買えたら当たり籤 人気が弱くなるほど先が楽しみ (2019.01.15)
昭和の風林史(昭和五七年十二月七日掲載分)
一筆啓上小豆買い場待ち
小豆の六千円台が
もし買えたら当たりクジである。
人気が弱くなるほど先が楽しみ。
小豆に対する人気が、
玄人筋ほど弱い。
二万九千五、七百円のあたりで
カンカンの強気だった人達が
掴まって辛抱している組と、
投げてドテン売りに
転換した組とがある。
二万七千円台を弱気する以上は
少なくとも千丁下を
考えての事であろう。
そのような値段が
あるかないかは判らない。
あっても自然だし、
なくても自然である。
だから、
あればあったでよしとする構え。
なければないで、
これまたよしとする陣構えでよい
と思う。
相場というものは、
迷いだしたらきりがない。
ああでもない、こうでもないと
深い迷いの淵に沈む。
このような時のことを
『秘伝気を転ずべし』と
本間宗久は記した。
普通小豆相場のパターンは
夏天井→秋底である。
今年はこのパターンが崩れている。
やはり七月の解け合いが
今もって災いしている。
それと
戦後最悪の不況も影響している。
秋底がズレ込んで波動論でいえば
師走底なのか、
明けて大寒あたりになるのか、
今のところ、
それは未開の波動である。
先週金曜日は久々の
東西一万枚を越える出来高だった。
かなり灰汁は抜けているのだが、
なにせ打たれているのが玄人だから、
ねばり腰がある。
これで先物七千二百円あたり以下に
転げ落ちる下げが、
もう一発くれば筆者のトレンドは
申し分ない買い場になるわけだが、
そのような下げは、
いかな玄人といえど失神相場だ。
そのような時がきたら、
これはもう大地を打つ槌(つち)は、
はずれようと
この買いは金の延べ棒。
絶対のチャンスである。
それまで“待つは仁”。
弱気の嵩が一刻一刻とふえていくのを、
ゆとりをもってみていること。
だいたいそれでよいと思う。
●編集部註
「一筆啓上 火の用心
お仙泣かすな 馬肥やせ」
日本語で書かれた最も短い手紙と
知られるこの文章は、
本多重次が
長篠の戦いの陣中でしたためたもの
として知られる。
常在戦場という言葉があるが、
相場もまた戦場の一つである。
そういった意味でもこのタイミングで
〝一筆啓上〟と始まるところに、
今回の文章の深みがある。
余談だがこの猛将
本多〝鬼作左〟重次、
徳川水軍の主力にと
武田の旧臣、向井正綱を
スカウトした人物でもある。
その件は、隆慶一郎の
未完の小説「見知らぬ海へ」の中で
詳しく書かれている。