「春更けて諸鳥啼くや雲の上」 普羅 (2017.03.21)
昭和の風林史(昭和五十年三月十四日掲載分)
手亡が悪役に 崩れれば小豆も
手亡の大取り組みが投げてくるようだと凄惨な市場になる。
小豆も影響を受けるだろう。
「春更けて諸鳥啼くや雲の上 普羅」
注目されている事は、大きな手亡の取り組み、
これは大衆筋の買いであるが、
ピービーンズの圧迫で軟化する相場に、
買い方が、どこまで耐えられるかである。
実勢悪で、大衆が総投げしてきた場合、
凄惨(せいさん)な崩壊が展開されるかもしれないが、
大衆が投げずに、両建て戦法に出てくれば、
取り組みはなお大きくなる。
ただ、ここのところ手亡の新穀は消費地に、
ほとんど入荷していない。
新穀手亡一万俵。
ピービーンズ一万俵という極めて品薄の市場で、
強力な買い物が潜行して、納会受けに出れば、
手亡の三月限でも、四月限でも、
予想外の高値を出す可能性を有するのだ。
もとより新穀手亡の入荷は着々と進むであろうし、
六月以降はピービーンズのつなぎものが待機している。
そういうことから、手亡の大きな取り組みが
暴落によって整理されるところが、あるかもしれない
という事を考えなければならない。
手亡が崩れたら、小豆にも影響してこよう。
作付けの大幅減反とか、
天候相場接近とはいうものの、
市場要因、市場人気が軟弱では、
買い方、楽観は禁物。
東京都知事の美濃部さんは
陶淵明の帰去来の辞の一節
「帰りなんいざ田園まさに蕪せんとす、なんぞ帰らざる」
と出馬とりやめの時にその心境を語った。
手亡相場も安値に帰りなんいざ市場まさに荒れんとす、
なんぞ買えようぞ―という風情だ。
帰去来の辞は「既に自ら心を以て形の役と為す、
なんぞ惆悵として独り悲しまん、
已(い)往の諫められざるを悟り来者の追うべきを知る、
まことに途に迷ふこと其れ未だ遠からず―」
とこの詩は、まだまだ続く。
すでに手亡八月限は生まれた値から千円棒を入れた。
一万三千円割れなしとしない地合いだ。
ピービーンズの換算を簡単にしてみると
一〇〇ポンドは四五・三六kg
一㌦を二八五円として、
12㌦70㌣のピービーンズは一〇〇ポンド二八〇㌦。
即ち七万九千八百円。運賃二万二千八百円。
関税一万二百六十円。調整金と諸掛かり三万三千六十円。
トン当たり十四万五千九百二十円。
一俵60kg当たり八千七百五十五円。改装費四百五十円。
定期格差二千五百円で一万一千七百五円になる。
●編集部注
小豆相場は、三月十日の月曜からジリジリと下げ模様。
買い方の胃をキリキリと痛めていく。
【昭和五十年三月十三日小豆八月限
大阪一万七二六〇円・九〇円安/
東京一万七二六〇円・一八〇円安】