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データあらかると

「三方良し」戦略 ゾゾタウン成功余地 (2019.10.25)

SBGは17年に運用額10兆円規模のファンドを立ち上げて80社超に出資し、
投資先の含み益がSBGの好業績の牽引(けんいん)役となってきた。
だが、市場では「ウィー以外の出資先の企業価値の評価も適切なのか
という厳しい見方も出ている」(アナリスト)という。
 10/23(水) 20:29産経配信より抜粋
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191023-00000609-san-bus_all
ゾゾタウンを吸収したのは、ショックを防ぐためかと邪推したくなる。
ウーバーもウィーワークも失敗だったが、ゾゾタウンは成功余地がある。
ZOZO SUITは、本物の世界制覇の道具になりえたかもしれない。
熟成をかさねる行錯誤を外野」に翻弄され潰された感がある。
有名女優との交際や宇宙旅行などの話題でZOZOはメディアを賑わすが、

アパレルビジネスとは関係ないとはいえ好ましくないのも事実。
この風評に加えて、ヒット商品はダイレクトに消費者が反応するものなのに
騒いでいたのはアナリストやコンサルタントなど「評論家」やハイテク好きな非消費者。
テクノロジーの評価は下せてもビジネスとしての評価は下せていなかったと思える。
もともと「ものづくり」というのは、精通したメーカーか商社などとしっかり取り組み、
強固なビジネスモデル設計をする必要がある。
製造ノウハウがある製造小売業にとってもハードルは高く、パーソナルオーダーを
行うというのは簡単に実現できるものではないから、ものづくりの手前のサイズデータを
囲い込むというのは非常に意味がある。
取得・保管したデータを各NBブランドに開放し、サイズデータのプラットフォーマーになる
といった「三方良し」の戦略をZOZOが発表したのは、正しい着目点だと評価したい。
高い商品開発力 × SUIT(ハイテクツール) × 製販連携したビジネスモデル
(マス/カスタマイゼーション)のビジネスモデルと単純化すると解る事だが。
どれか1つだけで成功するということはなく切っても切り離せない相関関係にある。
しかし、「本来目的」に立ち帰れば、HOW (計測技術)も必須であるだけではなく、
WHAT (商品完成度)についてもっと煮詰めるべきだったのは否めない。
そして前澤社長は、「リアル店舗はあの手この手でディスカウントを行っている。
なぜECはできないのか」と疑問を呈して、ZOZOはクレジットカード事業に参入し、
「ZOZOCARD」を持った人は5%のポイント還元を打ち出した。
ポイントは、勘定科目でいえば販管費になるが、消費者側から見れば値引きである。
実際に販売価格を下げるためには、定価で売る期間などの法的制約を受けるが、
販促費の名を借りれば実質的に変則的な「値引き」が可能なのは0円携帯が典型。
とにかく安く買えればよい消費者にとってみれば、クレジットカード、ポイント、
メンバーシップの何が違うのかということになるかもしれないだけ。
「ポイント」還元であればCRMプログラムなので出品するメーカー側に許容され、
売価変更だと値引きになので出品するメーカー側に許されないという違い。
近未来的な発想でリアル店舗を持たない「弱み」を克服しようとする上で
ZOZO自身が自らディスカウント料を負担するZOZOARIGATOというのは、
メーカーにポイント還元分を負担させる小売業も多いなか、フェアなやり方である。

しかしZOZOARIGATOを契機とする「ZOZO離れ」というのは
C&C戦略を最優先の戦略課題とする有力アパレルとは
真っ向から対立してしまう構図が本質的な背景にあるのが厄介。
しかもB2B事業起死回生のFBZ(フルフィル・バイ・ZOZO)が足を引っ張る。
FBZはクライアントの在庫を丸々預かって「ZOZOTOWN」のみならず
「自社ECサイト」「店舗」に一元的に引き当てて欠品による機会損失を
最小化する目的ではあるが、棚入れして宅配出荷する以上は
ECのフルフィル倉庫運用を効率化するのは限界がある為に
在庫を預かり宅配出荷を代行するとはコストに見合う収益は期待できない。
店舗運営において宅配外注費を圧縮するC&C(クリック&コレクト)は
店舗をお試し/受け取り/在庫引き当て/宅配出荷の拠点として
顧客利便と在庫効率を高めようとする。
店舗網やTBPP網を持たないZOZOはC&Cのメリットを提供できず、
フルフィルコストと取扱高対比15%という手数料がFBZ導入で目立つ。
そもそもFBZを必要とするのは自らC&Cに向けた顧客と在庫の
一元管理・運用体制を確立できない中小あるいは出遅れたアパレル事業者であり、
FBZ導入企業に提供する「ZOZO ID」ログイン決済も一見「Amazon Pay」を
連想させるが、クライアント自社EC支援の囲い込みサービスなのか
手数料収入と顧客決済データを狙う戦略なのか見えていないと見るべきで、
FBZを推し進めればかえって有力アパレルは迷惑がって遠ざかり
中小企業はFBZ導入に二の足を踏むという状況では減益要因となりそうである。

出荷委託型」なら受注してからZOZOの倉庫に移送して宅配出荷するので
出品側の在庫効率を損なわずフルフィルコストは格段に抑制できる出荷になる。
あるいは「マーケットプレイス型」なら受注した宅配情報をオンラインで送って
出品者が出荷する為C&C体制を確立したアパレル事業者にも受け入れられよう。
まして世界戦略を考えるならば、宅配料金が高い欧米ではC&Cが主流となり
小売りチェーンとEC事業者の攻守が逆転しつつある現状を踏まえて
宅配が安く速く確実だったヤマト運輸の料金値上げに状況の変化を認識すべきである。
急成長の基盤となった顧客のニーズは、ECフロントに好感が持てて使い勝手が良く
速く便利に送料負担なく商品が手に入ることであって、試着・返品サービスの取組みや
「購入の前に試せる」TBPP(Try Buy Pickup Point)と呼ばれる通販商品のお試し受け取り所
といったサービスはすでに始まり、送料負担のないことが望ましいとさえ求められている。