人知れず暮るる軒端の釣忍 (草城) (2016.07.04)
マリファナの幻覚症状が必要
昭和の風林史 (昭和四九年七月二日掲載分)
新穀小豆は早晩二万円をつける
という信念さえ持てば
安いところはマリファナ無しでも買えよう。
「人知れず暮るる軒端の釣忍 草城」
帯広地方快晴、気温23度と
天候が回復して新ポの小豆、手亡相場は乱調だ。
十勝平野のお天気は、水、木曜の三、四日に
気圧の谷が通り過ぎるため崩れるが、
五日の金曜日は快晴。
そしてまた六日土曜に崩れる。
この間、西北西に進路をとっている台風八号が、
帯広上空の天候に、
どのような影響を与えるかという事も、
穀物の投機家はいまから考えて、
その時の相場を予測する。
下げた小豆の相場を眺めて
新穀の八千円割れは買い場という見方が支配したが、
すぐ反発した。
ただし、古品限月(10月限まで)は、
北海道の天候さえ悪くなければ
当然低迷するのであることは誰しも認めるところだ。
外割り発券という問題がついて回る。
実需不振も尾を引いている。
十一月限が二千二百円強を騰げたにもかかわらず、
この間、旧穀限月は
千六百円ほどしか反騰しなかったところに
人気(新穀)と実勢(旧穀)のギャップを見る思いがした。
市場の投機家は
今後の相場について深い迷いを持っている。
新穀の二万円時代は、
天候が悪ければ早晩実現するであろう。
しかし、二万円が二万三千円→五千円と、
人気の花が咲くだろうか。
なんとなく本年の穀物市場が、
今までに経験してきた天候相場と
異質なものであることを感じる。
どこがどう違うか。
価格水準が高い位置にあるため、
仮りに今後の作柄が悪くても、
付ける上値が未踏の地であること。
いうならば手さぐりの新世界である。
46年十月に二万一千三百六十円(東京)
という値段は付けたが、
それは仕手策動の瞬間的高値であった。
われわれも含めて今の市場が考えている事は、
二万円台の小豆を
エキサイトせずに受けつけているかどうかという事で、
未踏の価格世界には、
なにが飛び出してくるか判らないという警戒心がある。
思うに投機行為にはマリファナ的幻覚症状を必要とする。
特に天災期は
精神面の狂乱状況を維持しなければならない。
ところが今の市場はあまりにも冷静である。
誰かが狂いだすのを待っている格好だ。
●編集部註
言文一致ならぬ〝罫文一致〟の流れである。
相場の狂気は高値切り上がり、
安値切り下がりの線形となって
罫線用紙の上に現れる。
平成二八年四月以降のNY金相場と同じような格好である。
【昭和四九年七月一日小豆十二月限大阪一万八六一〇円/東京一万八六〇〇円】
昭和の風林史 (昭和四九年七月一日掲載分)
手亡にしろ小豆にしろ
新穀限月の押したところは判りやすい買い場であるが
全般は冷静である。
「舟漕ぐや波の下なる刈藻屑 黄枝」
一万九千円台の小豆は、
よほどの決意がないと、
新規には買いづらい。
相場づらや、地合い、それにケイ線などを見ていると
〝買い切ったあとの反落〟が
今週あたりありそうに思える。
しかし、この相場、売って五百円、
ないし七百円あるかないかであろう。
それは〝危険な売り〟である。
そういう事から買い玉(あればの話)
利食い押し目待ちの突っ込み買い
という姿勢の人が多い。
総体に小豆にしろ手亡にしろ
先限(11限)は押したら買っておけばよい
という人気である。
十勝地方の天候が悪い事がその支えである。
小豆新穀相場の二万円地相場、
手亡新穀の一万八千円―。
気長に待てばあり得る値段だと思う。
ところで、これは筆者だけの考えかもしれないが、
小豆にしろ、手亡にしろ、
その相場に対する取り組み方が、
今年の場合、なんとなく誰もが芯を掴みかねた、
とまどいというものを持っているように見える。
燃えないというか、冷めているのだ。
相場水準が高いという事もあるし、
小豆は在庫(供給力)が充分にあるし、
手亡は大衆化されていない弱点がある。
取り組みは一時に比較すれば
厚くなっているが、まだまだ底が浅い。
本来ならS高四発、
三千円弱を棒立ちした手亡相場なら、
もっと熱気が充満して人気化してもよいはずなのに、
相場はギスギスしていて〝味〟がない。
これは市場が枯れているからだと思う。
玄人筋は去年の相場で、ほとんどの人が打たれた。
大衆筋も手亡相場は敬遠しているし、
小豆は値ごろ的に買いづらい、
そして売り怖い常態だ。
まして旧穀限月の10月限までは、
高値掴み玉がようやく生き返った水準で、
相場はそれ以上のものではない。
なんとなくスカーッとしないのも、
要は市場介入の投機資金が
相場水準に比較して少なすぎるためである。
専業大手取引員は目下のところ
毛糸相場に営業の主力を集結している。
穀取筋の資金薄が
玄人どうしの限られた勝負に終わっているようだ。
●編集部註
相場は、混戦する。
日足ベースでは、
俗にダイヤモンドフォーメーションと
呼ばれる泥沼の線形を作り出す。
【昭和四九年六月二九日小豆十一月限大阪一万八七八〇円・一二〇円安/東京一万八七六〇円・五〇円安】
昭和の風林史 (昭和四九年六月二七日掲載分)
強気も弱気もオレゴン街道を行く。
一マイルごとに墓標を建て、
そしてまた穴を掘りながら行く。
「はたと合ふ眼の悩みある白日傘 蛇笏」
革命の理論によれば、革命とは道理ではなく、
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昭和の風林史 (昭和四九年六月二二日掲載分)
一瞬の間に勝負はついた。
居合い抜きみたいな勝負だった。
大反落すると見る。売り場面。
「金魚大鱗夕焼の空の如くあり たかし。」
原稿を書き置きして出張しているあいだに
相場が変わってしまった。
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