証券ビュー

森羅万象

天高けれども 痩せた蟷螂の斧 (2017.09.25)

昭和の風林史(昭和五四年九月十九日掲載分) 
痩せた投機家 資力、気力ともない
◇…穀取市場を一言で表現すれば
「天高けれども投機家痩せた秋」である。
ゆくゆくは大安小豆だ。
「はたはたも短かくとびて野路親し 風生」
◇…小豆相場に対して、商社筋は上げ賛成である。
この場合の上げ賛成とは
定期を買っているから相場が上がって欲しい、
というわけではない。
相場が上がったら売りヘッジをかけたい
という上げ賛成である。
◇…従って、売られるために買う馬鹿はいない。
狙撃兵が狙いを定めているのに
塹壕から顔を出すようなものだ。
◇…それでも相場が高かったら。
この場合、蜂の巣みたいに穴だらけだと思う。
◇…需要最盛期で輸入小豆が売れているあいだは、
目立ったヘッジもなかろうというものだが、
先行きの見通しによっては、
高いところはヘッジしておいて、
品物が売れた分からはずしていくのがビジネスだ。
◇…上海における小豆の商談にしても、
国内相場がいまひとつの値段だから
商社筋も成約に積極性がなかった。
◇…国内定期相場を、
買い好きな投機家が気張って買い上げたとすれば、
成約量は増大し、すかさずヘッジされるだろう。
◇…投機家は、ヘッジャーのために好んで犠牲になる必要はない。
◇…これからの小豆市場は、
ガリバーのような巨大な売り仕手ホクレンと、
中国の供給。それに台湾の小豆生産者。
このような少しでも高いところを
売ろうとする供給者側に対して、
微力な投機家が穀取という土俵で相撲を取る格好だ。
しかも取引員の自社玉も企業自衛のため、たえず売り姿勢である。
◇…蟷螂(とうろう・かまきり)の斧という言葉がある。
弱いものが強いものに対抗していくさまである。
◇…筆者は、この小豆相場下値に深いものありと思っている。
戻れば売られるのである。
戻らなくても売られる時がくるだろう。
大底が入っていない事。
上値には因果玉がいっぱい残っている事。
中国も日本も収穫の秋である。
供給力は充分。そのうえ台湾小豆が作付けを控えている。
外貨ワクが削減されるだろうという望みはあるが、
需給構造面からくる相場の基調を、
変えるだけの力はないし、
市場構造面(投機家の零細化)からくる市況低迷沈滞化は
恐らく避けるわけにいかないと思う。
要するに、穀取市場は天高けれども投機家痩せた秋なのだ。
●編集部註
相場と関係ないが、この日の甲子園球場、阪神広島戦で、
当時広島にいた江夏豊がリリーフ登板し、
プロ通算600試合登板記録を作る。
この年のペナントレースは広島が優勝し、
日本シリーズでは近鉄と対戦する。
日本一をかけた最後の死闘は、
後に山際淳司が書いた「江夏の21球」で後世に残される。