最適化を図るカー用品業界 どちらも王道 (2024.07.10)
業界最大手のオートバックス(9832)が早期退職を実施した。対象は勤続10年以上の50才から57才で人材のパフォーマンスを最適化すると言う。純正品で標準装備が充実している昨今から先々の売り上げ伸び悩みや利益率悪化に備えて業態の変更と人件費削減を始めたようだ。
直近3年の売上高はオートバックスが、2285億円、2362億円、2298億円。営業利益は、115億円、117億円、80億円。一方で業界2位イエローハット(9882)の売上高は、1480億円、1471億円、1466億円。営業利益は、140億円、152億円、144億円となっており、売上高では1.5倍以上の開きがあるのに営業利益では逆転状態が続いていると言ってよい。営業利益率でみればオートバックスが5%、4.9%、3.4%に対して、イエローハットは9.5%、10.3%、9.8%と2倍前後の逆転が起きている。つまりオートバックスの経費が大きいことが数字から顕著となる。100人の早期退職者は4000人の2%ではあるが、利益率を改善しようとする姿勢を示していることになる。
次に店舗数を見るとオートバックスは590店舗で内訳が国内496店舗。イエローハットは全740店舗が国内のみである。しかしオートバックスの店舗規模はイエローハットの2倍以上である。イエローハットは10年以上前から収益力でオートバックスを上回っているが、赤字になったのが転機となった。先ずは収益性の高いタイヤ関連事業に集中し次に居抜き物件の賃貸で経費を低く抑えた。オートバックスが広い店舗で整備ピットがあるなどの統一感で顧客のニーズに応える分がコスト高に反映されている。言い換えればブランドイメージなどの理想を追求して利益率が低いオートバックス、規模がバラバラで統一感よりも利益体質を重視した経営に切り替えたイエローハットとも言える。更にイエローハットはコロナ需要に乗ってバイク事業に力を入れた差別化も図ったランチェスター戦略を採ったのもポイントである。
つまりイエローハットは強者であるオートバックスに対して自らを弱者と認めた上で、エリアを絞って商品を絞りサービスを絞ることで強みの部分を濃くした効率経営をするといった弱者の局地戦戦略で立て直した。一方でシェアトップのオートバックスは総合的に弱者を囲い込んでいくという強者の戦略を採り集客力を発揮して売上高1位を維持している。これは優劣をつけるものではなくどちらの戦略も強者弱者の王道であり、市場全体で見ればオートバックスが取りこぼしたニッチな市場を拾うイエローハットという構図で最適化が成立している。
しかしオートバックスはカーステレオやスピーカーのメーカーも方向転換したりパイオニアもカーナビ市場に参入など創業期から外付け商品の取り扱いでも伸ばしてきたものの、ドライブレコーダーまでもが標準装備になりつつつあるように単価の高い商品が売れない状況を踏まえて次に目を向けている。ピット整備点検を活用するべく整備士育成の子会社を保有しているようにサービスの掘り起こしを準備中である。その分野での競合相手はビッグモーター凋落前から整備や点検など車検を収益源にしてきたカーディーラーであり、フランチャイズ店の多いオートバックスが即日納車のようなニーズなどに一定のクォリティーで応じていけるかに注目したい。