証券ビュー

森羅万象

「秋風や薮も畠も不破の関」芭蕉 (2017.09.12)

昭和の風林史(昭和五四年九月六日掲載分) 
商取業界昨今 元気出さねばの秋
◇…小豆相場のほうは、
戻すような場面があれば、
売っておこうと待つ格好で商いも薄い。
「鉦叩たきて孤独地獄かな 敦」 
◇…商取業界の昨今は、概して空虚である。
松尾芭蕉の「秋風や薮も畠も不破の関」という感じである。
業界人に元気がないのは、成績が上がらない。
商売が昔のように儲からない。
取引所や役所が、がんじがらめに規制した。
営業の新人が集まりにくい。
相場の動きが小さくなり、お客さんの数も減った。
業界の前途に対して、
希望の湧くような見通しが、まだたたない。
新規上場商品の道は遠い。
そして業界人は総体に老いた。
戸籍年齢だけでなく、精神年齢まで老いた。
業界が発展途上にある時は、
無茶もんや、やんちゃものも輩出したが、
総体に経営者も営業スタッフも小ぢんまりと、
野性味がなくなり、無気力、惰性化した。
こういう現象は、どのような業種、業界でも
必ず遭遇する循環現象である。
成熟期を過ぎ爛熟期を過ぎ、
そして衰弱期に入り回復力のないものは滅亡する。
商取業界は、主務省筋の室長あたり、
いまのような状態では、いずれ滅亡するだろう―と、
おっしゃるが、業界人が、
甘んじて滅亡の道をたどるようなことは
決してないと思う。
先物取引きという機能が
経済社会で効果をあげている以上、
時代が移り変わっても、商品取引所は存在するし、
商取業界も、規模こそ大きくならずとも存続する。
◇…要するに、これからは、生き残れる者と、
姿を消していく者とに区分されるわけだ。
生き残れる者とは、
世間様の物指しの目盛りで、
計ることの出来るところだ。
この業界には、
この業界の内部だけでしか通用しない物指しで、
すべてを計ろうとし、また計ってきた。
その目盛りで世間様を、
まかり通ろうとしたところに誤算があった。
はかるとは謀の字も謀るであるし、
ほかにも測る、量る、諮る、図ると、
それぞれ持つ意味は違うが、
はかったり、はかられたりが世間である。
◇…見たところ、業界の経営者群は、
財の目減りで臆病になっている。
もともと太く短くの人生観だった人々が、
太く長くという欲が出た。
長くいこうとするなら細くしなければ
プツプツ切れるのが世のならいである。
ここらあたりにも
計量思考の矛盾があったようだ。
目下、それの洗脳中というところである。
●編集部註
平成の御代からこの業界に入ったものが読むと
ツッコミ処満載の一文とも言える。
イヤイヤ、ここから更に、
どんどんと悪くなって行きまっせと。