証券ビュー

森羅万象

「片栗の花とも知らず見過ぎけり」 漂舟 (2017.02.28)

昭和の風林史(昭和五十年二月二五日掲載分)
手亡高値更新 矢は弦を放れる
遂に手亡に点火した。矢は弦から放れる。
手亡に春来れば、小豆おのずからまた開花す。
「片栗の花とも知らず見過ぎけり 漂舟」
手亡の取り組みが異常なほどふくれ、
十五万枚にも達しようという勢いだ。
そして相場も新値に躍り出て、
矢は弦から放れんとするする瞬間を思わせた。
踏む者、新規に買う者、そして利食いと新規売りで
月曜日の一節は久々の大出来高だった。
相場は、すでに充分な底練りを終え、
蓄積された爆騰エネルギーは
一万五千円抜け→S高→一万六千円突破を予測せしめる。
恐らく相場は高値を更新した以上、
軽く押し目を入れながらも、
上昇エネルギーの燃え尽きるところまでのロケット推進を
続けるだろう。
手亡の売り方としても、
早晩相場に火のつくことは判っていた。
崩して崩せる相場でないことは誰の目にも明らかだった。
敢てそれを弱気せざるを得ない事情、
また相場戦線において、やむを得ざるものありだが、
大衆エネルギー、大衆パワーの結集を
甘く見すぎてはいなかっただろうか。
手亡六月限も一代の新高値である。
六月限の売り勢力すべて水つかりだ。
そして今、五月限一代も新高値指呼の間にある。
山ゆかば草むすかばね、海ゆかばみづくかばねだ。
大君の辺にこそ死なね。

手亡相場に春がくれば、おのずから小豆相場の花開く。
二月21日、小豆相場は今にも底抜け棒垂れ型かと思わせたが、
値ごろの抵抗は厳しく、目先筋の買い玉をふるい落とし、
信念なき者をして突っ込み売りさせただけに終わった。
考えてみれば、薄商いの市場で、
きわめて僅かな売り玉で値が消えた。
それだけに陽気が変われば下げた値幅など、
瞬時にして奪回出来るのだ。
小豆先限の目先八千円乗せ相場は、
手亡先限一万六千円突破同様に約束されたものである。
いざ征かん、天かけて。春光燦然たり。
小豆と手亡で億の金を掴もう。
●編集部註
 筆が踊っている。今回もノリノリである。
 実際に小豆相場が大化けするのは五月である。
 恐らく当時の外務員は、朝出勤して投資日報に目を通し、
この記事を読んでニヤリとするか、
冷ややかな眼差しを送っていたのではないか。
そうでなくとも、朝礼での話のタネにはなったであろう。
 一万七〇〇〇円を挟んだ凪の相場期に
「億の金」とは、「オオカミが来たぞ」と
吹聴する昔話の少年のように見えたかと思う。
【昭和五十年二月二四日小豆七月限
大阪一万七一〇〇円・一〇円高/
東京一万七二六〇円・八〇円高】