証券ビュー

森羅万象

「松茸の香りも人によりてこそ」 虚子 (2016.10.28)

昭和の風林史(昭和四九年十月十八日掲載分)
叩く事出来ず パニックを呼ぶ
穀物市場は強弱とは違った面からの不安に
包まれようとしている。
パニック襲来の不安だ。
「松茸の香りも人によりてこそ 虚子」

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興ざめの市場 先ず輸血の必要 (2016.10.27)

昭和の風林史(昭和四九年十月十七日掲載分)
次の幕があかない。しらけた空気が市場を包む。
どういう結末になるのか、予断を許さない空白の時間。
困ったことだ。
観客は次の幕明けを今や遅しと
固唾をのんで見守っているが、
どういうわけか、その気配がしない。

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仕掛け難続く これもまた相場 (2016.10.26)

昭和の風林史(昭和四九年十月十六日掲載分)
仕掛け難続く これもまた相場
我れ出でて利あらず
彼出でて利あらずの小豆相場になっている。
手をだしたほうが負け。
「鶏頭のただ一本の焔かな 英一」
砂糖取引所はあきもせずバラ積みの粗糖のS高をやってござる。
バラ糖は、上々商品の新しい星と期待されたが
動く時は決まってS安かS高で、大衆は近寄り難い。
取引員側としてもお客さんが、やってみたいと申しても、
危険ですからおやめなさいと言う。
バラ糖取引のどこに欠陥があるのだろう。
制限値幅を今の倍ぐらいにするとか、
取引所当局者は折角苦労して上場したのだから、
百尺竿頭一歩を進めて、
市場が機能するよう一層の努力が必要に思う。
この17日に三ツの砂糖の市場の偉い人たちが寄り合うそうだ。
東京、大阪、関門の三取引所の協会。三砂連という。
一杯やって秋気天に満ちたゴルフ場で腕を競うのだろうが、
気楽なものよ役員さんは、
商い出来ても出来んでも。きょうもS高、あすもS高。
各地取引所、協会は秋期懇親の慰安一泊ゴルフ大会が盛んである。
大阪穀取協会のように九州の果てまでゴルフを
しに行く商品業界が今置かれている状況をしばらく忘れて
打球に狂(興)じることも悪くないが、
いつも忘れてばかりの人のほうが多いから困る。
会社が左前になったり、変なことになると、
ゴルフばかりしているからさ―と必ず言われる。
筆者などは理解があるから、必ずしもそうは受け取らず
会社が左前だから気が持てず、ついゴルフに逃げるのだろう
と同情する。
さて相場のほうは、持ちも下げもならない。
我れ出でて利あらず、彼出でて利あらざるを支という。
支形は敵、我れを利するといえども出ずる勿れ。
引きてこれを去り、
敵をして半ば出でしめてこれを撃たば利あり」

と孫子兵法は教えた。
今の小豆相場は、まさしくこれである。
そして、この事を誰も彼もがよく知っているから、
なおさら膠着する。
考えてみれば、いま小豆市場に参加している人人は
半玄人か玄人ばかりである。
素人の金持ちの旦那さんがいない。
市場の玄人は、チャリンコのように手が早い。
そしてみんな、ポケットの中身が軽いから
神経をつかう割りに効果が少ない。
ゴルフでもするしか仕様がないのかもしれない。
●編集部註
すべてのジャンルはマニアが潰す―。
これは老舗プロレス団体のオーナーになった経営者の至言。
コアユーザーがライトユーザーを拒絶し、
閉鎖的になる事で全体が衰退する。
彼はマニアに叩かれる事を厭わず
ライトユーザーの開拓を優先した結果、
その団体のみならず、プロレス自体の再ブームに火をつけた。
【昭和四九年十月十五日小豆三月限大阪一万六五五〇円・二五〇円高/東京一万六六八〇円・一七〇円高】

孫子兵法「支形」徳の乗るまで待つも仁 (2016.10.25)

昭和の風林史(昭和四九年十月十五日掲載分)
飛ばず鳴かず 三年雌伏の格好
売りもならず、買いもならず
孫子兵法でいうところの「支形」である。
玉の出ぐあいで値がつく。
「薪に割る何の生木ぞ秋深く 羽公」
三年飛ばず鳴かずという言葉が史記にある。
他日雄飛する機会を待って雌伏しているが、
ひとたび行動を起こすや大活躍することを言う。
雌伏という言葉は後漢書から出ている。

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「日かげりて重たくなりぬ鯊の竿」 垣秋津」 (2016.10.24)

昭和の風林史(昭和四九年十月十四日掲載分)
下値深くない 息の長い投機を
しばらく暴騰する気配はないが、
下値も深くない小豆だ。
当面ビジネス的買いさがりがよい。
「日かげりて重たくなりぬ鯊の竿 垣秋津」
先物小豆の長期投資の方法として
三月限の一万六千円割れを
投下資金の四分の一で買い、
五千五百円があれば同じ枚数を買う。
残り資金の半分は追証として準備しておき、
五千円を割るような相場なら
残り資金の半分で三段目の買い玉を建てる。
このようにして、買い建て平均値を
出来るだけ低くし資金にゆとりを持たせて
三つき半年先まで思惑の糸をのばす。
小豆の下値限界点は最悪場面があるとしても
九月28日の安値一万五千五百円まである。
生産コスト、他物価との比較、
市場内部要因面から考えてみても、
そのあたりまでのもので、この考え方は、
相場を弱気している人たちでも〝まずは、そのあたりまでか〟
と売り玉の手仕舞いを考える地点である。
商品市場での各社のセールス活動を見ていると
大きな資金を引き出して
お客さんに乾坤一擲の一発勝負を勧めている。
成る程、当たれば大きいし、格好もよいが
乾坤一擲の勝負は年に一度あるかないものだ。
玉の回転や手数料収入を考えれば、
お客さんに取るか、取られるかのスリルを
味わってもらう一発勝負即ち、
証拠金筒一杯の仕掛けが
取引員としては効率はよいけれど、
お客さんの側は、相場のテクニックを
楽しんだり苦しんだりする時間的ゆとりがない。
先限に玉を建てられて、半年もじっとされていては
玉の回転を目的とするような取引員にとっては、
始末が悪いわけだが、
いつまでも新規新規の一発主義では
市場に参加する投機家は先細りしていくだろう。
商品業界は、もうそろそろ相場を
単なる投機としてではなく、投下資本の利回りや、
計画的長期投資のテクニックを
営業の基本姿勢にしてもよい時分だ。
利の乗った玉は、
お客さんのほうから利食いを催促するもので、
利食ったあとまるまるこれを全部勝負にぶち込まず、
良識によってある程度温存させ、
あらためて安全的長期思惑の戦線をのばすようにしたいものだ。
目先、目先、回転、回転、新規、新規の時代は終わっている。
アメリカのように相場とじっくり取り組む営業姿勢が望ましい。
●編集部注
相場とは関係ないが、今も昔もこの時期は
ペナントレースと日本シリーズの端境期である。
平成二八年は、引退する選手が放った
「俺のために優勝しろ」という言葉が話題になったが、
昭和四九年十月十四日に引退した選手が放った
「我が巨人軍は永久に不滅です」という言葉は、
今や伝説となっている。
【昭和四九年十月十二日小豆三月限大阪一万六四四〇円・八〇円安/東京一万六六六〇円・一一〇円安】