日本国内で最大規模とされるマージン・ローン(株担保融資)が実現した。
リードアレンジャーはクレディ・スイスとJPモルガンで
海外の金融機関を中心に国内外16の金融機関が参加した。
足元をみた強かさは銀行側とSBGのどちらが上なのだろうか。
2月25日にグループ保有の国内通信子会社ソフトバンク株のうち
約3分の1(9億5300万株)を担保にして1年延長できるオプション(権利)が
付いて融資期間2年の5000億円借り入れをSBG(9984)が実行した。
2018年12月に東証1部に直接上場したソフトバンク(9434)は
グループの中で最もキャッシュを生み出す親孝行子会社。
公開直後こそ公募価格の1500円を割ったが、株価は持ち直して
2019年央から現在までは1500円を挟んで揉み合う値動きが続いている。
上場されて流動性も高い上に担保価値の安定というのが
金融機関側へのアピールポイントだ。
しかし2019年12月末時点での社債償還は高水準で、
2021年度は1兆3056億円、2022年度は5010億円の償還が控えてる。
今回のマージン・ローンと呼ばれる手法だが、
保有する中国のアリババ株を担保に2018年春に約80億ドルを、
2018年夏に追加で約14億ドルを借り入れているので実施実績はある。
だから返済が滞ってもソフトバンクグループに法的な返済義務がない
ノンリコース(非遡及型)を選んだのだろう。
返済が滞れば売却されるのだから穏やかな話ではないのだが、
SBGが直接的に出てこないからくりがある。
実際に借り入れるのがソフトバンクグループの100%子会社であり
2019年11月に設立した日の出1号合同会社であること。
担保となる株式はソフトバンク株だが同じくソフトバンクグループジャパン
という100%子会社ではあるが中間持株会社が保有することの2点がミソ。
名義や議決権はソフトバンクグループジャパンのままなのも抜け目ない。
また広報室は、金融機関から予想以上の需要(融資の提案)があったことを示す
「銀行のデマンドもオーバーサブ(スクリプション)」という表現を使っている。
従来では新規社債発行だった償還資金調達だが、資産売却やノンリコースの
マージン・ローンなどさまざま調達手法の組み合わせを手元資金に加えてもいる。
とはいえソフトバンク・ビジョン・ファンド1号が投資したウィーカンパニーは
経営不振に陥り計1兆円規模の支援を予定しているため2号設立見送りの現状。
まして担保付きのローンが増えると、無担保社債がより劣後するとされて
無担保社債の格付けが下がり調達コストが増すことが今後ありうる。
個人が信用取引をする際の株担保融資のようなリコース(訴求型)の
上場株担保融資と違うのは掛け目が70~80%ではなく30~40%が一般的な点。
借り入れ金額5000億円を担保分9億5300万株2月25日の終値での
時価評価額1兆4100億円で割った約35%が今回の担保の掛け目である。
またソフトバンクグループ単体の純有利子負債(2019年末で約4.8兆円)を
自社で保有する株式価値で割ったLTV(ローン・トゥ・バリュー)が
約35%という点も市場リスクである乱高下に対して耐性があると考えられる。