昭和の風林史(昭和五七年十月十五日掲載分)
輸大期近も生糸も山場か
輸大期近と生糸期近が
役所にとって頭いただ。
両方とも山場である。
百鬼夜行という感じを
受ける昨今の商取界の各市場。
超閑散の小豆が
一夜明けたらストップ高。
輸入大豆期近限月は
実勢遊離の大逆ザヤ。
生糸市場は
売り方、買い方にらみあい。
東京砂糖市場の粗糖は、
ひやかしみたいな売りの手ぶりを
ガバッと取られてしまうし。
お役所のほうも関係取引所も
困った困った
当限の玉がほどけぬことには。
今年は荒れ狂う年というわけか。
円相場に金相場。
そして政局は一寸先は闇だし。
ところで小豆だが、
ある事情通、仕手関係について、
買い方スルリと
抜けてしまうかもしれないよ―と。
仕手関係だけでみるならば、
これこそ一寸先は闇である。
しかし相場つきや日柄、
そして二万八千五、六百円を
売り込んでいる取り組みなどみると、
三万円大台乗せの相場といえよう。
輸入大豆にしても
安値売り込み型の取り組みが
踏まされている。
要するに売り過ぎのとがめである。
大豆の環境としては
旧穀の需給逼迫を騒ぐ割りに
実需離れで、
ここまでくると
買い方仕手の乱暴が非難されだす。
穀取も市場管理面で
厳しい姿勢をとらざるを得ん。
なぜならば実需筋の
突き上げがきつくなるからだ。
買い方も、ここまできたら、
ほどほどにすべきであろう。
十分これで勝ったのだし、
煎れに向かって
玉も抜けられるのであるから、
戦況有利のうちに
終戦すべきでなかろうか。
生糸期近限月は15日か18日あたりに、
なにか流れが変化する可能性が濃い。
売り方の手には
意外なほど速いピッチで
現物が集まっているそうだ。
役所の動きもあわただしい。
●編集部註
手ぶり、といっても
何の事やらもう解るまい。
平成も
バブルに浮かれる直前くらいまで
証券取引所も商品取引所も
手と指の動きで注文を入れていた。
1990年に倉本聰の脚本で
日本テレビで放送されていたドラマ
「火の用心」で
石橋貴明が演じていたのが
東京証券取引所で働く手ぶりの
証券マンであった。
筆者がこの業界に入ったのが
1997年。
商品取引所ではゴムの板寄せ取引が
箱崎の仮設取引所で行われており、
その模様を見学に行ったことがある。
さすがに本文中で
出て来る「乱手」まがいの
取引はなかった。
更に鎧橋を超えて
東京証券取引所に行くと、
「手ぶりロボット」
というちゃちな機械が
注文の仕方を解説。
嗚呼、お金が余ってるんだなと思った。