昭和の風林史(昭和四九年九月三十日掲載分)
今こそ買い場 新穀はトラの子
秋の大底を買わずして、いつ強気するのか。
整理完了を待って買うのでは遅すぎる。買い方針。
週末の半日立会いながら商いは結構できている。
大量の売り物を持ち越した大手亡のS安で
気が持てない風情だ。
底値圏と判っていても金詰りには勝てやせぬ。
おごそかに玉整理が進められている。
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「鹿垣や木曽も奥なる妻篭村 迷子」 (2016.10.05)
昭和の風林史(昭和四九年九月二八日掲載分)
相場大底打つ アニー銃をとれ
この月末、新ポが大底になるだろう。
破れた軍旗を高々と掲げん。
信ずるものは常に勝つ。銃をとれ。
「鹿垣や木曽も奥なる妻篭村 迷子」
月末最後の整理場面のように思える下げだった。
ピービーンズ安から手亡がS安。
小豆新穀の出来値安など、
暗い市場に嫌気投げを誘った。
売り方は、
市場で目立つ買い建て玉がぶん投げて、
そこでわれわれが売り玉の利食いを入れるまでは
相場に底が出来ないのだと豪語する。
買い方は、呻吟(しんぎん)している。
姿勢を低くして、いまに見ておれ俺だって―
と大反抗を胸の内に秘めるのであった。
なあに絵に書いた百六十一万俵じゃないか。
今、
軟風は競うて吹き荒れているが、
これも、もうちょっとの辛抱。
節棒で新値足14本。
七月26日から数えて、すでに下げの限界である。
例年九月から十二月までの小豆消費量は、
およそ五十万俵ないし六十万俵である。
新穀の出回り年内三割と見るか、
それともホクレンの出荷調整で
二割ちょっとに抑えるか。
消費地在庫と年内出回りの新穀を合計して、
前記九~十二月平均消費量を差し引けば、
市中の定期受け渡し用の品物は
カスレる事になりかねない。
ありガスレという現象だ。
定期を人気で、しかも安値で売り込めば、
市場内部要因面からだけでも
強烈反騰一万八千円相場出現の可能性はある。
しかも人手不足で新穀の出回りにハンディがつくし、
値が気に入らない生産者は、売り急ぎしないだろう。
そういう現象が、表面化して相場が急騰しだすのは
月末最後の整理を終えて、
新ポ三月限のサヤが買えない軟地合いを、
もう一度横目に眺めたあたりからだ。
まさしく陰の極限に来ている。
相場が大反騰に転ずれば
百六十一万俵を
絵に書いた現実性のない数字であったという事を
意識して、騰勢をさらに熱気を持たん。
戦陣訓の歌に
「情に厚きますらをも正しき剣とる時は
千万人も辞するなし
信ずる者は常に勝ち皇師に向う敵あらじ」―と。
買い方は、最も苦しいところである。
千丁崩しは怖くはないが、
五文、十文安が寿命にひびく。
だがもう大底だ。
●編集部註
恐らく、罫線的には
四月頭につけた安値との面あわせという意識が
この文章を執筆時、脳裏に浮かんでいたのではないか。
思い描く上昇波動は、4月から7月への流れ。
しかし相場は、予想通りには進展しない。
【昭和四九年九月二七日小豆二月限
大阪一万五六八〇円・三二〇円安/
東京一万五七〇〇円・三九〇円安】
昭和の風林史(昭和四九年九月二七日掲載分)
値固めを待つ 小高下底練りへ
遊んでいるお金があるわけじゃないが、
もしあれば
このあたりからの小豆の買いが報われそうだ。
「木曽川の岸に洗へる障子 たけし」
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「木曽を出て伊吹日和や曼珠沙華」 碧梧桐」 (2016.10.03)
昭和の風林史(昭和四九年九月二六日掲載分)
群雄は割拠し 中原に覇を唱う<業界見聞記>
小豆相場は、このあたりだろうという、
やや落ち着いた風情。
売りたくなし。買いたくなし。
「木曽を出て伊吹日和や曼珠沙華 碧梧桐」
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昭和の風林史(昭和四九年九月二五日掲載分)
秋風落莫凄惨 雨中また涙あり
買い方に、とどめを刺した百六十一万俵という数字は、
ついてまわるだろう。索漠たる市場だ。
「見上げ行く葛の絶壁輪島岬 花谷」
小豆の百六十一万俵収穫予想数字は、
小豆相場を考える上において、
これからいやが応でもついてまわるもので
強弱の境界線に
大きな楔(くさび)を打ち込んだ格好である。
新穀に、旧穀の在庫量と輸入小豆と
府県産小豆等を加えて、
年間予想消費量を差し引くと、
来年の十月は七十万俵の繰り越し量になるだろう
という計算が成り立つ。
七十万俵といえば、
昨年十月の繰り越し在庫量と同じ数字である。
昨年秋から今年にかけては市場に、
まだ過剰流動性資金が存在していた。
石油危機、食糧不足、異常気象、
インフレ物価高という背景のもと、
旺盛な仮需要により、
七十万俵の繰り越し在庫量は、
それほど圧迫感をもたらさなかった。
ところが、いま、出来秋に、
向こう一年も、やはり供給過剰、
在庫圧迫が続くであろうという数字を
目の前に突きつけられては、
ゲンナリする人が多い。
時あたかも未曾有の不況期。
金詰まりは厳しく、
仮需要の花の咲く季節ではない。
買い方、最後のお願いである降霜も、
天は敗者に味方せず、
降霜被害を念ずるなど、
不都合なる了見といわんばかり。
買い方は、
櫛の歯を引く如く投げている。
夏の暑い盛りに建てた玉を
秋風と共に処分する。
嗚呼、また我れ破れたり―と。
痛憤すれど、やる方なし。
勝敗まさしく時の運。
市場人気は、判りやすい相場と見ている。
戻れば成り行き売り―と。
先限の下値一万五千四百円あたり。
それ以下の値があれば、
目先的に小掬いの買い場。
大根時の大根。出盛り期の安値。
なにかの拍子で反発しても
一万七千四百円以上安心売り。
ただここで日柄の面で、下げ止まるところ。
生産者コストから見て
産地は売り急ぎはしない。ホクレンの出荷調整。
人手不足による出回り遅れ。鎌入れ不足。
相場内部要因の改善。
明年の大幅な作付け面積減反と、
大冷害の回り年ということを考慮した長期思惑など、
強気のよりどころにする灯火(ともしび)は
まだ消えてはいない事を知っておくべきだろう。
●編集部註
昭和四十九年九月最終週は、
小豆買い方の嘆き節で終わる週となる。
是非に及ばず、それはそれ。
次の展開近しと睨み綴るは相場師の勘なり。
実際そうなるのだが、大概その時は金がない。
【昭和四九年九月二四日小豆二月限大阪一万六〇三〇円・三九〇円安/東京一万六一五〇円・三七〇円安】