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森羅万象

前ぶれ〝ぬるい 〟かつ〝おもい〟 (2018.06.07)

昭和の風林史(昭和五七年六月二十六日掲載分) 
おみやげつきのS安とは
売り屋は煎れない。
買うだけ買ったあとは
買い屋が自滅する。
売り屋は待つだけ。
小豆は買い方が買わないと緩む。
傾斜地のレールの上に
重い荷を乗せたトロッコがあって、
強気が懸命に押している。
52年相場で敗北した本田忠氏が、
当時『とにかく五枚でも十枚でも
買わないと気の持てない毎節で、
三時の大引けが済むと
ガタガタと力が抜ける毎日だった』と、
買い大手苦戦中の心境を洩らした。
買っていないと気が持てない。
判るような気がする。
戦時中、艦載機の機銃掃射に、
憲兵が
ピストルを抜いて撃ちだしたのを見て、
弾がとどかないのに―と思った。
弾がとどく、とどかんではなく、
気がそうさせたのである。
先週の〝大暴落線〟週間棒の支配下に
今の相場は置かれている。
二月8日―13日、六千円を抜いて
10日天井した時の大暴落週間棒が
12週間支配して四千八百丁を下げた。
先週付けた暴落線も、
五千丁下げの威力がある。
買い方は天候に賭けるしかないが、
時間が持つだろうか。納会受けて、
六月限を煽っても
今の売り方は煎れてこない。
人気は冷ややかである。
強引買いしている時は
敢えて逆らわない。
しかし二枚三枚、二枚三枚のピラニアは
どこまでも食いついてくる。
これが怖い。
お金においといなかろうと、
市場管理の面で問題が出てくる。
いつの場合でも仕手戦は、
このルール強化で行き詰まりがくる。
相場は相場に聞け。
流れを上向きにしようと
買い方大変な努力中だが、
不思議にこの相場〝ぬるい〟
そして〝おもい〟。
中段もみ下放れの前ぶれか。
●編集部註
 眼前の上げトレンドに対する
〝唯ぼんやりとした不安〟
とでも形容出来ようか。
当時の事は知る由もないが、
行間からは腕力相場の匂いを感じる。 
無理のある相場は、
必ずどこかで反動が来る。
だが、
何処でその反動が来るかが判らない。
よって不安は
ぼんやりとしたものにならざるを得ない。
様子を見て、
いざとなれば機敏に動くしかない。
以上で相場に関する解説が
終わってしまった。
この頃の世相はどうか。
 この時期はカンヌ映画祭である。
先日、是枝裕和監督が日本の作品として
21年ぶりにパルムドールを受賞したが、
21年前に受賞した作品を監督した今村昌平は、
1983年に『楢山節考』でも
同じ賞を受賞している。
 82年のパルムドールは
米国映画が受賞したが、
この時監督賞を受賞した
ヴェルナー・ヘルツォーク
フィツカラルド』という作品が面白い。
 題名を画像検索してみるとよい。
如何に破天荒な作品か理解出来よう。