「日の影や人にて凄き網代守」 言水 (2016.11.22)
昭和の風林史(昭和四九年十一月二二日掲載分)
岩盤の三点底 猛然と反騰せん
相場には自然の法則がある。
下げすぎたものは自律反騰する。
復元力をあなどるわけにはいかない。
「日の影や人にて凄き網代守 言水」
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「鍋焼の火のちる濠や本願寺」 菊太 (2016.11.21)
昭和の風林史(昭和四九年十一月二十日掲載分)
おののく手亡 落ち着きを待つ
手亡の失神相場で市場は暗澹としている。
去年の小豆チンタラ九千円崩しにも匹敵する惨状だ。
「鍋焼の火のちる濠や本願寺 菊太」
手亡相場は暗澹たるものである。
昔から、なにが難しいと言って、
手亡の相場ほど怖いものはないと言われる。
穀物取引所に大手亡豆が上場されて以来、
数多の仕手が、この手亡相場に挑戦したが、
その結末は勝利を得ることなく、
読んで字の通り大手を亡ぼす豆に終わっている。
アメリカ産ミシガンピービーンズの圧迫に加えて
カナダ産ピービーンズの輸入を心配して
手亡相場はおののいてしまった。
思えば東京七月26日(金)一万九千五百六十円。
大阪27日一万九千五百二十円を12月限(先限時代)が付け、
未曾有の高値の大天井を打って以来、
この12月限が一万一千八百二十円まで
実に七千七百円幅の惨落である。
その下げ幅は、天井値段の四割に当たる。
高下とも五分一割に従いて、二割、三割向かう理と知れ―とか、
百年の九十九年の高安は
三割高下に向かうが金の湧き出づる泉―
などという相場金言も、どこかにふっ飛んでいる。
しかし手亡相場の七千円足という波動転換の習性から見ると、
ここからの売り込みも考え物だし、
七、八、九、十、十一月と日柄の面も
日足90本、実線百十六日を数える。
げに、天井三日底百日を思わせるものがある。
なるほど手亡は下げたあと買いついた。
また今現在ピービーンズの圧迫もひどい。
人気面も需給面も、お話にならない。
当然戻り売りが言われ、買うべき材料はない。
しかも恐るべきは、この手亡の崩壊が
同じ市場の小豆にも影響してくるかもしれない
という無気味な不安である。
ベルレエヌの詩ではないが
〝げにわれはうらぶれて、ここかしこ、さだめなく―〟である。
この時、穀物相場の投機家は
去年の秋のチンタラ小豆九千円崩しを思うのである。
あれも凄かった。
そしてその帳尻が、東京では
日農、三好、関西では辰巳、多田、淀屋等の経営破綻になって現れた。
現実は、まさしく厳しい。
しかし、投機市場に参加する戦士は希望を捨ててはならない。
いつかは栄光の日も来る。
わが魂を聖地に埋めても起きあがらねばならない。
●編集部注
数カ月前の乱高下が嘘のような小康相場である。
この時期、日本国内ではいろいろと揺れた。
たとえばプロ野球では、巨人の川上哲治が勇退。
新監督には引退したばかりの長嶋茂雄が就任する。
【昭和四九年十一月十九日小豆四月限大阪一万六九一〇円・一七〇円高/東京一万六八七〇円・二一〇円高】
「武蔵野の青空青なる落葉かな」 秋桜子 (2016.11.18)
昭和の風林史(昭和四九年十一月十九日掲載分)
惨澹たる手亡 小豆相場を殺す
海外白系雑豆が手亡相場を殺す。
そしてそれが人気的に小豆相場に影響する。
陰の陰の現象。
「武蔵野の青空青なる落葉かな 秋桜子」
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カラッとしない 長期方針の思惑買い待機 (2016.11.17)
昭和の風林史(昭和四九年十一月十八日掲載分)
閑散無味乾燥 手がかりがない
腕を組んで黒板を眺めていても相場は動かない。
年内無相場という見方が支配しだして閑である。
「二三子と木の葉散り飛ぶ坂を行く 虚子」
小豆相場は年内無相場という見方が多くなるのも無理はない。
ただ、しびれを切らせて生産者が安売りしてくれば
一時的な安値を付けようとも、
買い場になるだろうときわめて消極的な見方だ。
先元の一万七千五百円以上は
ホクレンの売り物が待ち構えているから、
それ以上の値段は、いま期待できないかもしれない。
しかし、七千円割れには、長期方針の思惑買いが待機している。
手亡相場が、
ピービーンズの追加契約などを嫌気して崩れるものだから、
穀物市場全体がカラッとしない。
こういうときは、なにがどうあろうと、時期を待つしかなかろう。
無味乾燥の穀物相場で、なにか面白い話はないものか?という。
誰もが、いらいらした気持ちで耐えられない風情の時に
昭和六年生まれの岡藤商事の加藤英治会長が〝奈良国際〟で
紳士にあるまじき行ないがとがめられ、
エチケット委員というのか風紀委員会というのか、
その槍玉にあがって除名になりかけ、
あわてて山本博康氏に付添ってもらい陳謝弁明。
業界では、なんだ父兄同伴じゃないか。
加藤さんもしっかりしてもらわなくちゃ、
岡藤の大森社長は魂が抜けたようなソウウツ病で辞任するし、
会長のことを社内では〝金治さん〟(禁治産)
と呼んで浮いてしまっているし、頼んまっせ英治さん―という話。
かと思えば全商連の〝なんだ神田支(恥)部長〟さんは
〝もの言えば唇寒し秋の風〟。
トリビューン紙の木原保氏に謝文を書かざるを得ない舌禍事件を
巻き起こし、業界人をお粗末なこと甚しいと嘆かせている。
このような時、小豆相場も、魂抜けてトボトボで、
商いは薄いし儲からんし、嫌になってしまう。
相場の話題はとぼしいが、
業界の話題になるといきいきした話が幾らでもある。
前記〝父兄同伴の英ちゃん〟や〝なんだ神田の舌禍〟などは、
阿呆だなあ―と言って済ませることも出来ようが、
業界の話題としては震度六や七、メガトンクラスのものもあって、
晴れ晴れするのはお天気だけ。
原稿書くのも嫌になってくる。
●編集部注
小豆相場は先限つなぎ足で
アイランドリバーサルギャップと呼ばれる線形になる。
長期に及ぶ、大きなレンジ幅保合いの始まりだ。
【昭和四九年十一月十五日小豆四月限
大阪一万七二七〇円・二六〇円安/
東京一万七三〇〇円・二五〇円安】
「木の葉たく畑の上のおちば哉」 暁台 (2016.11.16)
昭和の風林史(昭和四九年十一月十三日掲載分)
時間かかるが 買いの一本道だ
底した相場は天井するまで買えばよい。
この単純明快な事が、なかなか判らないし出来ない。
「木の葉たく畑の上のおちば哉 暁台」
どこそこの誰が力を入れて買っている
―というとりわけの相場でもないのにジリジリと強い。
こういう相場は息が長いものとされている。
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