昭和の風林史(昭和五八年一月三一日掲載分)
小豆の売りは踏む事勿れ
小豆は気の抜けたような崩れがくるだろう。
大豆は安値陽線三本強力上昇暗示。
小豆は総強気になった。
なかでも玄人中の玄人が強い。
売ってくるのはマバラ大衆である。
玄人筋は
八千五百円ないし九千円をみている。
ホクレン陽動相場だ。
農水省支援相場でもある。
それで果たして
相場が思うように高くなるだろうか。
三晶が買っているという事も、
心理的に買い方を心丈夫にしているが、
三晶が売ろうと買おうと
気にする事はない。
小豆の線型は
ほれぼれする買い線に違いない。
ゆくゆくは三万円
という声になるのも当然だ。
しかし出来高と取り組みが
そこまで支援するだろうか。
小豆は
たしかに腐ってもタイであるけれども、
今の相場の主流は輸入大豆である。
売りあき気分と底入れ人気、
そして
なんとなく希望の持てそうなムード、
これが今の小豆を
つつんでいる空気であるが、
まるでお祭りのように
あたり一面浮かれた強気ばかりみていると
この小豆、そんな手に乗せられてたまるか―
という気になる。
小豆の売りは踏む事勿れ。
どこまでも食いついて
凧の糸と相場の資金はきれる事なく
売り上がれば苦労した分報われよう。
輸入大豆はこれはもう、
黒板が変わっている。
三百円棒が立つのを、
いまかいまかと待つ姿。
安値の陽線三本は
将来の大相場展開を
暗示している事を知るべきだ。
●編集部註
1983年、国内大豆が
週足で美しい逆三尊パターンの形成に
動き出した時、
東京小豆は美しいダブルボトムの線形を
形成し始めていた。
罪なチャートパターンである。
いや、むしろ先物相場らしい線形
と言って差支えないかも知れない。
陽線が続けば買いが入ってくる。
そこを容赦なく下落が襲い、
1月安値を割り込んで、
買い方の心根を折る。
大豆はコツンと安値で音がしたが、
小豆は買い方の心に
ポキリという音を鳴らした。
そこからの上げはエゲツない。
ザラバではなく、板寄せ取引、
しかも手振りであったので
当時の取引現場は
騒然としていたのではないか。
電子取引では味わえない、
怒号が飛び交うダイナミックな
現場であったと想像する。
話は変わるが、1983年1月は
インターネット元年。
元々軍事目的で
研究が進められていた
コンピューター・ネットワークが、
インターネット・プロトコル(IP)に
切り替わったのが
この年の1月であった。
ファミコン誕生もこの年である。
一巡買われたあと 突破のための足慣らし (2019.02.13)
昭和の風林史(昭和五八年一月二九日掲載分)
小豆・八千円前後好売り場
小豆は材料一巡買うと高値掴みになる。
みじめな場面がくるだろう。
輸大問答無用。
輸入大豆は全艦発進せよの線になった。
特に東京当限にまわる二月限の
買い転換は注目に値する。
大阪二月限、三月限の一代足は
安値、両足同値の二点底。
そして六月限は10日→17日の
上げ幅のキッチリ半値押し。
八百円抜けから逆注買いの理想型。
大阪先限半値押しだったが
東京先限は三分の二押しだった。
東京七百八十円から上伸力が強化する。
シカゴ期近は六㌦突破のための
足ならしをしている。
新年に入って27㌣を一気に立て、
押し目を入れて
20㌣の引き継ぎ足での上昇。
まさしく
線の理に叶った上げ波動そのものだ。
一方、円相場は
難かしい動きをしているが、
ひとまず11月1日から1月11日までの
棒立ち火柱高で
上げエネルギーを燃焼した。
穀取輸大は
安値圏でのオーバー・ヘッジが
上げの強力エネルギーになっている。
安値買い玉は回転が利き、
高値買い玉は薄紙はがすが如く
追証がほどけて、一陽来福、
これからが
わが世の春の四千円奪回だ。
幸いなことに
玄人という玄人は皆弱気。
神戸の七色K先生も
『倉庫の荷は
二枚、二枚という崩しかたで、
これでは強気できん。
と思って売ったら高い。
私が売るとなぜ高いのだ』。
星の流れと相場の線は、
なんでも知っている。
時に旧暦満月。
相場は一方に動きが片寄るところ。
週明け→月替わり期待。
一方、小豆相場は、
雑豆全般堅調のムードに支援され
八千円指呼の間に買われた。
小豆も強気せんと、
いかんのじゃないですか?と
アドバイスが盛んにくるが、
そうじゃない。
一巡買われたあとの、
みじめさが見えているような気がする。
一本足の大底はないという信念で
高いほど糸をのばして売り上がろう。
●編集部註
コツンと音がする―という表現を
チャート分析で使う事がある。
この時の大豆相場は、
まさにコツンと音がしていた事が
チャートを見ると判る。
罫線に淫するなかれといわれるが、
当時の週足を見ると、
このコツンの安値を頭に
チャートの教科書に
掲載されてもおかしくない程に
美しい逆三尊パターンが出来ている。
買わない相場は強いもので、
買い始めると急落する。
これに懲りて買わないとまた上がり、
今度こそはと買い参入するとまた下がる。
曲がりやにはそんな線形である。
常識・狂信・アジテーター 予測・期待・煽り (2019.02.12)
昭和の風林史(昭和五八年一月二八日掲載分)
輸大・棒立ち前夜の鳴動?
小豆は売り。ストトンと落ちるだろう。
輸大は叩き屋が宙に舞う秒読み段階。
>>続きを読む
大軍に兵略なし 予測と現実は裏腹に (2019.02.08)
昭和の風林史(昭和五八年一月二七日掲載分)
輸大・奔騰まさに接近せり
輸大は安値取り組みだけに怖い。
売り屋の天下も終わりつつある。
奔騰まさに近し。
>>続きを読む
「遠山に日の当りたる枯野かな」 高浜虚子 (2019.02.07)
昭和の風林史(昭和五七年十二月二八日掲載分)
値頃観御無用の時代です
小豆は一月中旬に大底が入るだろう。
あと五、七百円の安値が見える。
最後の最後まで悪いものは悪い
という相場を見て、
中途半端な妥協や気やすめが
通用しない厳しさの時代を
痛感するのだ。
それは、体力がない、資力がない、
ゆとりがないギリギリのところに、
なにもかもきているから、
震動を緩和するスプリングがない。
ダイレクトに影響する。
それが今の世相である。
相場の世界で
「値頃観無用」というのがある。
大納会前日に、
よもやS安が入る小豆とは
思っていなかっただろうが、
それがあるのが相場である。
本年を通じて、
たびたび書いてきたが、
世の中すべてが、去年までとは
違っている。
相場も変化した。
不況のドン底、物は売れない。
余分な在庫を持つゆとりがない。
業界は体力極度に消耗している。
仕手系取引員の惨憺。
しかも軍律急に厳しく
なにもかもギスギスしている。
だから頭の切り替えができていないと、
なんの相場でもそうだが、
あり得なかったような斬られかたをする。
斬られた側は、なぜ斬られたか判らない。
そのような、
この一年のなにかにつけての相場だった。
生糸・乾繭然り。ゴム、砂糖然り。
小豆、輸大また然り。
それが新年明けて早々と片がつくのか。
それとも、あと長々と尾を引くのか。
これは休み中の宿題である。
暖冬も大きな影響だ。
神の与え給う試練と受けるか、
庶民のために
せめてものプレゼントと受けるか。
いやはや、本日大納会。
この一年の御愛読を
鳴(めい)謝、深謝。
虚子は
「遠山に日の当りたる枯野かな」と。
来春は、
この句のような相場だと思う。
遠い山に当っている日は
朝の日か、夕の日か。
足元は枯野だが。
●編集部註
風林火山のこの箴言は、
平成最後の年にかろうじて
商品先物業界の片隅に生き残る事が
今も出来ていている人間からすると
ぐっと胸に刺さるものがある。
とある放送業界の方と懇談した際、
心に残ったのは、
放送業界は
バカほど出世が早いのだとか。
似たような人間が
跳梁跋扈する世界を
少し前に見ていたのでよくわかる。
枕頭の書に
マルクスアウレリウスの
「自省録」を掲げるような偉い人が
業界にたくさんいれば、
世界は変わっていたかも知れない。
もっとも、現実世界で
そんな奴は絶対に出世しない。
押しが強く声デカく、
シンプル頭が
持てはやされた時代であった。