証券ビュー

森羅万象

他人はどうでも自分の信念はどうか (2018.04.09)

昭和の風林史(昭和五七年三月二五日掲載分)
小豆は崩れたがっている
下げるしかない小豆だ。
横にはって時間を稼ぐかもしれないが、
よけい悪くなる。
23日、東京金取引所の初立会前に
報道関係者のため模擬立会いを行なったが、
テレビ各社と報道各社カメラマンで
東繊ビル金市場の廊下は立錐の余地もない。
御祝儀商いのうち
三分の一ぐらいを占めたのではないか
という山梨商事の霜村社長は
ホテルオ―クラのパーティの会場で
NTVのインタビューのライトを浴びていた。
『私は今の金の値段は買い下がるつもりなら、
まったく心配ないと思う』―と。
霜村氏は、これからは金の時代だ。
商取業界の夜明けだ―と希望に満ちていた。
金フィーバーに当てられたのか、
この日の他商品市場の商いは薄い。
確かに金と為替が波乱を展開すれば、
小豆にしても桑名が買ったとか、
大阪は渡し物がないなどという話が、
いかにもくすんで見える。
しかし小豆には小豆の世界がある。
二月10日→三月17日の下げ幅の三分の一を、
やっとの思いで戻した小豆。
もう少し横にはって、
ストトンと落ちてくるチャートになった。
今度安いと三千二百円があるだろう。
23日、東穀立会見学場に、
なにか薄黒い影のかたまりのような一団があった。
中国のミッションだそうで、
あのおばさんが冷女史だというが
麗という感じとはほど遠い印象だった。
さて、強気の人が多い小豆である。
六本木が買った。桑名が買った―と。
他人はどうでもよい。自分はどうなのかである。
小生は暴落必至の信念である。
先限引値が四千円を割ったら、
下げのホイッスルが鳴ったと思えばよい。
信ずる者は売ったままだ。
●編集部註
 〝いかにもくすんで見える〟という表現は、
何かを暗示していたと考えてしまうのは
筆者だけであろうか。
東京穀物取引所は既になく、
跡地には、瀟洒さのかけらもない
見方によってはいかにも
エエここは高いですけど何か
とでも言いそうな圧迫感の強いマンションが
デデンとそびえ立っている。
 夏草や兵(つわもの)どもが夢の跡 芭蕉
 円安は、円建て金価格を押し上げる効果がある。 
この時、ドル/円相場のトレンド基調は
円安街道まっしぐら。
そんな中での金先物取引の開始は
業界の念願であった。
 ましてやこの時、モグリの金市場関係者、
金に絡んだ悪徳商法関係者が跳梁跋扈していた。
世間のイメージは悪い。
 その中の一つが、あの豊田商事である。