証券ビュー

森羅万象

思惑相反 算術通りには動かない (2016.11.15)

昭和の風林史(昭和四九年十一月十二日掲載分)
徐々大直りへ 大底は確認した
徐々に大相場の様相を濃くしている小豆だ。
昭和50年代二万円台の相場展開は必至である。
「行きずりのよそのよき子の七五三 風生」
相場が底を打つ時は、底を打つような、
もろもろの条件が自然に揃うものだと感心する。
春が来て草木が新芽をふくように、
初冬にかけて木の葉が散る如く。

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「木の葉髪愚かに職にやつれおり」 康治 (2016.11.14)

昭和の風林史(昭和四九年十一月八日掲載分)
あとから響く タナ上げ 三十万俵
国鉄のスト。貨車繰り難。輸送遅れ。
年末の有りガスレというスケジュールで相場は強張ろう。
「木の葉髪愚かに職にやつれおり 康治」
ぼつぼつと小豆30万俵のタナ上げが
市場に響いてくる感じである。
30万俵をタナ上げしてしまうと、
今後の需給予測はおよそ次のようになる。
供給
古品繰り越し 八〇万俵
輸入小豆    六万俵
新穀小豆  一四五万俵
府県産小豆  二五万俵
輸入予想   一〇万俵
合計    二六六万俵
消費実績  二一〇万俵
差し引き   五六万俵
タナ上げ   三〇万俵
差し引き繰り越し予想
       二五万俵
期末適正在庫 三〇万俵
これは数字遊びである。
弱気する人は、本年産小豆の実収は
百四十五万俵を恐らく上回るだろうし、
消費は砂糖価格の高騰と、この不況によって
相当落ち込むだろうという見方をする。
しかし強気する側としては大納言小豆の二万六千円。
青えん二万円。大正金時一万七千五百円
という値段を見ても小豆の価格は安過ぎる。
また、来年の小豆の作付け面積は中間地帯が稲作に変わるから
(農家の採算として米をつくるほうがよほど有利)
全道小豆作付け面積は五万ヘクタールを割り込むだろう
という予想が今や常識である。
そして、世界的な異常気象は
今後ますます顕著になろうとしているし、
北海道は三年不作知らずで来ているだけに、
来年は非常に危険であるという考えがある。
そういう事から三十万俵ないし五十万万俵の
繰り越し在庫がなければ、来年の穀物取引所の立会いが
不安になってくるわけだ。
ここのところが同じ数字を眺めるにしても、
強気と弱気では大きく差が開いてくるのである。
眺めれば、株式市場も繊維市場も、
相場という相場は、ほとんど大底を打っている。
底は打ったが、金融面、しみわたった不況感、
人々の気持ちの沈み、消極性、おりからの政治不安などで、
強烈な反騰は期待出来ない。
だが、小豆は食糧であり一年草の作物だ。
ホクレンのタナ上げは穀物市場にとって、言うなら
市場安定のための食料備蓄でもある。
年末の貨車繰り難などを思うと
相場高騰は充分に考えられるところだった。
●編集部註
 商品相場の醍醐味ともいう動き。
逆の視点では商品相場の恐ろしさを思い知る動きともいえる。
 ここからの相場は、
買い方も売り方もうんざりするような保合い相場が、
おおよそ半年間続く。
【昭和四九年十一月七日小豆四月限
大阪一万七六三〇円・三一〇円高/
東京一万七六三〇円・二六〇円高】

「冬支度心に染まぬ人たのみ」 みづな (2016.11.11)

昭和の風林史(昭和四九年十一月六日掲載分)
借金質に置き 先限台割れ買い
四月限小豆の七千円割れは、
借金質に置いても買いたいところだ。
これは必ず報われる。
「冬支度心に染まぬ人たのみ みづな」
手亡相場も、このあたりの水準以下は、
売り過ぎの感じであるが、海外市況が軟化し、
それが手亡に影響し、
そして手亡が小豆の足を引っ張る格好だ。
連休前に小豆の30万俵タタ上げが決まったが、
休日明けの相場は気が抜けていた。
少なくとも小豆相場の三百円ないし五百円の
夜放れ高を期待した人も多かったことと思う。
相場用語では、織り込み済みという。
30万俵のタナ上げは、いずれ相場に響いてくるだろう。
47年の時も即効性はなく、後になって効力を発揮した。
47年の11月といえば生糸の仕手戦で
静岡の栗田氏が劇的な敗退を喫した月である。
光陰は矢の飛ぶが如く、白駒の隙を過ぐるが如し
(人の一生は白い駒が走っていくのを
壁のすき間からチラッと見るようなもの)
である。
あれから二年を経過した。
人々は、いま相場に興ざめしている。
やはり未曾有の不況、金詰まりが、
穀物市場にも影響している。
しかし希望を捨てない人もある。
これからは年末の需要期に向かう。
現物の売れ行きが一年中で最もよい時だ。
産地からの出荷が、はがばかしくない現在、
やはり一時的な〝有りガスレ〟現象はまぬがれない。
小豆相場の低調が、手亡の不冴えから来ている
と見る人は、手亡も日柄の面で
十一月上旬中に大底を構成すると判断している。
われわれは悪い時が通り過ぎようとしていることを感じる。
なるほど、暗い面を見ようとすれば幾らでもある。
いま弱気が言おうとしていることは、
農林省発表の収穫予想以後に霜の害もなく
秋あげがよかったため、
最終収穫はあの数字を上回るだろうということである。
また、現物の売れ行きが
例年に比較して二割ほど落ちているとか。
しかし、だからといって、この相場を弱気して
四月限の一万六千五百円は仮に付けたとしても
新ポのサヤを埋めた地点は、昭和50年相場を考えた場合、
これは金の延べ棒であり、虎の子である。
四月限の七千円割れは
借金質に置いても買いたい値段だし、
買っておけば必ず報われよう。
●編集部註
相場張らずに意地張って、買いたい時には金がない。
相場あるある。
【昭和四九年十一月五日小豆四月限
大阪一万七二九〇円・六〇円高/
東京一万七三五〇円・五〇円高】

相場読むより日柄読め 棚上げ待ち (2016.11.10)

昭和の風林史(昭和四九年十一月二日掲載分)
タナ上げ待ち 閑散気迷い市場
市場全般が気迷いに包まれているところへ
悪役の手亡がアク抜けしないため、何かと時間がかかる。
「おとのして夜風のこぼすぬかごかな 蛇笏」

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「照葉して名もなき草のあはれなる」 風生 (2016.11.09)

昭和の風林史(昭和四九年十月三十一日掲載分)
未来の概念で 小豆を強気する
先物市場は必ずしも商品そのものの売買ではなく
未来の概念の売買である。
「照葉して名もなき草のあはれなる 風生」
NYタイムス紙が伝えたサウジアラビアが
近く石油価格を10%以内で引き下げられようというニュースは
近年にない朗報であった。
株式市場も商品市場も好感した。
石油なんていうものは、地下にあっては、
なんの値打ちもないもので、採掘してこそ価値が出る。
しかし幾ら価値があろうと売れなければ
値段を下げるしかない。
中東産油諸国が石油価格を
軒並み引き下げてくるかどうか大きな関心事である。
世の中、満つれば欠けるし、欠ければまた満つる。
悪い悪いの毛糸相場も、
陰の極に達したあとは陽転するしかない。
ときおろで小豆相場であるが、農林省筋でも、
今の小豆価格は安過ぎると言うぐらいである。
大納言小豆が二万五千円もしている時に
一万六千円の小豆は、生産者泣かせだ。
商品先物市場は、必ずしも商品そのものではなく
〝未来の概念〟の売買である。
だから小豆という商品の現在の需要供給も考慮はされるが、
それ以上に、無限大に発展する未来の概念が
そこでは売買されているのだ。
未来の概念の中にはホクレンのタナ上げ、
50年産の作付け大幅減少、今後ますます悪化する世界の気象。
食糧の国内自給等が含まれている。
また、総供給小豆二百七十万俵。
需要減退により供給過剰→価格低落という予測も
未来の概念の売買対象材料である。
ただ、われわれは、いまの相場が、
非常に悪い環境下にもかかわらず、
一定の価格圏を維持している事から、
経験的に、下げ予知がないと判断する。
しかも、市場内部要因は日柄七十余日にわたる整理と
値幅五千円(12月限)による整理が強要された結果の
現在の相場を凝視するのである。
売れなければ値を下げるのは資本主義経済の原型であるが、
値段を下げるわけにはいかないところまでくれば、
生産制限、大量タナ上げという方法で価格を維持するのが
現在の経済システムである。
小豆相場は、どのような角度から見ても明らかに二番底圏にある。
●編集部注
昭和五一年五月、
芥川賞作家中上健次による短編集「蛇淫」が発表される。
同年十月二三日、この表題作が
長谷川和彦監督、水谷豊主演で「青春の殺人者」という映画になる。
そしてこの物語は、
昭和四九年十月三十日に千葉県市原市で発生した、
実の息子による両親殺人がベースになっている。
【昭和四九年十月三十日小豆三月限大阪一万六二九〇円・三三〇円高/東京一万六四〇〇円・三〇〇円高】