証券ビュー

プレステ-ジの眼

不発弾爆破処理 DeNA (2020.02.18)

DeNAはかつての栄光時代の蓄えによって財務基盤まだまだ盤石。
自己資本比率も70%を超えキャッシュ800億円以上を抱えるキャッシュリッチ企業。
貸借対照表に残っている「のれん」は、ベイスターズ買収時に発生した58億円のみ。
ゲーム事業はDeNAの売上全体の3分の2を占める主力事業なので、
経営の屋台骨が大きく揺らいだと言われるだろうが
今回の「減損損失」で溜った膿は吐き出され、今後の減損リスクは極めて限定的。

但し、キュレーションサイトは閉鎖に追い込まれ、「のれん」の減損損失40億円。
旅行事業の「DeNAトラベル」もエボラブルアジアへ譲渡。
配車アプリ「MOV」も、ジャパンタクシーとの経営統合。
M&Aを駆使して事業の多角化を模索しヘルスケア事業などを育成中。
孤軍奮闘し好調を維持しているのは横浜DeNAベイスターズというスポーツ事業。
他の新規事業はいまだ赤字が続いており、収益の柱になるにはまだまだ時間がかかりそう。

日本の会計基準は、「のれん」は最長20年内の期間で規則的に償却され、
その償却額がコストとして計上するというルール。
「のれん」の定期償却が行われないIFRSは
毎年の「のれん」の償却負担がないため、平常時には実に都合がいい会計ルール。
が、業績低迷という非常時になると、「減損」処理で一気に巨額の損失。
ゲーム事業全体としての価値下落が明白となったため、
IFRSを適用しているDeNAは、減損の判定がされるまで溜めつづけてきた「のれん」が
貸借対照表から損益計算書へと一気に放出され、今回の巨額の赤字となった

ngmocoを買収した2011年3月期では日本の会計基準を適用しており
「のれんの償却は、2012年3月期より12年で行う方針」に有価証券報告書記載。
米国進出の足掛かりにするため、
設立からわずか2年程度だった小さなゲーム会社ngmoco会社を
2010年に巨額の資金を使って買収し2016年にはngmoco社を清算。
期待通りの成果は出せず、事業は赤字続きで米国事業からは事実上の撤退。
約8年にわたり毎年「のれん」償却して今回の約3分の1の金額で済んだはずが
買収年度の直後に国際財務報告基準に移行したため、
一時的に人気が出ても継続的に面白いゲームを開発し続けなければユーザーに飽きられ
業績悪化のハイリスク・ハイリターンなビジネスのゲーム事業全体としては
まだ価値下落はないと判断で「のれん」償却は行わずの顛末。

「事業価値低下による固定資産の価値下落」508億円について
日本の会計基準では、「減損損失」は「特別損失」に区分されるため、営業利益に直接影響しない。
しかし適用しているIFRSには「特別損益」という区分はないため、
「減損損失」は営業利益より上に区分され、営業利益を押し下げる結果となった。

 「のれん」とは、
ブランド、技術、販売網、従業員の能力などの企業が保有する目に見えない価値の総称。
このような無形の価値は、M&Aによって初めて顕在化する資産。
具体的には、M&A時の買収価格が買収先企業の純資産を上回る場合、
その差額が「のれん」として貸借対照表に計上される。