昭和の風林史(昭和五十年五月十日掲載分)
小豆はナンピン買いの急所である。
これで相場に弾みがつく。
天候不順を見直す時が必ずくる。
「苔あをし更に影置く若楓 万太郎」
小豆の品質が悪いという事。これを嫌気された。
また、ホクレンの売りつなぎが目立った。
薄商いの市場に纏まった売り物が出たため崩れた。
小豆の品質が悪いという事は、
果たして昨年の豊作は本当だったのか?
という疑問を投げかける。
発表された百六十七万五千俵の収穫は、
当時、唖然としたものだ。
今ごろから49年産の小豆の品質が悪い
といわれだしては〝豊作小豆〟として、
おかしいじゃないか。作柄もよくなく、
実際の収穫高は、うんと少なかったのではないか。
この事は、必ずあとから相場に響いてこよう。
ホクレンの売り。
恐らく一万枚、40万俵に達しよう。
ホクレンは小豆の播種期を控えて、
小豆作付け面積を出来るだけ抑えたいのではないか。
これは高度な政治的含みがあるように思われる。
この問題は今後の小豆相場の最大ポイントになると思う。
相場を安くしておいて
生産者の小豆作付け意欲を減じさせる。
現在予想される小豆の作付け面積は四万五千ヘクタール。
非常に少ないという見方の人は四万二千
。多い人で四万七千。
大場所十勝でさえ二割減反になるのではないか―と。
手亡もこのあたり以下の値は、
あっても深くない感じがしだした。
投げが目立つのと売り方の利食いが出ているし、
ピービーンズの採算を割る水準だ。
そういうことから一巡小豆が下げてしまうと、
強力な反発が考えられる。
八月限小豆あたり三月20日の安値顔合わせだ。
なにしろ天候の不順を、
今の相場、まったく受け付けられていない。
手亡崩れに目をうばわれているからだ。
筆者は、これで(この下げで)
小豆相場に弾みがつくと思う。
強気する意を更に強めた。ナンピン買いの急所である。
●編集部註
運命の時間帯である。
後々日足を見ると判るが、
小豆相場はこの時期の前後で様相が一変する。
奇しくもこの日は、
世界の電子媒体の歴史に残る商品が一般発売された。
その名はソニーベータマックスSL―6300。
最終的にVHSとの熾烈なシェア争いに敗れるが、
家庭用VTRの世界的な普及は、
まさしくこの商品から始まる。
【昭和五十年五月九日小豆十月限
大阪一万六五四〇円・二一〇円安/
東京一万六三九〇円・三二〇円安】