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森羅万象

天井売らず、底買わず 早耳の早倒れ (2017.07.18)

昭和の風林史(昭和五四年七月九日掲載分)
迷わすところ 大直り初期の現象
早耳の早倒れ というが、早見えの早倒れでもある。
小豆は出直り態勢の序の口である。
「寝冷して韮の雑炊たきくれし 恒明」
天井売らず、底買わず―という言葉がある。
相場の天井や大底は、
あとから、あゝあそこが天井だったのだなとか、
やっぱりあの値が大底だったか―と判るもので

一文の上値もない素天井やドン底というものは、
売れもしなければ、買うことも出来ない。
要は、少し間を置いて、天井を打った、大底が入った―
が判ればよいのだ。
あまりいい値段を売ったり、買ったりすると、
まま災いになる事がある。
大天井を売ったり、大底を買うのは、
僥倖(ぎょうこう)である。
好運だったと思わなければならない。
大天井を売った玉や大底で買った玉は、
どうしても利食いが早くなる。
いまの小豆相場を見ていても、
大底を強気した人は利食いしている。
それが、
利食いだけで済ませておけばよいのだが、
手が、早い目、早い目になるもので、
相場が愈々上昇期に入る段階で
売りまわったりするものだ。
相場の呼吸と、
自分の手が少しずつズレていく。
得てして相場に大曲りするのは、
よく見えていたあとである。
実際は見えているのだが段々早見えしすぎて、
相場とのタイミングが合わなくなる。

少し間をもたせればなんの事はないのだが、
心に焦りを生ずるから、
ますます呼吸が合わなくなる。
本間宗久伝に、
損したあとでも利食いしたあとでも少し休め―
と教えているのは、要するに、
そこのところを言っているのだと思う。
今の小豆相場は底入れして、出直り段階である。
いい値段を買った人たちは早々と利食いしている。
これらの人たちが、再び買い直しを入れてくるのか。
それとも、これからの高値を売ってくるのか。
一方、安値ドン底をドーンと売った人もいる。
内心しまった―と思っているかもしれない。
相場の足が少々違うぞ―と感じておれば。
しまったは仕舞えで、
安値を叩いたが、この相場、単なる戻りでなく、
大直りだと直感すれば、
ドテン買いにまわって充分間に合う。
小豆先限の三千五百円から四千二、三百円あたりまでは、
前述したようなさまざまな思案と
思惑が交叉するところであろう。
筆者は、とりあえず三千丁高と見ている。
二万五千円あたりの値を取りに行く動きと判断する。
●編集部註
 相場は意地悪である。
 中長期の流れは正解であっても、
短期的な方向は不正解になる時がある。
 故に日柄が重要になる。