雲行き怪し 当てようと思うと曲がる (2018.10.03)
昭和の風林史(昭和五七年九月八日掲載分)
生糸相場の雲行き怪し
小豆の安いところを叩くと
捉まった時はひどいことになる。
輸大は時間調整。
生糸市場のほうが、なにか騒然としている。
今月納会締める、締めると前宣伝は、
つつがなくゆき渡っているが、
渡し物も日毎にふえて、
これが買い方二本の柱が、
この納会受けざれば
七月小豆の二の舞い必至―と、
融資を懇願すれど、
案外、中ちゃんという人、
クールな人生観の持ち主だし、
六本木崩しの
きっかけとなった話題もあるから
人生意気に感じて
敢えて資金援助するかどうかは
彼の胸先三寸にある。
まして、
仕手に資金援助しての
買い占め、玉締めは
取引員モラルの問題とされているから、
出来んだろう。
小豆のほうは、これはどうなんだろう。
ひょっとすると、目先戻すとみたのは、
曲がりになったかもしれない。
提灯が随分ついているようで、
なにが怖いといって
この提灯ほど怖いものはない。
松尾芭蕉は、
鶏頭や雁の来る時なをあかし―と。
風林や提灯つくころなを曲がり
となるかもしれない。
このような時は、
当てようと思うと曲がる。
相場は薄商い。人気は三万円傘(笠)。
戻りを売っておけばよいという。
確かにそうかもしれないが、
あまり売り込むと、下がらんのが相場。
まして東西取り組みがふえつつある。
戻す時は一発高になりそうだ。
輸入大豆は
前二本のファンダメンタルズが
強気有利に展開しているから、
月の中旬頃から
目の醒める動きになるだろう。
期近二本はシカゴも豊作も、
為替変動も関係ないところの相場である。
まあ、のんびりと力をためておけば
よいだろう。
●編集部註
生糸・乾繭市場も平成の御代にはない。
昔は一人の実業家をのめり込ませた挙句に
商品取引員まで買収せしめる程であったのに、
いまではキーボードで直ぐに変換されない。
AIによる予測変換機能全盛の中、
〝きいと〟は「生糸」と一発で出て来るが、
〝かんけん〟は「官憲」「漢検」となり、
候補にも入っていないという悲しさ。
老兵は死なず、ただ、消え去るのみ―。
相場とは関係ないが、
この頃一人の老俳優が
人気時代劇の主役を降りた。
その人の名は東野英治郎
(ちゃんと予測変換で名前が出る)。
テレビの水戸黄門役と言えば
筆者の頃は東野英治郎だった。
この問いへの回答には
世代間ギャップが生じる。
二世代前なら月形龍之介、
一世代後なら里見浩太朗、
二世代後は、水戸黄門自体を知らぬ可能性が…。