昭和の風林史(昭和五四年八月二一日掲載分)
中盤の激戦地 強烈切り返しあり
小豆は中盤戦の激戦地である。
余程、腹をくくってかからないと、
売り方も買い方も飛ばされる。
「普請場に散る鉋屑鳳仙花 恒明」
週明け小豆相場は夜放れ安して、
ストップを付ける限月も出た。
山種、丸梅、土井、明治などの纏った売り物が注目された。
台風10号が北海道に影響しなかった事や、
週末の引け味が悪かった事など、
市場人気は急速に弱くなっている。
先限引き継ぎ線では五千七百円あたりが、
上げ幅に対して三分の一押しである。
そのあたりは、一応買い方にしても、
あるだろうという予測をしていた。
産地天候が、土用を過ぎて高温に恵まれ、
一時懸念されていた大凶作の予測が遠のき、
八分作ないし平年作という段階まで、
作況が回復した事から、
二万七千円台は、買い方、守備出来ず、
高値買い付き玉の重味が表面化した下げである。
週明けの棒下げで、この相場に亀裂が入ったものか、
それとも、あくまで押し目なのか。
弱気陣側は、天井打って、
相場は戻り売りのコースに入った
と見るのが当然である。
強気側は、気迷いである。
三分の一押しで、一ツの急所にきているのだが、
芯になる買い方がない。
あとは、産地のお天気。
即ち低温、長雨、早霜、台風である。
強気側に、信念がない。
静岡筋も投げている格好である。
土台、この相場は静岡筋が介入してから
変な具合になった。
そういう事から、静岡筋が抜けてくれたほうが、
すっきりしたものになる―と好感する向もある。
これから市場人気が
手の平を返したように弱くなれば、
相場は、思ったほど下げないと思う。
買い方は、しばらく苦しい戦いを
闘わなければならないかもしれない。
売り方は、暑い夏を辛抱してきて、
週明けの相場で愁眉を開いた。
玉の回転が利くところである。
しかし、作柄がほぼ決まるまでは、
売り込むのもあぶない。
気やすめではないが、
11限、12限の五千円割れの二万四千円台は、
買い玉をほうり込み、
早霜一発に賭けるという勝負手が
利くのではないかと思う。
高値で玉を拡げて、追証に攻められ、
持ちこたえ出来ない人は、
玉減らしの投げしかない。
ともかく
中盤戦の激戦地にはいっているのだから、
余程、腹をくくってかかる事である。
●編集部註
そういえば生前、自身で記しておられた
「風林火山は当たっている時より
曲がっている時の文章が面白いと言われる」と。
実際にそうだと思う。
真の人間性は、
ピンチに追い込まれた時に出る。