昭和の風林史(昭和五十年一月十六日掲載分)
早くも手亡は脱兎の如し。
五百円、五百円ではねていく。
小豆も八千円呼指の間に買われよう。
「箸紙の文字のよごれや小豆粥 野風呂」
昔は七日の七種粥、十五日の小豆粥を
全国各家庭でお祝いしたものだが、
昨今、そのしきたりは廃れた。
しかし、旧家では威儀を正して
小正月の粥を祝うところもある。
きさらぎの来月は三日新ポ。三月やよいも三日新ポ。
なんとなく相場が大荒れしそうな二、三月だ。
去年は二月四日立春大吉大底打ちの相場だった。
小豆は二月四日の一万四千三百円から
三月四日七千百五十円まで三千円弱を春早々に騰げている。
今年は出発点が高いところから始まる。
それだけに市場人気は警戒厳重である。
しかし小豆先限の一万六千円は誰が売ろうと叩こうと
割るに割れない絶対の大底で四、五月限の七千円台乗せは、
これは時の成り行きであろう。
天候のほうも、近年まれに見る大豪雪。
世界の天候はシベリアがポカポカ、
アメリカは場所によって死者の出る大豪雪と、
ポカポカなところとまちまちだ。
早くも天候のほうに投機家の関心が集まる。
本年は小豆の繰り越し在庫も豊作だし、
新穀30万俵のタナ上げもある。
従って天候相場の異常気象で小豆相場が
二万三千円→五千円、二万七千円と火柱に噴いても、
土俵があぶないとか、市場閉鎖の心配はない。
投機家は思い切って活動出来る運動場があるのだ。
しかも世界の砂糖相場は大天井打ち後の惨落で、
日本の砂糖も続落している小豆が高けりゃ砂糖が安い。
これは不思議な因果である。
大手亡だって、アメリカの天候が変だし、
作柄だってどうなるのか判らない。
大手亡の作付けは大幅に減るだろうし、
海外市況に再び火が付けば、
脱兎の如く五百円、五百円のS高で、
まさしく水がめから炎が立つわけだ。
二兎を追うもの一兎を得ずというけれど、
小豆と手亡、紅白の二兎を追えば今年の暮れは海外旅行よ。
そして来年が辰の年、再来年が巳の年。
相場界では昔から辰巳天井、午べたりというではないか。
今年から、いうところの高回り三年にはいる相場だ。
小豆の一万八千円で騒いでいたら
倍の三万六千円になった時には失神しなければなるまい。
●編集部註
三月と五月にストンと下げるが、
そこまで相場は大局的に凪である。
【昭和五十年一月十四日小豆六月限大阪一万七〇八〇円・二一〇円高/東京一万七一六〇円・一九〇円高】