証券ビュー

森羅万象

「狗尾草 風雨跡なく曲がりけり」  蛇笏 (2016.09.29)

昭和の風林史(昭和四九年九月二四日掲載分)
信じ難い作況 だが下値に限界
百六十一万俵収穫予想のショックは大きかった。
24日もS安だろうが投げ終われば反省高に転じよう。
「えのこ草風雨あとなく曲がりけり 蛇笏」
小豆の反収二・六三俵予想に、市場はたまげた。
収穫百六十一万俵。
百三十五万俵ないし百四十五万俵という範囲の中
で考えられていた相場だけに〝指数一〇三、やや良〟は
信じ難い作況だ。
20日は小豆ストップ安。一万五千円が言われた。

手亡反収二・六一俵収穫四十五万俵は、
だいたい予想されていた数字であるが、
小豆安に同調した。
小豆の需給感が根底から変わるのである。

当面、一万七千円台を地合いで買った玉の投げが
値を崩すだろう。

しかし値段が安くなれば、
百六十一万俵予想に疑問を持つ人もふえてこよう。
また、三連休の間に冷え込みがきつく
降霜被害などあれば人気は急変する。
休みのあいだに、たいした降霜もなく、
刈り取りが着実に進むようなら
休日明けは、20日のS安で投げられなかった玉が
一度に出て、24日もS安だろう。

市場で言われる一万五千円相場は、
生産者側にとって不満な値段だ。
本当に百六十一万俵なら
ホクレン筋も出荷を調整するだろうし、
農家も売り急ぐことはない。

三日間の休みのあいだに、
人気が落ち着きを取り戻すかどうか。
休みの間に人々は、
いろいろなことを考えるだろう。
相場の微妙なところである。
仮に休日明けもS安なら、
案外、利食いと新規買いが入って、
大引けは強力に反発する可能性もある。

当限九月限の高値が一万七千七百四十円。
この三割安地点が一万二千四百二十円。
一応下値の目途である。
この値に当先のサヤ三千円と見るなら
先限一万五千四百円になる。

先限引き継ぎ最高値一万九千八百四十円の三割安なら
一万三千八百八十円。
そういう値が瞬間的にもあるかないかという事。
本年の小豆の反当たり生産費は二万五千七百円で、
この値には生産者の利益が入っていない。
仮に反当たり一万円と見ても三万五千七百円を必要とする。
反収二・六俵なら一俵当たり一万三千七百円。
調整費、運賃等最低二千円と見て
一万五千七百円はギリギリの線だ。
本年は人手不足で出回りも遅れそうだ。

●編集部注
昭和四九年九月第三週末の小豆はストップ安。
その翌週、相場は売り方を喜ばせ、
買い方の心を折る下げ模様を見せる。
思惑が膨らめば商いも膨らむ。最終局面である。

【昭和四九年九月二十日小豆二月限大阪一万六四二〇円・七〇〇円安/東京一万六五二〇円・七〇〇円安】

「みち奥は然あれ那須野は萩紊る」 湘子 (2016.09.28)

昭和の風林史(昭和四九年九月二十日掲載分)  
駄目底構成し 大直り途上なり
底入れ。出直り。一万八千円奪回。×
鎌入れ不足。軟派の踏み。一万九千円―という予想。
「みちのくはさあれ那須野は萩みだる 湘子」
業界は比較的静かである。これという話題がない。
三連休を控えゴルフのメンバー探しや、
軽い旅行や会社の慰安会など、
それぞれあまり気が乗った様子はないが、
スケジュールを義務的に消化する格好だ。

うら枯の夜の巷も不況風がひたひたとわたる。
会社の近くの酒屋の
ビールの函の上に板を置いた立ち飲みは、
引け時になると道路まではみ出る盛況であるが、
キタやミナミにはひっそりしている。
企業各社とも交際費を大幅に削減している。
庶民であるサラリーマンは生活防衛で倹約ムード。
秋の日の金詰まりのためいきの身にしみて、
ひたぶるにうら悲し―というところである。

小豆相場は七千円どころで九月のゆううつ病であった。
今年の小豆を振り返ると三月のゆううつ。
四月のもちあい。
これが六千五百円あたりと七千三百円どころ。
そして六月のもちあいが九千円中心。

相場師は皆貧乏した。
貧乏は、あせればあせるほど、ぶくぶく沈む。
貧乏の棒が立ったら、辛抱の棒で支えるしかない。
日柄薬だ。

産地小豆先限日足線は七千円と七千五百円でボックス型。
産地相場が存外固いのである。これをどう見るか。
また、18日の相場でも夜放れ安に寄ったものが
引けでは前日の引け値に食い込んでいる。

手亡は九月九日の安値を割った安寄りであるが、
小豆は、あの安値が底型になっていて
駄目底の格好だ。
なんとなく、彼岸底を形成しているみたいだ。

相場用語に〝売りあき気分〟というのがある。
売っても、売っても相場は言うことをきかない。
これも日柄薬で、いい加減売りあくと、材料なしで直ってくる。

金泉録
順乗の年は空腹上がりなり秋名月に買いの種まけ」とある。
前年が豊作で古米の在庫の多い年は
新米に対しても弱気でのぞみやすいが、
秋名月の時分から相場は徐々に高くなる
―。

秋冬春二割高下に向うべし夏は三割むかう理と知れ
三日間休みの間の産地天候も気がかりである。
筆者はやはり一万八千円挑戦の相場と見る。
ここまで来て弱気は出来ん。

●編集部註
 実勢相場の影響は数カ月後の市井に反映する。

 オイルショックの影響は
テレビの深夜放送の休止や制作費の削減を招く。
『ウルトラマンレオ』などは製作に苦労したらしい。

【昭和四九年九月十九日小豆二月限大阪一万七二〇〇円・一六〇円高/東京一万七二二〇円・二二〇円高】

「うら枯のこほろぎ夜も日も非ず」 悌二郎 (2016.09.27)

昭和の風林史(昭和四九年九月十九日掲載分)
底値を鍛錬中 万人総悲観だが
暗い市場であるが
小豆の一万六千円どころは下値の限界である。
万人総悲観の時こそ買い場だ。
「うら枯のこほろぎ夜も日もあらず 悌二郎」

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「人の世につながる窓の秋晴れぬ」 林火」 (2016.09.26)

昭和の風林史(昭和四九年九月十八日掲載分) 
強気方針不変 山川草木皆弱気
底入れした相場が
大直り初期の押し目を構成しているところで
小豆は予想外の上昇が期待出来る。
「人の世につながる窓の秋晴れぬ 林火」
今週は四日間の立ち会いで三連休を迎える。
二連休のあとだけにリズムが崩れる。
小豆市場のほうは、
19日の後場引け後に
発表される農林省九月一日現在調べ
夏作豆類予想収穫量が
相場に刺激を与える材料として注目されている。

また、19、20日ごろ北海道に
寒気団が襲来しそうで
強い霜があるかもしれないこと。
そして、
中間地帯に発生した輪紋病がひろがり、
かなりの被害が出そうなこと。
そういう諸材料に関心が集まっている。

天候相場も、間もなく千秋楽を迎える。
初め悪かった作柄も土用からの天候回復で
七分作予想が九分五厘まで回復した。
そのため相場も水準を沈めた。
しかしここに来て、鎌入れ不足が、
にわかに囃されるようになった。

百三十万俵ないし百四十五万俵と
予想されていた小豆が、
百二十万俵ないし百三十万俵という数字に落ちて、
これが今後、早霜、病虫害などで、
どれだけ減収になるかという時点である。

すでに相場は
九月九日重陽の節句に底入れして
千円棒を立てた。
V字型の底値脱出である。
この反発時の相場の勢いは、
単に戻りというようなものではなかった。

そこに相場が、見えざるものを見きわめて、
万人総弱気の中を毅然と、
あるべき姿に戻ろうとしていることを
感じさせるのであった。

今も、市場の人気は弱い。
見ていると全般に戻り売りである。
しかし筆者は、すでに底入れし、大直りに転じ、
七千円どころを値固めして、
八千円挑戦のためのエネルギーを
蓄積しているものと判断する。

なぜなら、
相場は下げようのない水準であるからだ。
仮りに繰り返し小豆が
六十万俵あろうと七十万俵あろうと、
来年、昭和50年が大幅の作付け減ならば
そして明年が大冷害、大凶作の年回りならば、
七十万俵在庫など、ものの数ではないわけだ。
われわれは相場の先見性を買う。

●編集部註
確かに、休場は相場のリズムを狂わせる。

おまけにこの時の取引は板寄せで、
値幅制限も今のようなCBではない。
一度板寄せ売買の現場を
見学させてもらった事があるが、
注文を出す側も通す側も受ける側も、
高度な職人芸を持っていた。

TOCOMは今日から新システムに入っている。
電子化したら
メカに強い輩が粗相をして場を荒らし、
それを防ぐためにシステムをまた変える。
その繰り返しである。

【昭和四九年九月十七日小豆二月限大阪一万六九五〇円・四〇〇円安/東京一万七〇七〇円・三五〇円安】

「草川のそよりともせぬ曼珠沙華」 蛇笏 (2016.09.23)

昭和の風林史(昭和四九年九月十五日掲載分)
二万円時代へ 再び挑戦の相場
小豆相場は、なにかを見通しているように思える。
大手直りの二万円時代への出発という感じだ。
「草川のそよりともせぬ曼珠沙華 蛇笏」
大正九年のパニック時、株式は82%暴落した。

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