引き継ぎ線は
千二百円しか下げていない。
そこのところに小豆相場の今後の動向が
秘められているように思う。
相場は買いの一本道である。
●編集部注
昨今、デモはあってもストがないのは何故か。
どこかクールな印象だ。
冷戦も続いているこの時期、
まだ世情は不穏で、世相は未だ熱かった。
【昭和四九年四月六日小豆九月限:休場】
昭和の風林史(昭和四九年四月五日掲載分)
さあてと座りなおして回りを見渡すと、
居心地よさそうな相場の居所。
安ければ仕込んで判りやすく。
巧妙にカムフラージュしたつもりでも
世間の眼は容易に誤魔化せぬもの。
いや、相場に誤魔化しは通用しない。
高値の玉を抱えて、あと四、五百円も上がれば―と
いう向きは相当に多いが、
まるで懐ろを見透しているかのように、
あと少しのところで皮肉な表情を浮かべて相場は
回れ右をする。
千円戻しでほっと安堵した強気も、
相場の居所を改めてみると、
高値と安値の中間地点、倉庫はストだし、
十一~十二日は春闘のクライマックス(ゼネスト)、
〝花見相場〟に浮かれるのもほどほどに―
と気持ちを引き締め、
さあて、と座り直して相場の呼吸をうかがうところ。
先月に受け渡しされたヒネ小豆、
市中にいつ出回るかと見ていたら、
どことも『しばらく塩づけにしてますヨ。
全量クレームを申請し、
値引きになればそれだけ儲けもの』という。
市場が少しヒマになると話題になるのが仕手動向。
静岡筋はドテン売り転換しているよう。
いや、そんなことないでしょう。
中井さん、懐ろ玉の動きを見ていたら、
まだ相当に買い玉が残っていますよ。
桑名筋はどうですか。
あの人、根は強気ですよ。
先日の売りにしても、
叩いておいて安値を仕込みたいハラがうかがえるよ。
最近、本社ビルを新築した店も活発に
動いているようですが…。
どうなっているのか、むずかしくて、よく判りません。
京橋筋も〝ハナ〟を取りにいくあたり、
強気方針は不変―というところですか―。
人の噂であるから、どこまで信じてよいものやら。
案外マトをついているかも知れないし、
まるで見当外れかもしれない。
どっちでもよいというわけではないが、
大体、人の口の端にのぼることといえば、
まあ、いってみれば
顕微鏡下にうつる最近のうごめきに
注釈をつけている場合が多いものだ。
いずれにしても相場が
ひとにぎりの仕手の動きに振り回されるのは
のほほんのひとときに過ぎない。
仕手崩れの真最中はどこまで下がるのかと
背筋が凍るが、動揺がおさまって、
すぐに反騰に転じると、なんだァ―という寸法である。
相場の方は安いところを拾っておけば
将来が楽しめよう。
●編集部注
これまで何度も書いてきた事だが、
相場様は意地悪できまぐれある。
「押し目待ちに押し目なし」とは名言である。
【昭和四九年四月四日小豆九月限大阪一万六〇七〇円・一五〇円安/東京一万六〇三〇円・一五〇円安】