昭和の風林史(昭和五七年六月十二日掲載分)
下げトレンドは厳然たり
相場というものは
結局は流れに、ゆだねられる。
無理や焦りから離れ、自然に帰る。
穀取業界は、
イライラ気分が高まっている。
輸入大豆相場が動かん。
小豆の商いは細る。
商取業界全般に
焦燥感と不快指数が上昇している。
この現象は商品界だけでなく
証券界も似た現象。
さて小豆は、
北海道の作付け面積27%増=
三万四千七百㌶。
この数字は早くから伝わっていたから
一応織り込み済みと片づけられた。
しかしお天気のほうは至極順調。
昨年好成績だった〝エリモ小豆〟が
ふえているから、
53年(三万四千百㌶)の
反収三・六俵を
上回るかもしれないという予想。
四市場在庫のほうは
昨年五月末二十万三千二百八十七俵。
今年五月末は二十三万九百九十六俵。
昨年と今年では輸入枠の違いが大きい。
また海外雑豆市況は
全般に去年の半値近い値下りだ。
高いのは小豆だけである。
今の小豆市場は
取り組みの片寄りと現物の偏在で、
なんとも異様だが、
これもどこかで決着がつくだろう。
その時、価格は、
どのあたりで自然の姿になるのか。
東西取り組み合計は漸増。
去年の今時分に比較すると
まだ六千枚ほど少ないが、
去年の異常気象による市場人気の燃えかたと、
現在の豊作ムードに逆行する仕手介在市場の
醒めた人気とでは随分開きがある。
ところで精糖先限の水準は
60カ月前の
六月13日安値(百七十八円)近くまで
下げて相場商品の帰巣性という怖さを
再認識させた。
では小豆の60カ月前の値段は?
といえば二万六千円~七千円である。
近年一番安かったのは
53年一月発会一万八千二百九十円。
この年は豊作で
六月26日三万二千四百十円で
早々と天候相場の天井を打ち
二万二百八十円まで崩れた。
相場の帰巣本能というものは、
怖いと思う。
●編集部註
高いのは小豆だけ―。
よろしい。ならば売ろうではないか、
と売り屋は考える。
商品先物の華はカラ売りにある。
ここで、
この当時の日経平均株価と
東京小豆相場の週足を
並列で比較してみよう。
1981年終盤から翌年序盤にかけて、
日経平均は7000~8000円であった。
この時、小豆のレンジは
1万600 0~8000円。
これが2年半後には、
ほぼパリティの関係に。
資金が株式に流れていくさまが
非常によくわかる。