「皂莢の実はそのままの落葉かな」 芭蕉 (2017.12.04)
昭和の風林史(昭和五四年十一月二七日掲載分)
商取界大底打ち 新年大出直り上昇
一年をふり返るには少し早いが、
この一年で商取業界は10年来の大底を打ったと思う。
「さいかちの実はそのままの落葉かな 芭蕉」
暖かい11月が続いている。
今週末が、もう12月の1日だ。
大納会までスケジュールがびっしりというのに、
寒くないのは有り難い。
一年をふり返るのはまだ早いが、
ともかく石油と為替の年だった。
そして来年も、同じようなパターンだろう。
国内の先物市場は、
国際商品が海外相場に連動して、
沈滞だったゴム取引所、砂糖取引所が、
蘇えったのはなによりだ。
また、小豆、手亡の不振を輸入大豆市場が
カバーして穀取の財務面は比較的安定していた。
上場商品流通の構造的な面で繊維取引所は、
市場機能の発揮度が低く、
特に大阪化繊取引所と大阪三品取引所は
財務面で耐乏を強いられ、
生糸取引所も、
ものを考えさせられる〝痩せたソクラテス〟
の一年だった。
業界上部団体の全商連、全協連は、
キャパシティ一杯の稼動を続けたが、
評価されることはなかった。
幸いにして(不幸にも)補償金協会は、
機能を発動した。
商取業界の信用保持に、いささかの貢献を見た。
両主務当局は、
取引員の許可更新に忙殺された一年であるが、
着実に業績をあげ、遅待なく目的を遂行した。
今年も、幾つかの取引員会社名が消えた。
真に寂しい事であるが仕方のない事であった。
このように、この一年をふり返ると、
わが商取業界も、
変化の仕方が、見る目で見れば、
あまりにも激しいものであった。
そして、だいたい、大底が入った。
この大底というのは、
昭和44年からの10年間、
わが業界はジリ貧とドカ貧の
下り坂一方という見方が出来る。
そのグラフが、大底を打った。
取引員会社の社員が
ブラック・ゴールドに流れた現象も、
視点を変えて見れば、
経営者に、将来のビジョンと雇用問題を
真剣に考えさせた。
この一年で、商取業界は、
どのような事柄に対しても対応性のある事を、
自から認識した。
これは、大きな力になるし、
なによりの収穫である。
一九八〇年は、
大阪に三ツの取引所の集合立会場が実現する。
将来の取引所統合合併への手がかりだ。
また合板取引所が開所するだろう。
為替と石油が不安定な限り、
先物市場は、機能を高めざるを得ない。
●編集部註
太った豚より痩せたソクラテスになれ―。
19 64年の東大の卒業式で
東大総長が言った言葉とされる。
しかしこれには3つの間違いがある、
と2015年の東大教養学部の卒業式で引用された。
これは平成の名文である。