証券ビュー

森羅万象

玉整理 グズグズ弱気の燻りは感染する (2019.01.18)

昭和の風林史(昭和五七年十二月十日掲載分)
玉整理済めば輸大急反騰
白昼の虐殺場面だが玉整理が進めば
この輸入大豆は
手の平を返したように買われる。
横神両生糸取引所の
今回の取引員処分は
釈然としないものを残した。
役所側は国会対策として
穀取関係、砂糖取関係すべて
申し開きができるよう、
火のついたようにせきたてた。
取引所の自主性よりも
行政側の手落ちを
糊塗するためのものである。
流れとしては
T社関係玉の総排除機運で、
もとよりこれは
役所→取引所の圧力である。
これによって
T社の輸入大豆買い玉がどうなるのか。
10月末→11月上旬の高値水準で
買っただけに追証に攻められ
一部これを投げていたようだが、
取引員の自己玉が
T社買いに向かっている分も多く、
T社の投げ即ち自己玉の利食い
という格好になり出来高が弾んだ。
T社買い玉は全部清算されるのか、
それとも残せるものは残しておくのか。
新規受託のドアは固く閉ざされ
建玉のオペレーションは不可能になる。
要するに受けるだけ受け、
取り組むだけ取り組ませておいて
手足をしばり、
棍棒で殴りつけるようなものだ。
商取業界における白昼の虐殺
とでもいおうか。
ところで相場のほうだが、
一巡玉整理(買い玉投げさせる)が済み、
誰も彼も人気が弱く売り込んでしまうと、
手の平を返したような様変わりの場面を
迎えるだろう。
この相場は
大相場の土台づくりのようなものと思う。
値頃観でいうわけではないが、
四月10日五千十円高値(東京先限)から
千二百二十円下げ。
先限としては
53年12月25日三千六百円以来の安値である。
このような相場を
売ってなんとするのだろうか。
T社問題の片がつけば、
大反騰に転ずると思う。
小豆相場は強気したままでよい。
7日に立てた強力陽線が支配している。
いまここはグズグズ弱気が
ふえたほうがよい。
●編集部註
 浅田次郎は小説家であると同時に、
競馬に関するエッセイが
面白い事で知られている。
そこで繰り広げられる勝負論は、
競馬だけでなく全ての勝負事に通じる。
無論、商品相場にも応用が利く。
 浅田は自分が勝負師として
〝燻っている〟か否かに
敏感になるという。
自分が燻っていた場合、
何をやっても絶対に勝てない
とまで言い切る。
また周囲に燻っている人間が
いないかどうかにも気を配る。
得てして燻りは感染するのだとか。
燻った人間に近付かないのも
勝負のうちだという。
 ここで登場するT社の玉は、
言ってみれば燻りの集合体と言えるだろう。 
なまじポジションが大きく、
提灯もついていたと思われ、
本尊の燻りが
二次感染、三次感染したのだとも言えよう。